Devil ANTHEM.|“沸ける正統派アイドル”を体現できなくなったデビアンの今

戦いの前に聴いてほしい「VS」

──ツアーの大阪公演では、9月9日に「@JAM」とタワーレコードによるコラボレーションレーベル・MUSIC@NOTEよりニューシングル「VS」がリリースされることが発表されました。

くるみ 表題曲の「VS」はひさしぶりに今城沙々さんが作ってくださった曲なんです。デビアンの初期の曲はほとんど今城さんが手がけていたので、その頃の曲の雰囲気が好きな方にはすごくハマると思います。ダンスは戦隊モノをイメージした遊び心がある振り付けになっていて、みんなで楽しくレッスンできました。でも、どんなときに聴いてほしいか……と考えるとちょっと難しくて(笑)。

 戦いの前?(笑) 受験の前とか?

くるみ あと大事な会議の前とかに聴いて気持ちを高めてもらえたら!

あいり なんだかもうアイドルのやる歌や振りじゃないよね(笑)。それを真面目に全力でやるところに注目してほしいです。

くるみ アー写やジャケ写も戦ってる感じのデザインなんです。前回のアー写でも戦闘のポーズを決めていて、佐藤さん(マネージャー兼プロデューサーの佐藤海人)がそれを気に入ったんだと思います。最近はストレートにカッコいいデビアンを表現してきたので、そこに面白さを足したんじゃないかな。ほかにお気に入りのポイントある?

 サビの振りじゃない?

 狂ったように踊ってるんです。マエケン体操のデビアンバージョンというか。

くるみ レッスンをしていくうちに振りがけっこう変わっていったんだよね。どんどん激しくなって、最終的にこの1曲だけで大汗をかくようになりました(笑)。

──黄緑色のラインが入った衣装も、ただカッコいいだけではない、印象に残りやすいデザインになっていますね。

くるみ 着ていて少し暑いんですけど、ステージ上ですごく目立つと思います。

あいり 夜に交通整理している人みたいだよね(笑)。

 あと靴が分厚くて、すごくジャンプしやすいんです。この靴だったら存分に戦えます!

Devil ANTHEM.

戦いの気分を落ち着かせる「ストレライド」

──シングルには「VS」のほか、山下智輝さんが手がけた「ストレライド」がカップリング曲として収められます。

 「ストレライド」は魅せる曲ですね。聴いていると心が浄化されます。

 幻想的な曲だよね。

くるみ 歌っていてすごく優しい気持ちになります。お客さんも「ストレライド」が始まると静かになるよね。じっくりと歌声を聴いていて。「VS」で戦う気分になって、「ストレライド」で落ち着いていくというのが今回のシングルの流れです。この曲は全員で歌うところが最後のサビしかないので、その分メンバー1人ひとりの見せ場があるし、ライブで歌唱力が問われると思います。沸く系ではないけど、セトリに入っているとうれしい。枠にハマっていないというか、これからの伸びしろが多い曲でもあります。

 ラップパートがあるのも特徴だよね。

竹越くるみ

くるみ レコーディングではみんなで1つのブースに入って、あいりちゃんが歌っている周りでラップをやりました。それがめちゃくちゃ楽しかったですね(笑)。でも歌詞には英単語がたくさんあって、正直意味が全然わからなかったです。

あいり それぞれが自分たちの解釈で歌ってます。

──新曲の歌詞が届いてもその意味がよくわからない、というのはよくあることなんですか?

侑芽 ありますね。佐藤さんが書く歌詞が一番難しいんです(笑)。「Dark"s" side」とか、「Clover」とか。

あいり 「えっとねれみしー」(2018年11月発表のシングル)を出したときくらいから、ファンや関係者の方に「これってどういう曲なんですか?」と聞かれることが多くなったよね。

くるみ そこで「わからないんですよ!」と答えるのは恥ずかしいじゃないですか。そのときからみんな歌詞の意味を考察するようになりました。

デビアンが勝負する場所

──コロナが収束して“沸ける現場”が戻ってくるまでまだまだ時間がかかりそうですが、今後の活動に不安はないですか?

くるみ 佐藤さんがどんどん新しいことを提示してくれるので、私たちはその船に乗って自分たちのできることをがんばるのみだと思っています。でも、ファンの方をつなぎとめるというか、自分たちのことを見続けてもらうための努力はしないといけないなと感じています。こういう時期にこそSNSをうまく使ったもの勝ちだなと思うところはあって、例えば瞳ちゃんはアイドルさんの曲をカバーして踊ったり、あいりちゃんは料理の動画を上げたりしているんですけど、正直みんなSNSが苦手なんですよ(笑)。その中でどう発信していくかが課題ですね。

あいり ライブがまったくない期間が一番つらかったよね。SNSが得意なアイドルさんがバズったりしている一方、私たちにできることは少なくて。スケジュールに配信ライブの予定が入ってきてやっと息ができるようになったというか、ライブという自分たちの畑からデビアンを外に広められるようになりました。今の状況の中でも新規のファンの方はちゃんと増え続けているので、完全にライブを奪われていた時期よりは戦えるようになったと思います。

くるみ デビアンの一番の強みは、遊びに行く感覚でお客さんがライブに来てくれることだと思うんですよ。メンバーのことが好きで来てくださる方もいるけど、ライブ自体を楽しんでいる人が多くて。なので配信ライブも何もない状態のときは、「何したらいいの……?」という気持ちでした。

水野瞳

 学校もないし、仕事もないし、外出もできない。ホントに寝ることしかしてなくて、自分がアイドルであることの実感がどんどん薄れていきました。自粛期間前、最後にライブをしたのが3月末で、「最低でも1年間はもとには戻れない」みたいな話を聞くと、余計につらくなりました。

あいり 自粛期間中は離れていく人もいたよね。

くるみ Twitterのフォローを外されたんですよ!

 みんな何も言わずに外すんだよね(笑)。

くるみ その人のタイムラインを見に行ったら、デビアンのことがまったく触れられてなくて。こういうときこそかわいい写真をいっぱい上げたもの勝ちなんだなと思いました。

あいり 「でも、私たちはそこで戦いたくないね」って話してたんだよね。「早くライブしたい!」って。

くるみ SNSに強くても、蓋を開けたら空っぽなのが一番恥ずかしいじゃないですか。うちらは中身がしっかり詰まっているので、仕上げて見せるためのハードルは高いかもしれないけど、そこで勝負していきたいです。