DIR EN GREY「The World of Mercy」 PR

DIR EN GREY|緊迫感を保ち、重厚な世界を描く大作シングル

DIR EN GREYのニューシングル「The World of Mercy」がリリースされた。

2018年9月リリースのアルバム「The Insulated World」以来の音源作品となる本作の表題曲は、10分を超える大作だ。京(Vo)のアイデアをもとにした同曲は、半年以上にわたる制作期間を経て完成。近藤廣行が手がけた衝撃的なミュージックビデオも話題を集めている。今回の特集ではコンポーザーである薫(G)に、楽曲の完成に至るまでを聞いた。

取材・文 / 小野島大

京が「長尺の曲をやりたい」

薫(G)

──10分を超えるすごい曲ができました。構想はどういうところからスタートしたんですか?

去年出した「The Insulated World」というアルバム……リリースしたのはちょうど1年ぐらい前なんですけど……その制作が終わったあとに、曲作りを続けようということになって。まだリリースとかは決まってなかったんですけど、一応シングルを目安にして制作は続けようかというところで始めてたんです。

──あれだけの力のこもったアルバムを作ってすぐまた作る気になれるものですか?

ならないです(笑)。ならないですけど、いつもだとそこで完全にオフっちゃうんで、するとまた作り始めるのに時間がかかっちゃうんですよね。そのオフがダメなんじゃないかというので作り続けようと。

──ペダルはこぎ続けていたほうがいいと。最初からシングルを作るというつもりで作り始めたんですか?

はい。どうなるかはわかってなかったですけど、普通に考えて、すぐアルバムではなくシングルだろうっていう。

──10分超えの長さになるのは、いつ頃からハッキリし始めたんですか?

今年に入ってからですかね。アルバム制作の後半ぐらいから、京が「長尺の曲をやりたい」とずっと言ってたんですよ。で、今回長い曲をシングルで出したらどうかな、実はこんな歌詞があるよと。それを乗っけられるような長尺の曲を作ってみようか、と。

──なぜ彼は長い曲を作りたいと思ったんでしょう。歌詞の関係?

わかんないですけど、重みをちょっと感じるとか思ったんですかね? ただ単に長いだけじゃなくて、展開があって、ちょっと複雑な構成で、波ができているような曲がいいと京が言ってて。そのときに、いじってた曲が2曲あったんですよ。メロディを2曲共取って、あとはパーツ、パーツをうまく取って、1曲にしてみようかという感じでやり始めました。両方ともなんとなく仮歌は付いていたんで、それをもとに作ってましたね。

──「人間を被る」のインタビューで、シングルの意味合いというのは「1曲で今の自分たちを表せるようなもの」というような京さんの発言があったんですが、今回もそういう考えだったということですか?(参照:DIR EN GREY「人間を被る」インタビュー

そうですね。どの曲もそうでないと出す意味がない。ですけどシングルってねえ、アルバムの前に出すシングルだと、アルバムのプロモーション、アルバムへうまくつなぐ曲という感じでいいですけど、単発で出すシングルは「なぜ出すの?」という疑問が出ちゃって(笑)。シングルに制作時間を割くんだったら、アルバムをコンスタントに早く出せるように動いたほうがと思っちゃうんですけどね。

──10分を超える曲だと、アルバムを作るぐらいの手間がかかりますよね。

実際そうなんですけど(笑)、出すことに自分らなりの意味合いがあるんだったら、出せたらいいかなとは思います。

──ある種の挑戦でもありますよね。10分超える曲って。

作るのはね。出すのは別にそんなにハードルは高くないんです。だってうちら、デビューシングル「アクロの丘」(1999年リリース。楽曲の長さは8分37秒)も、けっこう長いですからね。

重厚で淡々としてて、絶えず進んでいる展開

京(Vo)

──「人間を被る」のインタビューのときに、薫さんは「ポップであるということは意識する」とおっしゃっていて。「聴き手の印象に残る、ひっかかるもの」という言い方をされていましたけど、そういう意味では今回どういうことを考えました?

いつもですけど、メロディが口ずさめるのは大前提というか。どんな曲でもそうで、何か口ずさめるようなものを作ろうと。「あの曲は~」と言ったときに、歌のメロディが出てくるよりも、楽器のフレーズが出てくるような曲というものは心がけていますけどね。

──なるほど。今回は構成が凝っていて、1曲中にいろんな波がある。最初はダークアンビエントな感じで始まって、だんだんヘビーになって、またちょっと静かな感じに戻っていく。肝となるポイントは、どこだとお考えですか?

前半ですかね。曲が始まってバンド演奏に至るまでの、歌詞で言うと「手を取って~腐ろう」のあたりまで。ここに行き着くまでの感じがあるから、その後の展開がある。

──詞の世界観は常に意識しながら音を作っていく?

最初のうちですかね、意識してたのは。あとは曲の雰囲気でどんどん変わっていくんで。最初に意識してれば、ブレていかないかなと思います。

──歌詞はだいたいいつも先にあるものなんですか?

いや、ないです。

──なるほど。今回、京さんとしてはこんな世界観を表現したいっていう思いが先にあったということですね。

歌詞的にはアルバムの続きらしいんですよ。たぶんここでその一連の世界が終わる感じっぽい。

──なるほど。演奏する側も同様の意識が?

俺は考えてなかったです。“次の新しいもの”として作ってました。歌詞はこんな感じだなというのは意識してましたけど、「The Insulated World」のことは基本的に考えていません。

──曲全体の構成とか組み立ては、バンド全体で練り上げていった?

ある程度のところまで自分で作ったのをみんなに聴かせて、そこから。長い曲にするという前提やったんで、中途半端な状態で出してどんどん変えていっちゃうと、しっちゃかめっちゃかになりそうだったんです。メンバーの意識も入りにくいかとは思ったんで、ある程度できた中でそこからどうしていくか考えたほうがいいと思いましたね。

──そうですか。曲の起伏はありますけど、そんなにドラマチックにメリハリをつけて盛り上げるという感じでもでもなく、あえて抑制したまま淡々と進行していく曲になっています。そこらへんは意図されたものですか?

うーんとね、言い方が難しんですけど、ベタな感じを狙ったというかね。がむしゃらなバンド感のような、そういう雰囲気は入れたくなかったんですよ。すごいキメがあって、行きましょー!みたいなのとか、ガッツあふれる感じとか……そういう雰囲気にはしたくなかった。重厚で淡々としてて、何かこう一筋ピーンとしている中で絶えず進んでいる展開というか。