2024年12月に開催した初の東京・日本武道館公演を経て、2025年は47都道府県ツアー「DEZERT 47 AREA ONEMAN TOUR 25-26 “あなたに会いに行くツアー”」に注力してきたDEZERT。今年は3月20日に千葉・幕張メッセ 幕張イベントホールでのワンマンライブという大舞台を控えており、結成16年目にして彼らを取り巻く状況もメンバー自身のコンディションも絶好調──と思いきや、どうも一筋縄ではいかないのがDEZERTというバンドの宿命のようだ。
バンドの現状を探るべく、音楽ナタリーでは、メジャー1stシングル「火花 / 無修正。」のリリースタイミングにフロントマンの千秋(Vo)にインタビュー。取材現場に出向くと、彼は武道館以降のDEZERTの状況について赤裸々に語り始めた。
取材・文 / 森朋之
果たしてそれでいいのか?
──2025年6月にスタートした47都道府県ツアー「DEZERT 47 AREA ONEMAN TOUR 25-26 “あなたに会いに行くツアー”」が終盤を迎えています。ここまでの手応えはどうですか?
あっという間だったような、長かったような。僕は家が汚いのでツアー先のホテルに泊まれるのは衛生的にもいいんですけど(笑)、バンド的にはちょっと懸念していたことが起きているのかなと。
──懸念というと?
地方に行ってライブをやって……という同じタームを繰り返していると、どうしてもラクなほうに逃げちゃうんですよね。毎回毎回、「次の公演はこんなセトリで、こういうライブをやろう」といったことを話すべきなんですけど、そんなこともないですし。14年やってきているので形にはなるんですけど、「果たしてそれでいいのか?」という感じはありますね。3月に幕張でライブがあるのに、そこに向けて何をやるべきなのか?という当たり前のこともできてない状況なのかなと。
──2024年12月27日に初の日本武道館公演があって(参照:DEZERTが“君”のために届けた初武道館ワンマン、千秋は「ここが出発点」と高らかに歌い叫ぶ)、2026年3月20日に幕張イベントホール公演がある。その間をつなぐのが47都道府県ツアーだったわけですよね?
そうですね。武道館のあとどうするか?という話の中で、スタッフから「47都道府県ツアーがいいんじゃないか」と。あれだけ「武道館に来て」と言いまくったし、バンドにとって1つの集大成ではあったので、それを経たら次は自分たちが全国に届けに行こうという。幕張についてもいろいろ意見があったんですけどね。「V系って知ってる?」(2022年12月27日に日本武道館で行われたライブイベント。参照:艶やかなセッションに武道館沸騰!D'ERLANGER、HYDE、ムック、DEZERTらが一夜限りの“狂演”)の続編にする案もあったんですけど、やっぱりワンマンだろうと。ただ、さっき言ったように準備が進んでいるか?と言えばそうではなくて。振り返ってみると、去年はだいぶ手探りでしたね。
──千秋さんの問題意識が共有されないままツアーが進んだと。
たぶんツアーが始まったときは「お前らを幕張に連れていく」みたいな感じで燃えていたと思うんですよ。でも、インタビューとかでメンバーの話を聞いてると「会いに来てくれた人たちに感謝」とか言っていて、「え、そんなの当たり前じゃない?」って(笑)。それは大前提だし、僕自身は「ファンに返せるものがあるとしたら、バンドが大きくなることだ」と信じてるんですよ。もちろんライブに来てくれる人に対してはできる限りのパワーを使いますけど、それだけじゃなくて。もっと大きくなる、もっと売れるためにやれることをしなきゃいけないのに、みんなが空回ってるのが去年の状態だったと思います。もちろん、メンバーにもいろんな事情があるのはわかってて。そこに僕が突っ込んでったり、「俺の思うDEZERTになろうぜ」とやっちゃったりすると関係性がパリンと割れそうな気がした。なのでそれぞれに気付いてもらうしかないのかなと。
──千秋さんとしても、かなりしんどい状況ですよね。
やることが多すぎて、「しんどい」までいかないですね(笑)。朝起きて、「今日はあれをやらないと」というのがめちゃくちゃあって、結果「今日も充実してたな」となる。DEZERTが船だとしたら、僕はエンジンではなくて、自分で言うのもアレですけど、たぶん船長なんですよね、フロントマンなので。例えば歌をよくすることだったり、楽曲のクオリティを上げることだったり、このイベントに出ようとか、この時期にシングルを出そうとか。今のところ船はなんとなく動いているから、まずは自分がやるべきことをやって、そのあとメンバーに文句を言おうかなと(笑)。
自分たちは曲に生かされている
──ライブ自体は実際のところどうなんですか?
大崩れはしなくなりました。もちろん波はありますけど、よくないときのアベレージが上がっているというか。去年の最後、鹿児島のライブは僕的にはベストで。ひさしぶりに「キタ!」という感覚があった。まあ、ライブ前の空気はよくなかったんですけどね、実は。
──もしかしたら「このままではヤバい。気合い入れてやろう」とメンバーの皆さんが思ったのでは……?
いや、それは僕から言ったんですよ。幕張までそういうことを言うのはやめようとしてたけど、ガマンできなくて。しかもライブのSEが始まってから、「何しにここに来てんの?」と。僕らが伝えたいことは全部曲の中にあるんだから、ちゃんと演奏しようと。これは本当に思ってるんですけど、自分たちは曲に生かされているんですよ。僕ら自身に価値があるんだったら、曲なんかいらないじゃないですか。47都道府県ツアーも演奏しないで、「メンバーと握手しようぜ」でいいわけで。そうじゃなくて、曲がないと存在している意味がないし、それを伝えるためにライブをやっている。鹿児島のライブの直前に「“曲”が一番偉いんだから、みんなでちゃんと“曲”をやろう」と言った結果、あの日はけっこうよかったんじゃないかな。演奏はそんなすぐによくならないけど、「曲をちゃんとやってる」という感覚があった。そのときのセトリもメンバーに向けて作ったんですよ、実は。それに気付いたのは照明の人だけでしたけどね。「今日のセトリ、メンバーに向けたものですよね」って。
──千秋さんのひと言でライブがよくなるということは、バンドとしてしっかり機能しているんじゃないですか?
そう、だから船は動いてるんですよ。座礁はしてない(笑)。12月に次の音源の制作があったんですけど、それもかなりいい感じで。そこから雰囲気が変わってきたし、僕自身もちょっと心穏やかになってます。めっちゃ曲に向き合った、ということなんですけどね、要は。
武道館を経てのモードをシングルに凝縮
──その話はのちほど聞かせてもらうとして、先に最新作となるメジャー1stシングル「火花 / 無修正。」について伺います。制作はツアー中ですか?
いえ、「『火花』」は武道館が終わってすぐに作りました。そのときの自分の気持ちの表明というか、曲にしておきたかったんですよね。まだ開催発表前だったけど、幕張ライブも決まっていたし、そのときのマインドセットですよね。タイアップ(Prime Video ドラマシリーズ「人間標本」挿入歌)がついたのでリリースはこの時期になりましたけど、もともとは去年の6月に出したEP(「yourself: ATTITUDE」)に入れようと思ってたんです。
──「“生きていたい” と歌おう 今日も」というフレーズもそうですけど、いいテンションですよね。
そうですね! 武道館のライブもけっこうよかったと思うし、幕張でのライブも決まって、ちょっとワクワクしてたので。
──「『無修正。』」については?
「『無修正。』」とカップリング曲の「My Unhappy Life」はツアー中に作りました。去年の9月くらいかな。夏頃から「このままじゃヤバいな」という感覚になってきて。さっきも言いましたけど、DEZERTという船は動いているんですよ。前に進んでいるし、目的地もあるけど、船員たちはダレてるという。ライブにお客さんが入らなければ焦りも出てくるだろうし、「じゃあ、どうする?」という話にもなるんだろうけど、47都道府県ツアーはけっこうソールドが続いてたんですよね、よくも悪くも。いや、もちろんお客さんが来てくれるのはめちゃくちゃうれしいけど、会場が埋まってなくても「あ、今日はソールドしてないんだ。へー」くらいで全然緊張感がなくて。12月のリリース作品も、僕としてはEPかミニアルバムにしたかったんですよ。「yourself: ATTITUDE」の続編みたいなものを出したかったけど、メンバーのテンション的に新しい曲を5曲くらい作って、それをツアーのセトリに入れるのが考えられなかった。でも、バンドを動かすためには曲が必要なので、新たに「『無修正。』」と「My Unhappy Life」を作りました。
──なるほど。
「『無修正。』」は自分のポジティブな部分だけを入れたかったんです。普段の僕の作り方は、Aメロで暗い気持ちやネガティブな部分を入れて、そこからいろんな物語を作っていくところ、「『無修正。』」はそうじゃなくて。これまでの曲ではあんまりなかったと思うんですけど、嘘でもいいから前向きなところだけを歌おうと。いや、嘘じゃなくてホントに思ってることなんですけどね(笑)。あとは“自分の物差しで測る強さを持とう”ということかな。それは絶対に必要なことだし、人間の強さはそこにしかないと思うんですよ。それは自分の課題でもあるんですけどね。どうしても人の物差しで測ってしまうので。「My Unhappy Life」はネガティブ……いや、ネガティブだけじゃなくて、そういう気持ちと折り合いを付けてる感じかな。折り合いソングですね(笑)。
──「本当の自分殺したい」というフレーズもありますね。
この歌詞をメンバー全員で共有するのは難しいのかなと思っていて。もっと言うとリスナーの共感も求めてないんですよ、この曲に関しては。それぞれの「Unhappy Life」があるというか、人生は人によって違うと思うので。
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