ナタリー PowerPush - 電気グルーヴ

アルバム誕生エピソードから不味い蕎麦屋の話まで! 本音トーク満載のロングインタビュー

狙うはジャパンマネー

——日本では最近カバー曲がブームで、多くの人がカバーアルバムに取り組んだりしています。「Shangri-La」もよくカバーされてるんですけど…。

卓球:また新しいの出てたでしょ!?

瀧:カバー?

卓球:「Shangri-La」をまた別のやつがやってた。

瀧:ふーん。

——きっとそれはSaori@destinyというアキバ系の路上アイドルだと思います。

瀧:へー。知らない。

卓球:俺、BeForUがやってるカバーはPVを観ました。

瀧:そのPVが俺のとこにメールで送られてきました。それ観て「へー、こんなのあるんだー」っつって(笑)。

——聴いてみてどう思いました?

卓球:全然いいですよ!だって何もしないのに印税入ってくるんだよ!? いいに決まってるじゃんそんなの(笑)。

——いや、そうじゃなくて、あの曲を聴いたりPVを観た感想として。

卓球:何でもいいですよ別に。だってウチらと関係ないし。熱心な電気グルーヴのファンの人たちが「人の想い出を台無しにしやがって!」みたいなこと言ってますけど。

瀧:知らないよねそんなの(笑)。

卓球:もしウチらが「誰にも自分の想い出は壊されたくないから!」って気持ちだったら最初っから自分のCD自体を売らないし。どうぞどうぞって感じですよ。

瀧:どうせやんなら売れてくんねえかなってくらいのもんで。

卓球:そうそうそう。一番ナシなのは、カバーしてCD出したけどコケて、なぜかそれがウチらのせいみたいになるっつう(笑)。売れないカバーが山ほどあるって、それカッコ悪いよねぇ(笑)。でも全然いいですよ。ただ、あの曲に関してはシルベッティのサンプリングだからなあ。孫引きじゃないですか。どうせだったらウチらが作詞・作曲した曲にしてほしいよね。

瀧:入ってくるお金も違ってくるし。

卓球:そりゃ誰だってお金が欲しいでしょう。

瀧:金だよ金!狙うはジャパンマネーだよ!

卓球:ジャパンマネーなんだ。円のみ?

瀧:円のみ!!

卓球:あ、これドルだからいらなーい!

瀧:ドルだめー。いらなーい。紙くずだ。

卓球:見たことないお金だ、とか。ハハハ(笑)。

味のわからないやつです!

インタビュー写真

——例えば「Shangri-La」みたいなヒット曲をこれからまた作ろうって、そういう色気みたいなのってやっぱりあるんですか?

卓球:そりゃ常に考えてますよ!できないだけですよ(笑)。自分たちとその周辺にしか理解できないものを作ってるつもりはないので。ただ昔と違って今は、何かの手法を取り入れると売れるとか、そういう分析をしてどうこうなるもんじゃないし。やっぱある程度その時期の音楽シーンだったりを体感してないとダメなんですよ。ウチらそういうの全然知らないんで、意図的に作ろうと思ってもヒット曲にはならないと思います。授かりものみたいなものだと思ってるんですよね、ヒット曲って。「Shangri-La」だってそんなようなもんだったし。ボチボチこのあたりでまた授かれればいいんですけどね(笑)。

瀧:「どんだけtheジャイアント」が飛ぶように売れねえかなとか思ったりしますよホントに(笑)。

卓球:もう考え方としては、つげ義春の「無能の人」と完全に一緒です。

瀧:この石、高く売れねえかな~っていう。売れないのは社会がおかしいからだ!

卓球:ウチらは別にアヴァンギャルドなことをやってるつもりはないし、そんなに間口を狭く取ってるつもりはないので、そういう部分でひねくれたところはないですよ。まあ、もうちょっと売れてもいいかなとは思うんですけど(笑)。

——チャートの順位は気になりますか?

卓球:いや、チャートの順位とかは別にどうでもよくって、どちらかというと枚数を気にする。チャートってその週によって売上枚数が全然違うから、例えば同じ10位だったとしても全体的に売れてる週と売れてない週では全然意味が違うもん。今はコピーされるから、実際の売上枚数よりも聴いてる人が少ないってことはないし。

瀧:まあ、わかりやすいからね。チャートで何位って順位付けされるのは。

卓球:そういうのはどっちかというとレコード会社が考えることなのに、最近はお客さんが考えてるっていうのが奇異に見えるんだけど。このCDはチャート上位に入ったから優れてる!とか、これはこれより売れてるからこっちのほうが良い!とかさ、わけわかんねえ。じゃあ売れてりゃ聴くの?って感じじゃん。

瀧:行列のできる店に並ぶ感じだよね。行列ができてるから並ぶ、旨いかどうかはわかんないけど、旨いに違いないから、っていう。

卓球:そう、瀧みたいにちゃんと自分の足で店を探そうよ。なんだっけ?DJ DRAGONが入った店に瀧の色紙だけが貼ってあってさ、その店がすごい不味いんだ!っつって(笑)。

瀧:蕎麦屋だよ。

卓球:それはそれで迷惑だよなー。味のわからないやつです!って書いてあるようなもんだ(笑)。

瀧:恥ずかしい(笑)。

——蕎麦屋で「瀧さんですよね?」って言われてサインをねだられたわけですか?

瀧:そうです。って自分からサイン書いて置いてくるわけないでしょうそんなの!(笑)

卓球:「ちょっとマスター呼んでくれる?」

瀧:「あ~うまかった。…じゃ、これ」って色紙差し出して。お勘定払わずに(笑)。

卓球:財布は空だけど色紙は常にいっぱい持ってるっていう(笑)。

瀧:小脇に色紙抱えて飲食店に行くの。

卓球:家族とな。「おい!行くぞ!」とか言って(笑)。

瀧:「次はあの店がターゲットだ!!」

——ハハハ(笑)。では最後にこれからの活動について伺いたいんですが、そういえば電気グルーヴってインディーズから数えて来年で20年になるんですよね。

卓球:途中8年休んでるんで、20周年まであと8年あるんですよ。8年留年してるんで(笑)。なんで特にイベントとかいうのも考えてないんです。

——来年以降も今年と同じようなペースで続ける予定ですか?

卓球:ニューアルバムはしばらくどうなるかわからないんですけど、今度のツアーが終わったらおそらくその次のツアーをまたまわって、それをDVDだったり何らかの形にしたいなと思ってます。あと、それにあわせて電気グルーヴが過去に出したLDとかVHSの映像アーカイブを出そうかなと。かなり初期の段階で出した映像作品ってまったくDVDになってないんですよね。で、それってそんなに重たい仕事じゃないし、電気グルーヴ以外の活動をしながらでもできることなので、まずそこまでやってみてひと段落したらまた次の展開を考えるって感じかな。

ニューアルバム『YELLOW』2008年10月15日発売 / Ki/oon Records

初回限定盤[CD+DVD]:3360円(税込) / KSCL-1294~5 通常盤[CD]:3059円(税込)KSCL-1296

CD収録曲
  1. Mojo(CM mix)
  2. No.3
  3. さんぷんまるのうた / Sanpunmaru No Uta(Album mix)
  4. Mole~モグラ獣人の告白 / Mole~Confession of Mole Man
  5. どんだけtheジャイアント
  6. Acid House All Night Long
  7. ア.キ.メ.フ.ラ.イ. / A. Ki. Me. Fu. Ra. I.
  8. The Words
  9. 湘南アシッド / Shounan Acid(Album Edit)
  10. Area Arena
  11. Fake It!
初回限定盤DVD収録内容
  1. Mr.Empty
  2. ズーディザイア
  3. 半分人間だもの
  4. モノノケダンス
  5. 少年ヤング
  6. Cafe de 鬼(顔と科学)
プロフィール

電気グルーヴ(でんきぐるーぶ)

80年代後半にインディーズで活動していたバンド・人生の解散後、石野卓球とピエール瀧が中心となり結成。テクノ、エレクトロを独特の感性で構成したトラックと、破天荒なパフォーマンスで話題になる。1991年にアルバム「FLASHPAPA」でメジャーデビューを果たし、同年に砂原良徳が加入(1998年に脱退)。1995年にベルリンのレーベルからシングル「虹」がリリースされたのをきっかけに、海外での活動もスタートさせる。1997年にリリースしたシングル「Shangri-La」が爆発的なヒットを記録。2001年、「WIRE01」のステージを最後に活動休止に突入する。その後はそれぞれソロ活動に専念するが、2005年に再始動。2008年には8年ぶりのアルバム「J-POP」をリリースしている。