ナタリー PowerPush - 電気グルーヴ

アルバム誕生エピソードから不味い蕎麦屋の話まで! 本音トーク満載のロングインタビュー

例えばテレクラの歌とか

インタビュー写真

——11月には8年ぶりのツアー「叫び始まり 爆発終わり」が行われますが、ツアーの内容についてもう構想はできてるんでしょうか?

卓球:新しいアルバムが2枚もあるんで新曲もやりますし、ひさしぶりのツアーですから昔の曲もいっぱいやろうと。なるたけ新旧織り交ぜたものにしようと思ってるんですけど、なんせまだ先の話なんであんまり決まってないです。問題なのは歌詞をまったく覚えてないってことなんですよね。歌い出しが何だか思い出せないとか。

瀧:歌詞以前に歌の位置がわからないとかね。

卓球:それと、あまりにも昔の曲だから、歌詞を書いたときの気分と今の気分があまりにも剥離しすぎてて。

瀧:その気分になれないから歌詞が出てこないんだよ。

——逆にそれくらい離れてたら、他人の曲のように客観的に歌えるんじゃないかなとも思うんですけど。

卓球:たとえば「金玉が右に寄っちゃった」ぐらいだったら全然歌えるんだけど。本人の作った曲として。一周してそこに戻ってきたって感じだから。

瀧:そこに戻ってきたってのもアレだな(笑)。

卓球:自分の中で結局ずっと変わらなかった部分ということで、あの曲に関しては恥ずかしさは感じないんだけど。それよりも電気の初期とか、世相的な部分が加味されたものってのが一番ギャップがありますね。例えばテレクラの歌とか、もう存在しないじゃないですかそんなもの。それ歌ってもしょうがないっていうか。

例えばPerfumeだったり

インタビュー写真

——アルバムから話が離れるんですけど、最近は日本でもエレクトロハウスがお茶の間レベルでブームになっていて、例えばJUSTICEみたいなアレンジを施された曲が普通にヒットチャートに登場してますよね。で、一般的に「今、テクノがブーム!」みたいに言われているようですが、日本のテクノを牽引してきた電気グルーヴとしてはこの状況をどういう風に感じてるのかなと思いまして。

卓球:うまく便乗できたらなって(笑)。ウチらがその中に入ってないのは百も承知なので、うまい具合に美味しい汁をすすれればなあ、って毎日思ってます。

瀧:なんか良いことないかなーって(笑)。

卓球:その辺のシーンについてよくわからないんだけど、いわゆるエレクトロハウスとかUKとかフレンチハウスみたいのって、フェスなんかで一緒に出演したりはするけど自分のパーティとかで呼んだりしないし。自分が興味があるのは、いわゆるテクノでもドイツのものだったりとか、ミニマルテクノとかだったりするんで。だから今言われているような「テクノブーム」の中にいる、例えばPerfumeだったり、Kitsunéの人たちとかああいうものって、まったく別のジャンルだとは思わないけどあまり接点がないって言うのが正直なところかな。ただ、それがすごく多くの人に支持されているのはわかってます。いまだにテクノ=ピコピコだと思ってる人たちに(笑)。「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」だけを聴きながら、テクノってこんなんなのかー、うわーピコピコしてんだなーって(笑)。だからそういう人たちをうまい具合に騙せて自分も混ざれればいいなと思ったりはするんですけど。

瀧:間違ってウチらに依頼がこないかなーとかな。

卓球:そうそうそう。でも意外とみんな気付いてるみたいで(笑)。

——巷でのエレクトロニックミュージックの隆盛は、自分たちとはあまり関係がないと?

卓球:テクノじゃなくてあくまでテクノポップがブームってことですからねえ。きっと「テクノがブーム」みたいなこと言ってる人たちってある程度年齢いってる人たちだと思うんだけど。若い子はそういう言い方してないでしょ。若い子たちはそこの違いがはっきりわかってるから。クラブに通ってる子たちに昔のテクノポップを聴かせて「ほら、テクノでしょ?」っておっさんが言ったところでさ、これテクノじゃないじゃん、っていう話になると思うんだけど。

——確かに別物ですよね。

卓球:それこそYMOを青春時代に聴いたウチらみたいな人で、そのあと現代までエレクトロニックミュージックとかを追ってなかった人たちが「テクノがブーム」とか言ってるような気がする。ウチらは電気グルーヴとしてというよりいちリスナーとして、テクノポップというかエレクトロポップ / ニューウェーブの頃からずーっと、アシッドハウスも通って、レイブカルチャーとかもあったりとかして、常にエレクトロニックミュージックと寄り添っていたので、いまさらテクノポップとかフレンチハウスの人とかと一緒に括られるのはなんか違和感がある。あんまり音楽知らない人が裏で糸引いてる感じがしちゃいますね。

次回「狙うはジャパンマネー / 味のわからないやつです!」に続く

ニューアルバム『YELLOW』2008年10月15日発売 / Ki/oon Records

初回限定盤[CD+DVD]:3360円(税込) / KSCL-1294~5 通常盤[CD]:3059円(税込)KSCL-1296

CD収録曲
  1. Mojo(CM mix)
  2. No.3
  3. さんぷんまるのうた / Sanpunmaru No Uta(Album mix)
  4. Mole~モグラ獣人の告白 / Mole~Confession of Mole Man
  5. どんだけtheジャイアント
  6. Acid House All Night Long
  7. ア.キ.メ.フ.ラ.イ. / A. Ki. Me. Fu. Ra. I.
  8. The Words
  9. 湘南アシッド / Shounan Acid(Album Edit)
  10. Area Arena
  11. Fake It!
初回限定盤DVD収録内容
  1. Mr.Empty
  2. ズーディザイア
  3. 半分人間だもの
  4. モノノケダンス
  5. 少年ヤング
  6. Cafe de 鬼(顔と科学)
プロフィール

電気グルーヴ(でんきぐるーぶ)

80年代後半にインディーズで活動していたバンド・人生の解散後、石野卓球とピエール瀧が中心となり結成。テクノ、エレクトロを独特の感性で構成したトラックと、破天荒なパフォーマンスで話題になる。1991年にアルバム「FLASHPAPA」でメジャーデビューを果たし、同年に砂原良徳が加入(1998年に脱退)。1995年にベルリンのレーベルからシングル「虹」がリリースされたのをきっかけに、海外での活動もスタートさせる。1997年にリリースしたシングル「Shangri-La」が爆発的なヒットを記録。2001年、「WIRE01」のステージを最後に活動休止に突入する。その後はそれぞれソロ活動に専念するが、2005年に再始動。2008年には8年ぶりのアルバム「J-POP」をリリースしている。