ナタリー PowerPush - 電気グルーヴ

アルバム誕生エピソードから不味い蕎麦屋の話まで! 本音トーク満載のロングインタビュー

21世紀初のオリジナルアルバム「J-POP」で世間を騒がせた電気グルーヴが、今度はわずか6カ月のスパンで早くもニューアルバム「YELLOW」をリリースする。夏フェス出演などの精力的な活動を経て生み出されたこの作品には、ますます良い具合に肩の力が抜けた2人の自然体の魅力がたっぷり。音数を削ぎ落としたシンプルなアレンジ、アナログシンセによる太い音色など「J-POP」でみられた特徴的な音作りはそのままに、前作とはまったく異なった印象を与えてくれる1枚だ。

ナタリーではニューアルバムの発売を直前に控えた石野卓球とピエール瀧にインタビューを決行。新作についての話題を中心に、電気グルーヴとしての今後の展望や現在の音楽シーンの状況、そのほか諸々について思うところをじっくりと語ってもらった。

なお、このインタビューは6回に分けて更新。10月8日(水)、9日(木)、10日(金)、13日(月)、14日(火)、15日(水)に掲載予定です。

取材・文/橋本尚平 撮影/平沼久奈

ネット社会の黒い闇

——前作「J-POP」から今回の「YELLOW」までのリリースのスパンはたったの半年。その間に夏フェスなどにも出演していて、これまでの活動ペースを考えるとずいぶん精力的に見えます。なぜこのタイミングで電気グルーヴとしての動きが活発になったのでしょうか。

卓球:8年間も新作を出してなかったとか言うけど、今年2枚出したから平均したら4年に1枚でしょ?

瀧:そういう数え方すんなよって話だけど。まあ、せっかくユニフォームに着替えたんで「1試合じゃなくてせめて2試合やるか」ってことです。

卓球:今だったら曲もないわけではないし、1枚アルバムを作ってある程度感覚もつかんだので、これならもう1枚作れるなと思って。もし数年後に作ろうと思っても、またゼロから始めてエンジンがかかるまで大変じゃないですか。このままエンジンがかかった状態で、地続きで作ったほうがいいんじゃないかってことで。

——「曲もないわけではない」ということは、前作の時点で「YELLOW」の曲ができていたんですか?

卓球:いやいや、そういうわけではなかったんですけど。そもそも、ストックがまだいっぱいあるからと思って「J-POP」のプロモーションのときに「じゃあ、もう1枚出そう」って話をしてたんです。アルバム用の曲は全部あるし、まあ結構楽勝で行けんだろうなと思ってたんですけど…。

瀧:ストックは10曲ぐらいあったんだよね?

卓球:いや30曲ぐらいあると思ってた。

瀧:マジで?(笑)

卓球:逆にどれを削るか選ぶのが大変だなーくらいの感じで。

瀧:で、どれが使えそうかとりあえず1回聴いてみようってことになって。でも聴いたら「あんま使えるのないなー」って話になり。「どうする?」「じゃあやっぱ新しく作るしかないじゃん?」っつって。

インタビュー写真

——「J-POP」が発売されたときのインタビューでは、次のアルバムは「J-POP」のアウトテイク的なものになるという話をしていたそうですが。

卓球:別にアウトテイクとは言ってなかったと思うんですけど。なんかネットでは真逆のこと書かれてるよな。

瀧:アウトテイクってわけではなくて、入る余地がなかったりとか、「J-POP」向きじゃないなってトラックがいっぱい残ってたんで、それを使えばもう1枚アルバムが作れるっていう言い方をしてたと思うんですけど。

卓球:完全に営業妨害をされてるんですよ!「あの店、なんか猫の肉使ってるらしいぜ?」って言われてるようなもんですよ!(笑)

瀧:ネット社会の闇だよ!闇!

卓球:「電気グルーヴのニューアルバムは全曲前作の残り物!アウトテイクや没テイクがたっぷり!ファンにはたまらない内容だ!」って、ファンだってそんなもん聴かされたらたまらないって(笑)。

——ナタリーでもそのように紹介していました…。申し訳ございません。今回キチっと説明しておきます。

瀧:まあでも大丈夫ですよ。ネットに書いてあることは全部本当ですから(笑)。

卓球:ヤラセ疑惑のときに一番乗ってきてくれたのはナタリーですから。

瀧:唯一、騒ぎを煽ってたっつう。

——そういえばあのヤラセ疑惑プロモーションって基本的にみんな面白がってましたけど、ネットでいろいろ意見を見ると、たまに本気で怒ってる人もいましたよね。

瀧:面白いよねえ、あれ。本気でなんか批判みたいなこと書いてるやつとか。

卓球:つーか思う壺なのに。発売2週間前にデモテープって、どう考えても有り得ないってわかるじゃないですか(笑)。「騙された!ゆるせん!」とか言って、そいつもともと買う気ないくせにな。「よ~し、文句言えるぞ!」みたいな感じでさ(笑)。

大型犬から小型犬まで

インタビュー写真

——「YELLOW」というタイトルにはどんな意味があるんですか?この名前を聞くとやっぱり「ORANGE」などを思い浮かべるファンも多いと思うんですが。

卓球:見た目が黄色いからですよ(笑)。

——ジャケットが先にあってタイトルが決まったんですね。

卓球:ジャケットの入稿期限って音の締め切りよりも早いんです。でも入稿の時点でまだ何もできてなくて。スタッフから「とりあえずデザインのコンセプトみたいなもんだけでも教えてくれ」って言われたから、こんな感じの黄色に赤い点と黒いのを付けた絵を渡したんです。しばらくして今度はタイトルを決めてくれって言われて、じゃあ黄色だから「YELLOW」にするかって。あと、このジャケットを作ったときはまだ気付いてなかったんですけど、電気グルーヴのディスコグラフィーを見ると、黄色が多めに使われたジャケットって大抵アタマのおかしいアルバムなんですよ。「DRILL KING ANTHOLOGY」とか。で、レコーディングの途中でそれに気付いて、だったら天久(聖一)の声を入れなきゃマズいだろ!天久と犬の声をもっと積極的に入れなきゃ!ってことになって。

——天久さんの参加と犬の声にはそんな意味が(笑)。

卓球:犬の声もいろんなパターンで入ってます。大型犬から小型犬まで。たまに逆相でも声が入ってるので、モノラルで聴くと犬が消えたり増えたりします。

瀧:黄色ってバカの色だから。

卓球:バカが身に付けさせられる色だから。雨の日でも危なくないように(笑)。信号だと赤に変わる前の色でしょ。「もうちょっとすると危なくなりますよー!」っていう、注意を促す色だもん。

次回「さんぷんまるの曲なんて言われても / 気づいてるのは俺と瀧くらい」に続く!

ニューアルバム『YELLOW』2008年10月15日発売 / Ki/oon Records

初回限定盤[CD+DVD]:3360円(税込) / KSCL-1294~5 通常盤[CD]:3059円(税込)KSCL-1296

CD収録曲
  1. Mojo(CM mix)
  2. No.3
  3. さんぷんまるのうた / Sanpunmaru No Uta(Album mix)
  4. Mole~モグラ獣人の告白 / Mole~Confession of Mole Man
  5. どんだけtheジャイアント
  6. Acid House All Night Long
  7. ア.キ.メ.フ.ラ.イ. / A. Ki. Me. Fu. Ra. I.
  8. The Words
  9. 湘南アシッド / Shounan Acid(Album Edit)
  10. Area Arena
  11. Fake It!
初回限定盤DVD収録内容
  1. Mr.Empty
  2. ズーディザイア
  3. 半分人間だもの
  4. モノノケダンス
  5. 少年ヤング
  6. Cafe de 鬼(顔と科学)
プロフィール

電気グルーヴ(でんきぐるーぶ)

80年代後半にインディーズで活動していたバンド・人生の解散後、石野卓球とピエール瀧が中心となり結成。テクノ、エレクトロを独特の感性で構成したトラックと、破天荒なパフォーマンスで話題になる。1991年にアルバム「FLASHPAPA」でメジャーデビューを果たし、同年に砂原良徳が加入(1998年に脱退)。1995年にベルリンのレーベルからシングル「虹」がリリースされたのをきっかけに、海外での活動もスタートさせる。1997年にリリースしたシングル「Shangri-La」が爆発的なヒットを記録。2001年、「WIRE01」のステージを最後に活動休止に突入する。その後はそれぞれソロ活動に専念するが、2005年に再始動。2008年には8年ぶりのアルバム「J-POP」をリリースしている。