DEZERT 千秋ソロインタビュー|愚直に己と向き合うフロントマンの決意

もしかしたら天才なのかも(笑)

──今作のアレンジ、サウンドメイクに関してはどうですか? ヘヴィロック、ファンク、エレクトロなどの要素が絡み合っていて、ジャンルの枠に収まらない音楽性だと思うのですが。

SORA(Dr)

自分ではよくわからないんですよね(笑)。そもそも音楽知識ゼロの状態から曲を作り始めてしまったし、知識を付けようとも思ってないので。コードもよくわからないんです。ギターを弾いていて、「この響き、いいな」という感じで決めていくので。Miyako(G)に「新しいコードを見つけてしまったかも」って言うと、「それは〇〇〇だね」って教えてくれますけど(笑)。機材もまったく使いこなせてないし……ただ、エンジニアの人にデモを渡すと「やってることがヤバイ」と言われるし、もしかしたら天才なのかも(笑)。

──アレンジのアイデアをほかの音楽からインプットする必要もない?

それをやっちゃうとつまらなくなると思うんです。そもそも音楽ジャンルも決めてないし、何をやってもいいと思ってるので。さっきも言ったけど「俺ら4人でやってるんだから、それでよくない?」という感じです。メンバーは大変かもしれないですけどね。デモを聴いてもらって、「これ、どうなってるの?」と言われても俺は答えられないから(笑)。最近はそれにもだいぶ慣れたみたいですけどね。

──ちなみに「black hole」というタイトルについては?

来ましたね、タイトルの話。これは、Sacchan(B)が「『black hole』、カッコいいな」と言ったのがきっかけです(笑)。俺も「いいな」と思って。後付けの理由も考えてみたんですけど、それもやめました。そのあたりは意外と適当なんです(笑)。

ライブは楽しくない

──ライブについても聞かせてください。楽曲の制作と同じく、ライブに対するスタンスにも変化があったのでは?

そうですね。1本1本の意味合いが大事なのかなと。例えばフェスに出るときは、30分で自分たちのことを知ってもらわないとけない。「30分で知ってもらうために俺たちがやるべきことはなんだろう? 演奏のうまさなのか、登場するときの雰囲気なのか」といったような話をメンバーとずっとしてたんです。それを1年間続けて、やっと人前に出る準備ができたかなと。あとはどれだけライブに対して緊張感を持って向き合えるか、どれだけ技術を磨けるか、ですよね。特に俺みたいなひねくれた凡人は、めちゃくちゃ考えながらやらないといけないんです。それと歌っていて気持ちよくなったらダメなんですよ。実際、ライブ中に気持ちよくなっちゃうと歌が全然ダメで、しっかり考えているときのほうがいいんです。だから、ライブはつらいです(笑)。

──ライブは楽しくない?

楽しくないです。「もっとこうしたほうがいい」という課題が見つかったら、それが気になって寝られなくなるし。でも、そういうときに「生きてるって感じがするな」と思うんですよ。ライブを気持ちよくやって、打ち上げで酒飲んでワーッとなっても、それで終わりじゃないですか。それよりも「ここがダメだった」と考えているほうが全然いいです。

──お客さんの反応は関係ない?

いや、あります。ライブはみんなで同じ料理を味わう晩餐会みたいなものだと思ってて。料理を作るのは俺ですけど、それを食べるのは客だし、場所や人によって全然違うし。お客さんの反応がスパイスになって、「今日は塩を多めにしたほうがいいな」みたいなことをやってるんですよ。すごく難しいし、大変ですよ(笑)。

曲のために何をすればいいか

──千秋さんは物事を根本から考えないと気が済まないし、ずっと試行錯誤を繰り返しているんですね。

俺、めちゃくちゃ流されやすいんですよ。だから自分で決めたことを続けないとダメだなと。それが自分にとっては、歌や音楽の概念を壊しては作ることなんですよね。そこはあきらめたくないし、メンバーにも「音楽を続けることをあきらめちゃダメだよ」と言ってます。それは単なるキレイごとではなくて、「ここに伸びしろがあるんだから、まずはそこを伸ばそう」と。ただ漠然と武道館を目指しても虚しくなるだけだし(笑)、その前にハイハットの叩き方のことを考えたほうがいいでしょ。適当なことやってたら何も変わらないし、奇跡なんて起こらないと思ってるので。

──何かがうまくいくときは、必ず理由があると。

そうですね。例えばサザンオールスターズの曲を聴いてると、メロディの音階が上がるときに歌詞にア行を使うことが多かったりして、だから歌いたくなるんだなというような分析をしてるんです。自分たちもそういうことをやっていくしかないなって。最近思ったんですけど、俺はマジメなんですよね(笑)。破天荒でもなんでもない。

──確かに千秋さんはいつも考えてますよね。

そうしないと、「どうせ死ぬんだから」っていうクソみたいな考えが脳裏をよぎるんです。それを歌詞にするのは別にいいと思うんだけど、そんなことを1人で考えるのはイヤだし、考えたところで元も子もない話でしょ。だったら、やるべきことをやったほうがいいなと。

──そのスタンスはメンバーとも共有している?

そうですね。だいぶメンバー同士のバンドに対するフォーカスが合ってきたので。今後どうなっていくのか全然見えないですけど……DEZERTは変なバンドで、こう見えて気持ち悪いほど仲がいいんですよ。ギスギスしてもそのときだけで終わりだし、他愛もない話をして笑ってるので。メンバーの誕生日会も普通にやるし、普段から一緒に遊びに行くし。「年々仲良くなってない? キモッ!」っていう(笑)。

──いいことじゃないですか(笑)。

Miyako(G)

いやいや、俺の中のバンドのイメージはマンガの「NANA」なんで。売れて、メンバーとモメて、事務所の社長を殴ったりするという(笑)。ウチのバンドはまったく違ってて、部活みたいですから。部活って「これやってなんの意味があるの?」なんて思わないじゃないですか。しかも引退がない部活ですからね……まあ、“バンドは引退がない部活”というところをフィーチャーされるとヤバいけど(笑)、それくらい、1人でやってない感があるんですよ。

──そういう一体感があるのは、どうしてだと思いますか?

まず、「迷ったら曲のために何をすればいいかを考える」ということですかね。よく、「自分のエゴは消そう」とメンバーに言ってるんですよ。カッコよく弾きたいのはわかるけど、「それで曲はカッコよくなるの?」と。人間だから、意見も違うし、やりたいことも違う。それを表に出しちゃうと、絶対モメちゃうんです。そうじゃなくて、生まれてきたものを大切にできれば、バンドはけっこうまとまるものなんです。「I'm sorry」なんて、ドラムとベースが入ってないんですよ。以前だったら「なんでドラム入ってないの? 叩かせろよ」ってなったかもしれないけど、「曲として考えたら、どう?」という話をして、「ドラムは要らないね」ということになった。それはプレイヤーとしてのプライドを捨てたんじゃなくて、視野が広くなったからだと思うんです。俺も「曲を作ってるのは自分だから」なんて言わないですから。実際、作らせていただいているという感じなので……いや、うっすらとは思いますけどね。最初の形を作ったのは俺だって(笑)。でもそれは人に言うんじゃなくて、自分を慰めるために思ってるだけですけど。

今のウチらだったら変わる

──最後に今後の展望について聞かせてください。2020年2月から3月にかけて、アルバム「black hole」のリリースを記念したライブ「DEZERT 2020 LIVE / 天使の前頭葉」が開催されます。池袋のライブハウス・BlackHoleでの7日間公演ですが、こういったライブを企画したのはどうしてですか?

自分としては、特に変わったことをやってるつもりはないんですよ。ライブハウスがウチの近所だし、ずっとホームにしてる小屋で、7日間公演を快く受け入れてくれたので。「もっと大きいところでやれば?」と言われることもあるけど関係ないんです。ここでアルバムの曲を育てたいんですよ。アルバムのツアーで東京や大阪で1本ライブやっても曲はなかなか育たないと思っていて。と言っても、ただ曲をやるだけですけど。7日間やれば、その間にいろいろ考えるだろうし。

──その中で自然と演奏も変わってくるだろうと。

今のウチらだったら変わると思います。地方のツアーは求めてもらえるんだったら行けばいいと思うし。

──なるほど。次の作品に向けて曲も書いてますか?

はい。今、謎の曲を作ってます。ちょっと暇があると作っちゃうんですよね。何かやってないと、また「俺たちの終着点はどこだろう?」とか、ムダなことを考えちゃうので(笑)。

ライブ情報

DEZERT 2020 LIVE / 天使の前頭葉
  • 2020年2月22日(土)東京都 BlackHole
  • 2020年2月23日(日・祝)東京都 BlackHole
  • 2020年2月25日(火)東京都 BlackHole
  • 2020年2月26日(水)東京都 BlackHole
  • 2020年2月29日(土)東京都 BlackHole
  • 2020年3月1日(日)東京都 BlackHole
  • 2020年3月2日(月)東京都 BlackHole