Devil ANTHEM.|“沸ける正統派アイドル”を体現できなくなったデビアンの今

佐藤海人マネージャー / プロデューサー
インタビュー

いい機会だからどうぞじっくり観てください

──デビアンはコロナ禍の中でかなりの回数の生配信ライブを重ねてきましたが、手応えはいかがでしたか?

佐藤海人マネージャー / プロデューサー

うちは配信ライブを取り入れるのがかなり早かったんですよ。いろんなプラットフォームを試してきて、やっとそのやり方をつかめてきた感じです。でも今はもうお客さんを入れてライブをやり始めているところが多いので、そのノウハウがあまり使えないというか、ビジネス的に成立しないところもあるんです。この2カ月くらいで配信のみのライブの価値が一気に落ちた気がしていて。うちとしては高画質で配信できるプラットフォームを探したり、普段のライブとは違うミックスにしたりといろいろ試行錯誤してお金もかけてきたので、配信ライブについては正直かなり自信があるんですけどね。

──コロナが収束して観客を普通に入れられるようになっても配信ライブの文化は続いていく、という意見も多いように思いますが。

やっぱり現場で観るライブには敵わないんですよ。みんなその楽しさを知っちゃってるから。ライブとは別のもの、映像としていいものを作って出さないと配信は成立しないと思っています。ライブハウスではなくスタジオを借りてテレビ番組みたいにするとか。僕としてはお客さんも入れつつ、ライブ映像を配信することに抵抗があるんですよ。その形式でやる場合、僕は音響の卓を2つ用意したいんです。現場用の卓と、配信用の卓。でも対バンイベントとかではそれができないことが多くて、おまけみたいな感覚で配信する形になっちゃう。なので、うち主催のライブでは有観客と生配信を両立させていくことは今後はないと思います。

──なるほど。

あと配信ライブはチケットを1枚だけ買ったら友達を集めてみんなで一緒に観ることができるので、そういう意味でもビジネスとして成立させづらいんです。映像を撮影して配信するのは普通にライブハウスを借りるよりお金がかかりますし。ただ、生配信ではなく、会場に来られなかった人に向けてライブ映像のアーカイブを売るのはありかもしれないですね。うちのグループはまだライブDVDを作って売るような規模ではないですが、それに近い感覚というか。

橋本侑芽

──現在開催中のツアーでは生配信は行わず、規制を設けたうえで会場にお客さんを入れていますね。

メンバーも言っていましたが、会場側のルールもそれぞれ違うから難しいんです。だけどそのルールの中で、ちゃんと楽しんでもらえるようにしたいと思っています。例えば、椅子の上に立つ“椅子リフト”をできるようにするとか。もちろん感染リスクの対策はしっかり取りつつですけどね。もしお客さんがコロナに感染してしまったら、実際にどこで濃厚接触したにしろライブハウスが原因にされてしまうので。

──“沸ける現場”ではなくなってしまったことについてはどう感じていますか?

そこに関しては全然ダメージを感じていないです。もちろんアイドルのライブはお客さんの盛り上がりありきなんですけど、その前にステージを作り上げることにお金と時間と労力をかけているんですよ。ただ立って無言で観ていても楽しいのが一番いいライブだと思っているし、うちもそこを目指していて。それをお客さんがさらに盛り上げてくれて100点のライブが120点になったらうれしいし、盛り上がるなら規制がないほうがいいという価値観ですね。コールがなかったら楽しくないとか、冷静になったら見れたものじゃないというライブを作ってるつもりはないので、そういう面でほかのアイドルに負ける気はしません。「いい機会だからどうぞじっくり観てください」というスタンスです。

竹本あいり

──デビアンのライブはオケが爆音であることも特徴の1つですよね。

実は今回のツアーのほうが今までより大きい音を出してるんですよ。大きな音量でどれだけきれいに音を出せるのか、というのも技術じゃないですか。普通はオケを大きく出したら声がまったく聞こえなったり、耳がキンキンしたりしますが、そこのバランスもしっかりこだわっているし、お客さんのコールがかき消されてもしっかり楽しめるライブにしようと考えています。

絶対にオタ切りはしたくない

──ニューシングル「VS」の作詞作曲を今城沙々さんに依頼したのにはどういった経緯があったんですか?

竹越くるみ

いつもリリースしているレーベル内の人事異動の関係もあったんですけど、竹越くるみが「@JAM」発の期間限定ユニット・S.T.Oのメンバーに選ばれた縁もあり、今回MUSIC@NOTEからリリースさせてもらえることになって。橋元(恵一。「@JAM」の総合プロデューサー)さんとは飲みにいかせてもらったりしてますし、タワーのスタッフである吉野省吾も10代からの付き合いですし、やりやすい環境ではあります。そういう環境の変化もあり、シングルの中身も何か変えようと思って、今回はひさしぶりに今城にお願いすることにしました。あとここ最近はカッコいい方向の曲を連続でリリースしていましたが、そっちに突き進むつもりはないし、面白いことを含めて幅広いものを見せたいという意図もありますね。

──サウンド面では具体的にどういう発注をしたんですか?

今回はあまりジャンルを絞らなかったんです。最近、今城がFES☆TIVEさんとかにいい曲を提供していたのを知っていたので、うちでもごちゃごちゃしたお祭りっぽい曲を作ってもらおうと思って。ドラムのキックとベースといったリズムの部分だけはしっかりしたダンスミュージックにしてもらって、その上にいろんな音を自由に乗せてもらいました。

──ではカップリング曲の「ストレライド」は?

水野瞳

「ストレライド」は90年代のミクスチャーバンドの雰囲気をデビアンに反映させようと思ってできた曲です。ある日、深夜のスタジオで山下智輝と一緒にYouTubeを観ていたらどんどん話が転がっていって、たまたまそのあたりの音楽にたどり着きました。今までの曲はもっと考え抜いてジャンルを絞ってるんですけど、今回はノリに近い形で方向性が決まりましたね。

──コンスタントに作品のリリースとツアーの開催を重ねていますが、デビアンはどこを目指して活動しているんでしょう?

これまではグループの規模を測るときにワンマンライブの動員数がその指標になっていましたが、これからはSNSのフォロワー数やYouTubeチャンネルの登録者数が大きな意味を持ってくると思うんですよ。そうなるとライブの価値が下がってしまう可能性もあるわけで。インターネットの世界だけですべてを測られてしまうのはすごく寂しいし、パフォーマンスを観てがっかりされることが一番ショックなのでライブで手を抜く気は全然ないですが、そのバランスをどう取りながら進めていくべきかなと考えています。

──将来像みたいなものは見えているんですか?

安藤楓

最終的なアイドルの将来像としては2パターンあると思ってるんです。AKB48やももいろクローバーZみたいにアイドルタレント化していくパターンと、BABYMETALやPerfumeみたいにアーティスト化していくパターン。どっちに転がっても勝ちだから今の段階でその選択肢を意識はしていないんですが、そこまでの過程が大事なので、ちゃんと会場の規模を大きくしていってあげたいなと考えています。アイドルファンのお客さんだけでいけるところまでいきたいんですけど、ある段階から一般層のお客さんも取り入れていかなくちゃいけないし、そういう意味ではメジャーレーベルと組みたいとも思ってますね。メンバーはメジャーデビューしてテレビ番組に出たいくらいのイメージかもしれないですが、自分にない専門知識を持っている人とタッグを組んで外に広げていけるというメリットもあるので。ただ、そっちの方向に進むにしても絶対にオタ切りはしたくないし、接触もできるところまではやっていきたいと思っています。アイドルとしての要素は残さないとつまらなくなっちゃうので。