みんな普通
──「『火花』」の「“生きていたい”と叫ぼう 何度でも」、「『無修正。』」の「今日も踊りながら必死に這いつくばって生きてる」もそうですが、千秋さんは生きるうえでの本質を歌ってますよね。やりたいことはあるが、それを押し通すと必ず周囲とぶつかる。折り合いをつけることも必要だけど、そこにまた葛藤が生じるという。
それが本当に難しくて。「本当の自分を出せよ」「好きなことをしろ」みたいなことよく言うじゃないですか。あれ、全然好きじゃないんですよね。そういうことを言う人って、たまたま成功したり、結果が出たりしているだけだと思うので。もちろん努力もしたんだろうけど、そんな人から「本当の自分を出せ」「やりたいことをやろう」と言われて、その気になったとしても、そんなの2日で折れますって。いきなりやろうとしてもダメで、いろいろ準備も必要だし。
──確かに。
ただ、自分たちはやりたいことでメシを食ってるのも事実で。この現代社会においてバンドというナンセンスなことをしているから、魅力を感じる人もいるのであって、「やりたくないけどバンドやってます」なんて言ったらお客さんはゼロですから(笑)。でも、やりたいことを全部できているかと言えば、そんなこともなくて。しかも僕ら、みんな普通なんですよ。酒飲んでも普通だし、飲み会やってもすぐ帰るヤツもいるし、別に面白い人生を送ってるわけではない。僕もそうですよ。「明日はインタビューか。今日はビール2缶にしておこう」みたいな(笑)。そこも折り合いはついてるし、満足もしてるんですけどね。
──破天荒な生き方=ロックバンドという時代はとっくに終わってますからね。そう考えると、現代におけるロックバンドの在り方って難しいというか、大変ですよね……。
そうなんですよ、マジで。そもそも、自分がイヤなことをやりたくないからバンドを始めるわけじゃないですか。10代の頃の衝動でバンドを組んで、そのままずーっとやり続けている勘違い野郎(笑)。それが美しかったりもすると思うんですけど、現代では頭を使わないとバンドなんかやれないし、音楽も届けられない。今は自分たちで考えて、発信しなくちゃいけない。そういうジレンマもあって……いろいろありますよ(笑)。
今、DEZERTの音楽を変えてくれる人=Ken
──空回ったり、ぶつかったりしながら、それをライブや作品に昇華するのがロックバンドの醍醐味でもあると思いますけどね。実際、今回のシングルもすごくカッコいいし。
今は「もっとやれたな」と思ってますけどね。もう少しアレンジを突き詰めたり、もっとエゴを追求してもよかったのかなと……。いつも編曲の段階で、ほぼほぼ全部終わっていることが多いんです。本当はそこからもっとメンバーとも積み上げていきたいとは思っているんですけど……。だから今のままだと、もっとよくするためには僕がさらにインプットするか、アレンジャーやプロデューサーを入れるしかないのかなと。ただ、さっきもちょっと言いましたけど、12月のレコーディングでだいぶ雰囲気が変わってきたんですよ。
──何か新しい試みがあったんですか?
Ken(L'Arc-en-Ciel)さんにプロデューサーとして入ってもらったんです。メンバーには夏前から「Kenさんとやりたいんだけど、どう思う?」という話をしていて。僕の意図としては、「今、DEZERTの音楽を変えてくれる人が必要で、それは絶対にKenさんであるべきだ」と思ったんです。今は先輩であるKenさんしかないなと。今の自分たちに足りないところ──もちろん僕も含めて──をはっきり言ってくれるだろうし、その言葉が必要だと思ったので。僕も含め、勘違いしちゃいけないんですよ。
──勘違い?
俺たちはミュージシャンだから、もっと音楽に集中しないといけない。もっと苦しまないといけない。Kenさんなら僕らの道しるべになってくれると思ったんです。実際、メンバーにとってもすごくよかったと思うし、素晴らしかったですね。
千秋のDEZERT愛
──年末の鹿児島公演をきっかけに上向きになり、千秋さんの意思をしっかり示したシングル「『火花』/『無修正。』」があり、Kenさんとの制作があって。47都道府県ツアーの終盤、そして、3月20日の幕張イベントホール公演に進んでいく中で、バンドの状況もさらによくなっていくのでは?
そうなると思ってますし、それもやっぱり曲を作るという行為があったからなのかなと。あとは行き先ですよね。47都道府県ツアーの直前にやったO-WESTのライブ(2025年6月7日に行われたファンクラブ限定ライブ)のとき、メンバーに初めて「俺は東京ドームを目指してるから」って言ったんですよ。
──おお!
本当にできるかどうかはわからないですけど、少なくとも「東京ドームのステージに立つ」ということに向き合うことはできる。そうすれば当たり前にやるべきことも見えてくるはずなんですよ。僕のことで言えば歌の練習をもっとしなくちゃいけない。ボイストレーニングもやるし、リスペクトしているボーカルの方々にも話を聞いて、いろいろ試して。最終的には自分の歌を歌うためには、それを全部捨てなくちゃいけないんですけど、まずは準備のための時間を割かなくちゃいけないと思ってます。ただ、同じことをメンバーに強制することはできないので、それぞれ気付いてくれたらなと。
──そういう意味でも、まずは幕張のライブですね。
そうですね。武道館にはハコ自体に歴史があるし、自分たちが立つうえでストーリーもあって。そのことに助けられた部分もあったんですけど、幕張はそうじゃないですからね。また文句になっちゃいますけど、4人でインタビューを受けてて「武道館をやったことで心に余裕がある」みたいなことを言ってたメンバーがいて、「え、マジで?」と思ったんですよ(笑)。そんな余裕は今の僕らにはないし、幕張でもいいライブができるかわからない。でも、いいんですよ。とにかくやるしかないし、そのときに気付くこともあるはずなので。少なくとも僕はもうそのあとのことを考えてます。
──期待してます。それにしても千秋さん、DEZERTへの愛がめちゃくちゃ強いですよね。
それね、後輩とかと飲んでても言われるんですよ。「千秋さん、ずっとDEZERTの話ばっかりしてますね」って。違うんです。僕はいつでもDEZERTが終わっていいと思ってるんですよ。いつか終わることは間違いないし、だったら「今終わってもいい」と思えるくらいの活動をしようと。ファンの前では「ずっとステージに立ちたい」と言ってるから、矛盾してると思われるかもしれないけど、僕の中ではリンクしていて。「いつ終わってもいい」というのはあきらめではなく、だからこそ新しい曲を作るし、ライブもやりたい。もちろんDEZERTは好きだし、自分自身だと思ってますけどね。いろいろ言いましたけど、メンバーも大好きですし(笑)。
──愛着しかないですよね(笑)。
別に好かれなくてもいいんですけどね。恋人じゃないんだから。そこはもう好き嫌いじゃないかもしれないです。“好きだからやってる”だったら、好きじゃなくなった瞬間に終わるので。なのでこれからは「千秋、ウザいな」と思われるようにがんばります(笑)。
公演情報
DEZERT 47 AREA ONEMAN TOUR GRAND FINAL -僕らの音楽について-
2026年3月20日(金・祝)千葉県 幕張メッセ 幕張イベントホール
プロフィール
DEZERT(デザート)
2011年に結成された千秋(Vo)、Miyako(G)、Sacchan(B)、SORA(Dr)による4人組ロックバンド。2012年に音源を発表し始め、2013年8月に1stアルバム「特製・脳味噌絶倫スープ~生クリーム仕立て~」をリリースした。2013年にはhideのトリビュートアルバム「hide TRIBUTE III -Visual SPIRITS-」で「D.O.D.(DRINK OR DIE)」をカバー。2017年にはMUCC、D'ERLANGERのトリビュートアルバムに参加している。2018年8月にMAVERICK DC GROUPのレーベル・MAVERICKよりアルバム「TODAY」を、2021年7月にアルバム「RAINBOW」をリリースした。2022年6月には初の東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)単独公演を実施。2024年1月にアルバム「The Heart Tree」で日本クラウンからメジャーデビューを果たし、同年12月に初の東京・日本武道館単独公演を開催した。2025年6月にミニアルバム「yourself: ATTITUDE」をリリースし、同月より初の47都道府県ツアーを開催中。2026年3月20日に千葉・幕張メッセ 幕張イベントホールで47都道府県ツアーを締めくくるライブ「DEZERT 47 AREA ONEMAN TOUR GRAND FINAL -僕らの音楽について-」を行う。


