Devil ANTHEM.は昨年12月27日開催の東京・TOKYO DOME CITY HALL公演をもって一時活動を休止。結成10周年という節目のタイミングで、自分自身の将来やグループについて見つめ直す機会として一度“立ち止まる”選択をした。
活動休止期間や再開後の体制については何も明かされていなかったが、今年2月に入ると、竹本あいりの卒業を発表すると同時に、新メンバーが加入することがアナウンスされた。そしてデビアンは、ともにアイドル活動どころか芸能活動すべてが未経験の19歳である塩崎めいさ、矢吹寧々を迎え、早くもアイドルシーンにカムバック。2月26日に新体制第1弾楽曲「REBUILD」、3月12日に第2弾楽曲「DCB」を配信リリースした。
活休を機に別の道に進むという選択肢もあった中、竹越くるみ、水野瞳、安藤楓、橋本侑芽がデビアンでの活動継続を選んだ理由とは? また、新メンバーの塩崎と矢吹はどのような思いを抱えてグループに加わったのか? 3月23日と4月1日に開催される再始動ライブを前に、新生デビアンの6人にじっくりと話を聞いた。
取材・文 / 近藤隼人撮影 / はぎひさこ
デビアンで活動を続けようと思った理由
──新メンバーについて掘り下げる前に、まずは竹越くるみさん、水野瞳さん、安藤楓さん、橋本侑芽さんに、活動継続を決断した胸中を聞かせてください。デビアンの活動休止は「10周年という節目のタイミングで自分自身のこと、将来のこと、Devil ANTHEM.というグループの存在意義、居場所をしっかり考え見つめ直す機会」とのことでしたが、竹本あいりさんが2月に卒業されたように、ほかの皆さんにも「卒業」という選択肢があったと思います。ほかの道へ進むうえで一番自然なタイミングだったとも言えるわけですが、それでもデビアンで活動を続けようと思ったのはなぜですか?
竹越くるみ 私から言うと、2024年1月2日にデビアンの活動休止の発表をして、そこからいろいろと考えながら1年間活動してきたわけですけど、グループの活休と同時に自分も活動を終えようかなと、正直そう考えていることが多かったです。ちょうど周りの大学生の友達が就職活動を始める時期で、次のステップに進む人たちの姿を間近に見ていたんですね。友達が遊んでいた時期は、自分も若いし、何をやっていてもいいというか、何も気にすることなくデビアンで活動できていたんですけど、みんなが人生について考え始めたり、新たなスタートを切ったりしているのを見ると「私は10代をデビアンに捧げたわけだし、20代は……」と考えるようになってきて。そもそも10年前にデビアンの活動を始めたときは小学校6年生の子供だったし、自分だけの意思ではなくて、親が道を示してくれていた部分もあったんですよ。そしてデビアンという船に乗り、佐藤さん(Devil ANTHEM.のプロデューサー兼マネージャー佐藤海人氏)が舵を切ってくれる中で、私はできることを精一杯やってきた。そういう10年を生きてきたので、次は自分で自分の人生の舵を切りたいと思うようになりました。
──自分が進む道について思案しながら2024年を過ごしていたんですね。
くるみ 今までファンの人のために歌って踊ってきたけど、もし自分のために生きるとなったら私は何がしたいんだろうと、そういうことを考えていました。でも、考えているうちにわけがわからなくなって。デビアンとしての活動はすごく楽しいし、今度はアイドルを辞めようとしている自分に対して迷いで出てきました。夏フェスにいろいろ出させてもらった時期かな、それくらいのタイミングで、やっぱり私はデビアンがすごく好きだなと再認識して。それまでは「つらい=がんばっている」という固定観念があって、楽しいことばかり続けているのはダメだと勝手に思っていたんですよね。「私はこんなに楽しい気持ちで過ごしていていいんだろうか」って。そんな中、私の歌を好きって言ってくれる人がいて、大きい会場でワンマンができて、多くの人が集まってくれる。それをお仕事にできている自分はものすごく恵まれているんだなと気付きました。それで改めて、自分の意志でデビアンを続けていくことを決意できました。グループの活休を発表したことで葛藤したり悩むことが多かった1年でしたが、それが逆によかったと今改めて思います。
安藤楓 私の場合は、デビアンの活休が決まったときから、この先もグループに居続けようという意思が固まっていました。でも、「辞めたいかも」と思う瞬間もたまにあって。友達が大学に通ったり、バイトをしたり、遊んだりしている姿を見たときに「私もそっちのほうが幸せなのかも」「この機会にほかの道に行くのもありかもしれない」と考えたりしました。だた、私はほかのアイドルさんのライブとかミュージカルを観るのが好きで、客席にいると自分がステージに立っているときのことを考えてしまうんですよね。「私もこういうふうに踊りたいな、歌いたいな」ってすぐに思っちゃう。そのことに気が付いたときに、私はこの活動にやりがいを感じていて、デビアンにいるのが一番幸せなんだなと実感しました。あと「楓ちゃんのライブを観て元気をもらって、仕事をがんばれるようになりました」とか、ファンの方からそういう声をもらうと、この活動を通して人に元気や希望を与え続けたいなと改めて思います。
橋本侑芽 私も自分の将来について考えるうえで、周りからの影響が大きかったです。今までは周りの言葉を素直に受け入れられなくて、「私は私」みたいな考え方で自分勝手なところがあったんですけど、この1年間、いろんな方のお話やアドバイスを聞いて、ちゃんとそれを受け止めて考えた結果、デビアンの活動を続けながらも自分のやりたいことを両立できるんじゃないかと考えるようになりました。デビアンの活動を通して成長できていると思うし、この環境に身を置けることのありがたさを改めて知って、ここで辞めたらすごくもったいないなって。そう考えたときに、デビアンを続ける覚悟を持つことができました。あと、活休期間は1カ月丸々お休みで、SNSから一旦離れて自分が興味のあることに触れてみたりしたんですけど、アイドルさんのライブを観て改めてアイドルって素敵な存在だなと気付きました。今は「早くライブがしたい」「ファンの皆さんに会いたい」という気持ちでいっぱいです。
水野瞳 私もみんなと同じで、活休発表後の半年くらいは悩みまくってました。不安を抱えながらツアーを回って、ファンの方たちのいろいろな感情をダイレクトに受け取って、正直すごくしんどかったです。夏頃には活動を続けるという決断をしたんですけど、特典会とかでそのことをまだ伝えられなかったから、ファンの方をだましているような気がしちゃって。活休について聞かれたらわざと軽い感じで答えていたし、対面でしゃべっていると相手の表情が曇る瞬間とかもわかるじゃないですか。夏からの半年間はそういうことでもやもやしていました。あとSNSでエゴサすると、デビアンのファンじゃない人がいろいろと言っていたんですね。私たちは前向きな選択として活動を休止するのに「デビアンはもう戻ってこないんじゃないか」と言われたり。確かに活動を休止したあとそのまま解散状態になるグループもいますが、「こういうことを言われるなんて悲しいな。この業界に残ると決断したけど、その決断をしてよかったなと思えることを早く見つけないと壊れちゃう」と思いました。
──昨年のインタビューでは、くるみさんが「絶対に活動休止しないほうがいいって反対しました」と話していましたし、活動継続を即決したメンバーのほうが多いのかなと思っていたのですが、4人それぞれに葛藤があったんですね。
瞳 はい。そんな中、活動休止前のラストワンマンを迎えて。私たちのことで泣いてくれて、感情をむき出しにしてライブを楽しんでくれている大勢のファンの方の姿を見たら「来年もこの景色が見られるようにがんばりたいな」と改めて感じました。あと、私もほかのアイドルさんのライブを観に行ったんですけど、自分もそこで現役アイドルでいられることの喜びを実感しました。アイドルという職業やアイドルシーンをまだ信じていたいし、ファンの方たちともう一度手を取り合ってがむしゃらに走っていきたいです。
お休みの期間、何してた?
──お休みの期間はどのように過ごしていたんですか?
瞳 1カ月だけだったから、その期間にやりたいことが全部できたかと言えばそうではないんですけど、普通の女の子の生活をちょっと体験できたと思います。ファンの方からしたら、このスピード感で戻って来ることに対して「早っ!」と思うかもしれないですが(笑)、むしろ私としてはお休みが1カ月でちょうどよかったのなと感じています。
──「早っ!」とは正直僕も思いました(笑)。
くるみ ですよね(笑)。私たちも思いましたから。活休に入る直前、12月の終盤は卒業式を控えた学校のクラスみたいな雰囲気で、「活休入ったら何するー?」「バイトもしたいし、髪も染めたいし、旅行も行きたい」「ゴロゴロしたいけど、予定をいっぱい詰めたい」「1カ月じゃ足りなくない?」って話してました。
楓 私はお休みの間に前髪を切りました。それまでは髪型を自由に変えられなかったので、前髪をぱっつんにして。あと、お友達と大阪と京都に2泊3日の旅行に行きましたね。ユニバ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)にも遊びに行って。あと、二郎にラーメンを食べに行ったり、いちご狩りに行ったり……。
くるみ でも、それって普段の仕事の合間にもできることだよね(笑)。“活休感”がない。
──特に二郎に行くのは、いつでもできるような……。
楓 次の日のことを考えずに好きなものを食べられるのがいいんですよ。翌日に撮影やライブがあると、顔のむくみを心配しなきゃいけないですし。小さな出来事ですけど、お休みの期間に好きなものを食べて幸せを感じました。
くるみ 昼夜逆転して、食っちゃ寝の生活をしていましたね(笑)。私も前髪を切ったり金髪にしたりしようかなと思ったんですけど、2月頭に撮影の予定が入っていたので、それまでの短い期間だけイメチェンをしてももったいないなと考えちゃって。だから私は、普段の休日の1カ月バージョンを過ごした感じです(笑)。でも、明日も明後日も明々後日も休みだから今日は早く寝なくていっか!と思える日々が幸せでした。そしてそういう休みの期間があったことで、仕事をしたいというモードになり、2月のスケジュールが楽しみになりました。
侑芽 私は人生で初めて髪を染めたり、海外旅行に行ったりしました。私は家が大好きで、いつもの休日は外に出ないことが多いんですけど、活休期間中は家にいるのがもったいなく感じてアクティブに外出していたので、お母さんがびっくりしていました(笑)。もしかしたら、ちょっと活発な性格になったのかもしれません。
瞳 私は1回地元の愛知に帰りました。まあ、年末年始には毎年帰ってるんですけど……。
くるみ いつも通りやん。
瞳 でも例年は1月2日にライブが入るから、元日には東京に戻ってきてるんですよ! 3日間くらい帰省できたらいいな、というのがいつもの感覚。でも今年は6日間も地元に帰って、年末年始の恒例行事をしっかりやってきました。お墓参りに行ったり、お年玉を回収したり、お兄ちゃんが結婚したので親族の方々にご挨拶に行ったり。こっちに戻ってきてからは毎週ディズニーシーに遊びに行きました。そして楓ちゃんと一緒に初めて二郎に行って、2日間くらい引きずりました。
楓 もう、胃もたれがすごくて。びっくりしました。
──そう聞くと、確かにライブ前に二郎を食べるのは危険ですね。
瞳 あと何したっけな……あ! エクステを付けました! ずっとボブだったからすごく新鮮で。前髪を切った楓ちゃんと会って、お披露目し合いました(笑)。
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新メンバー2人がDevil ANTHEM.に加入するまで