今年結成10周年を迎えるDevil ANTHEM.が、10月23日にベストアルバム「『Devil ANTHEM. 10th Anniversary Collection「The Best Miraculous Trajectory』」をリリースする。
このベストアルバムは「夜明けの軌跡」「FACT」「ちょまっ!」といった新曲3曲とライブの定番曲を現体制で再レコーディングした12曲、合わせて15曲を収録した作品。「The Best Miraculous Trajectory」というタイトル通り、10年間にわたりアイドルシーンの最前線を走り続けてきたデビアンの“奇跡的な軌跡”が高い濃度で凝縮されている。音楽ナタリーでは本作の発売に合わせてメンバーにインタビューし、豊潤なレパートリーの中からベストアルバムに厳選された過去曲と、3つの新曲に対する思いを聞いた。
なお、デビアンは12月27日に東京・TOKYO DOME CITY HALLで開催する結成10周年記念ライブをもって活動を休止することが決定している。このインタビューでは年末のライブに対する現在の胸の内も語ってもらった。
取材・文 / 近藤隼人撮影 / 坂本陽
メンバーみんながデビアンに青春を捧げてくれたおかげ
──ベストアルバムはデビアンの結成10周年に合わせて制作された作品ですが、唯一のオリジナルメンバーであるくるみさんは、10年という数字にどういう思いがありますか?
竹越くるみ 10年以上アイドルを続けている方はけっこういらっしゃると思うんですけど、その中でも同じグループで10年活動を続けるのは珍しいことだと思うんです。そしてデビアンの強みというのは10年やってるグループなのにメンバーがまだまだ若くて、未来があることだと感じていて。まだどんなことでもできるメンバーばかり。それがデビアンのいいところだと思います。
──結成当初、くるみさんは11歳でしたし、活動開始時のメンバーの年齢が低かった分、10年経ったとしても若々しさがありますね。
くるみ 侑芽や楓も中1のときにグループに入ってきましたし、メンバーみんながデビアンに青春を捧げてくれたおかげで10年も続いていると感じています。人生における大切な時間を活動に捧げるのがアイドルだと思うんですけど、みんなが自分の意思で活動を続けてくれたからこその10年ですね。あと、成長過程に合わせてスタッフさんが私たちにいろんな挑戦をさせてくれたことも大きくて、例えば「Days」とかもそうでした。
──2019年に発表されたシングル「Days」では、当時メンバー全員が高校生だったことに合わせて、その年代ならではの感情が楽曲の中でリアルに表現されました。
くるみ 最近は、だんだんと大人になってきた私たちに合わせて楽曲を用意してくださっています。初期の頃の私たちは本当に子供だったし、佐藤さん(プロデューサー兼マネージャー佐藤海人氏)が敷いてくれたレールの上を走っていたら素晴らしいところにたどり着いていた。そんな感覚ですね。10年の中でいろんな人と出会ったり別れたりしましたし、10年続いているのは本当に私たちだけの力じゃないと身に沁みて感じています。
──ベストアルバムには、そんな10年の歴史の中から厳選したライブの定番曲12曲と新曲3曲が収められます。この10年で楽曲のレパートリーはかなりの数になっていますし、収録されている12曲以外にもファンから人気の高い楽曲は数多くあると思いますが、メンバーの皆さん的にこの収録曲のラインナップを見てどう感じますか?
くるみ 本当に“いつも見る子たち”って感じですね。
竹本あいり 対バンライブで披露しまくってきた曲ばかりで、もう目をつぶってでも踊れるし、耳にタコができるんじゃないかと思うくらい聴いてきました(笑)。私たちにとっては“習慣”になっているような曲たちなんですけど、ライブでやるたびに「やっぱりいい曲だな」と思いますね。
安藤楓 大きなフェスなどに出演させていただいたときに、カマせる楽曲たちです。初めて聴く人の耳に残るような楽曲がこのアルバムにまとまっています。
あいり ワンマンではいつも20曲以上披露していますが、ライブ後にファンの方たちが「今日あの曲やってないね」「これもやってないよ」という会話をしていることがあって。それくらい大切な曲、ファンの皆さんがライブで聴きたいと思う曲が増えていることにびっくりしています。その中でもこの12曲は特にライブの鉄板曲というイメージです。
5人それぞれの思い出深い楽曲は
──初期曲にも最近リリースされた楽曲にも、時期に偏りがなくライブの人気曲があるのが素晴らしいです。ベストアルバムの収録曲の中で、メンバーの皆さんにとって特に思い入れが強い楽曲はどれですか?
くるみ 私は「ココロカラ」ですね。結成当初は持ち曲が「あなたにANTHEM」「おんなのこけいさつ」「BE AMBITIOUS!!」の3曲しかなかったんですけど、そんな中で初めての新曲として届いたのが「ココロカラ」で。当時は予算がなくてレッスンスタジオを借りれなくて、市民体育館で練習していた思い出がありますが、それからずっと最前線で活躍している曲です。
──ベストアルバムには「あなたにANTHEM」も収録されますが、この初期曲2曲は今でも現役バリバリですね。
くるみ 「おんなのこけいさつ」もライブでやると盛り上がりますし、ほかのアイドルさんもそうですけど、初期曲はやっぱり強いですよね(笑)。
あいり 私にとっては「EMOTIONAL」(2017年10月発表のシングルの表題曲)が加入後初のシングルだったんですけど、当時、歌割りを全然もらえなくて。歌が下手でしたし、悔しい思いをしつつも「いつか私も歌割りをしっかりもらえるようになりたい」という目標を抱いたのを覚えています。佐藤さんとしても「この子たちにこの曲はまだ早かったかな」と思っていたらしいんですけど、「EMOTIONAL」はライブの大事な場面や、タイトル通りお客さんをエモーショナルな気持ちにさせたいときに歌う曲で、最近は説得力のあるパフォーマンスを見せられている気がします。「このままじゃまだ終われないから」という歌詞が加入当時のことを思い起こさせてくれますし、それと同時に自分の成長を実感します。歌っていて泣きそうになる曲です。
水野瞳 私は「ミッドナイトドライブ」(2021年10月発表のアルバム「らいなう」収録曲)に思い入れがあります。デビアンに加入してから初めてしっかりした落ちサビのパートをいただいた曲で、先日の生演奏ライブのときも感じましたが(参照:Devil ANTHEM.初の全編生演奏ライブ、大所帯の“でび楽団”参加で多彩な楽曲がパワーアップ)、1曲を通して遊びやすいんです。縛られるのがそんなに好きじゃない、自分の性格に合った曲だと思います。ファンの方を先導してサビで一緒にジャンプするのも新鮮ですし、メロディがキャッチーなので万人受けする楽曲だと感じています。
楓 私の思い入れが強い曲は「Fever」(2017年4月発表のアルバムの表題曲)です。リリースイベントの最後の回で、会場いっぱいに人が集まったことがすごく記憶に残っていて。この曲でファンの方が一気に増えた印象があります。セットリストのどこに置いても盛り上がるんですよ。ライブではコールがたくさん入りますし、「Fever」が聴きたくてライブに来てくれる人もいますし、この曲があることのありがたさをずっと感じています。
橋本侑芽 私は、去年リリースしたメジャーデビュー曲の「ar」が思い出深いです。歌詞が自分たちのリアルな心情とマッチしているし、気持ちが沈んだときに寄り添ってくれる曲だと思います。いつ聴いても心に染みる、すごくエモい曲だなって。知ってくれた人もたくさんいますし、この先もずっと愛され続ける楽曲だと思います。
──メジャーデビューという大事なタイミングで、また1つキラーチューンを生み出せたのは大きいですよね。
くるみ 去年の夏はすべてのライブのセトリに「ar」が入っていて、もうしつこいくらい披露したんですけど(笑)、やっぱり何回歌ってもいい曲だなと思います。
──ベストアルバムに収録される過去曲12曲は、今作の発売に合わせて再レコーディングしたと聞きました。特に初期曲は楽曲発表時とはメンバーの編成も年齢もだいぶ違いますし、オリジナル音源から大幅なアップデートがされている印象です。
楓 レコーディングしていて、デビアンの曲って全部難しいんだなと改めて思いました。ライブで歌っていても感じるんですけど、今回再録して「こんな高かったけ!?」とか「こんなに音程いろいろ変わってたっけ!?」と驚きました。
くるみ 新曲をレコーディングするときよりも難しかった気がします。ライブだと勢いで歌える側面もありますが、スタジオのブースに入って改めてしっかり歌うとなるとまた違うんですよね。何回も録り直させてもらいました。
あいり 昔の曲に関しては下手だった頃の感覚が残っているというか、ちゃんと成長できているかちょっと不安だったんですけど、レコーディングした音源を聴いたらオリジナルとちゃんと違うものになっていたのでよかったです。
──改めてレコーディングする難しさを感じながらも、歌唱力の成長はしっかり実感できたと。
くるみ 歌唱力だけじゃなく、楽曲への理解度が変わったと思います。だからこそ「もっとこう歌いたい」という欲が出てきて、その分、歌うのが難しく感じるんです。
あいり あと、ライブで披露するうちに歌い方がどんどん変わっていくんですよね。アクセントの付け方とか、しゃくり方とか、そういう違いもベストアルバムでは楽しめると思います。
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まだデビアンは新しいことに挑戦できる