音楽ナタリー Power Push - DAOKO
心の穴も含めて自分を愛せるように
先日初めて顔を公表し、話題を集めているDAOKO。彼女が両A面シングル「ShibuyaK / さみしいかみさま」を10月21日にリリースする。「ShibuyaK」は1990年代の小室哲哉のサウンドを彷彿させるシンセポップナンバー。「さみしいかみさま」は庵野秀明率いるスタジオカラーとドワンゴが贈る「日本アニメ(ーター)見本市」とのコラボ楽曲で、吉崎響監督×DAOKO企画によるアニメーション作品「GIRL」をMVに使用して注目されている。
今回のインタビューで彼女は、シングルの制作背景はもちろん、ライブに対する考えや、顔出しにあたっての心境、「GIRL」を観て涙したという理由まで吐露。メジャーデビュー以降の彼女の心の変化がつぶさに見て取れるインタビューとなった。
取材・文 / 猪又孝 撮影 / 笹森健一
高みを目指していこうっていう気持ちに自然となれた
──まずは8月に東京・WWWで行った「DAOKO THE LIVE」(参照: DAOKOの初ワンマン大成功、3つの新曲で次なるステージを示す)から振り返りたいんですが、初めてワンマンライブをやってみての感想は?
ワンマンだったので演奏時間も長かったし、練習もバンドメンバーとスタジオに長時間入って備えてはいたんですけど、終わってみるとやっぱり課題点とか、もっとこうしたいっていう欲が出てきて。あと、お客さんに対する考え方も変わりましたね。
──どう変わったんですか?
今までは自分のことでいっぱいいっぱいだったけど、いろんなお客さんと直接対面して、「もっと楽しんでもらいたい」とか、「もっと心に残るようなライブを届けたい」と、高みを目指していこうという気持ちに自然となったんです。
──あの日のライブでは後半になるにつれ、MCの調子が砕けてきたというか、フランクな感じでトークをしてましたよね。
あれはけっこう意識してたんです。ワンマンということで、私のことだけを観に来てる人しかいないっていう状況なので、素っぽいところを出してみよう、トークの部分で冒険してみようっていう試みで。でも、「ちょっと砕け過ぎちゃったかな?」っていうのもあって(笑)。ライブでしか見られない顔っていうのもあっていいと思うんです。ただ、もっと総合芸術のようにしたいというか、緻密に作り込んでいく部分もあっていいかなって。これからはそういう部分にもこだわっていきたいなと思いました。
紗幕がなくても感動してもらえるのかという心配もある
──4月に同会場で行ったイベントもそうでしたが、2公演ともバンドスタイルを採った理由は?
1DJ 1MCスタイルでずっとやってきたんですけど、アイドルに見えてしまうのを避けたかったんです。バンドがいると見た目的にも音楽的にもクオリティが高まると思いバンドにしたんです。
──バンド経験は生まれて初めて?
まったく初めてです。憧れてはいたんですけど、まさか自分がバンドをすると思ってなかったのでうれしかったし、楽しかったです。ただ、バンドの形態がちょっと変わっていて、普通のバンドより“コンピューターっぽい”んですけど(笑)。
──ドラムレスですからね。ドラマーの代わりにマニュピュレーターがいるし、VJもバンドメンバーとしてステージ上にいますし。
だから、オシャレに見えるんじゃないかって(笑)。でも、もっとバンドメンバーを生かして一体感を高めていきたいなって思ったし、あと、バンドでアレンジをしてみて、もうちょっと生っぽいサウンドの曲を増やしたいなとも思いました。「BOY」をダブっぽい感じにしてみたらけっこう評判よくて、自分たちでも「いいよね」っていう話になってるので、今後は音楽的にももっと楽しい要素が増えてくると思います。
──2公演を通じたもう1つの特徴は、紗幕をずっと垂らした状態でライブをやったことですよね。
ライブって視覚要素が強いから、あの紗幕はかなり大きい存在になってると思うんです。バンドメンバーの1人として考えられるんじゃないかっていうくらい(笑)。紗幕があるとほかとの差が生まれるし、アーティスト性が高まるし、DAOKOというイメージとシンクロしてるところがあると思っているので、私のライブの大きな要素になってると思ってます。
──確かに紗幕は、DAOKOさんの2.5D感をシンボライズするものになってますよね。客席とステージの間に紗幕が1枚挟まっていることで、お客さんからしてみると手が届きそうで届かない感じがあるし、アニメ映像などが投写されてるから、二次元と三次元の中間っていう感じも出ているし。
そうなんです。「ネットというバーチャルなところから生まれてきた」っていうDAOKOのルーツともマッチしてると思うし、すごくいいと思うんです。でも紗幕がなくなったときに同じくらい感動してもらえるようなパフォーマンスができるかっていう心配もあって。すごく絶妙なバランスの関係性だと思うので、紗幕に頼り切ってもいけないし、ちゃんと支え合っていけるような関係を目指したいなって。そんなライブのやり方や仕組みを探ってる途中ですね。
次のページ » 小室哲哉サウンドが斬新な音に聞こえた
- ニューシングル「Shibuya K / さみしいかみさま」 / 2015年10月21日発売 / TOY'S FACTORY
- 初回限定盤A [CD+DVD] / 1944円 / TFCC-89576
- 初回限定盤B [CD+DVD] / 1944円 / TFCC-89577
- 通常盤 [CD] / 1296円 / TFCC-89578
初回限定盤A CD収録曲
- さみしいかみさま
- ゆめみてたのあたし
- ShibuyaK
初回限定盤A DVD収録内容
- 日本アニメ(ーター)見本市 サードシーズン 吉崎響×DAOKO 企画「GIRL」
初回限定盤B、通常盤 CD収録曲
- ShibuyaK
- さみしいかみさま
- ゆめみてたのあたし
初回限定盤B DVD収録内容
- 「ShibuyaK」MUSIC VIDEO
- 8/17ワンマンDAOKO THE LIVE! 映像
DAOKO(ダヲコ)
1997年生まれ、東京出身の女性ラップシンガー。ニコニコ動画のニコラップに投稿した楽曲で注目を集め、2012年に1stアルバム「HYPER GIRL-向こう側の女の子-」を発表。ポエトリーリーディング、美しいコーラスワーク、ラップを絶妙なバランスで織り交ぜたドリーミーな世界観で話題を呼ぶ。2015年3月にはTOY'S FACTORYよりアルバム「DAOKO」にてメジャデビュー。それまで顔を隠して活動していたが、10月にシングル「ShibuyaK / さみしいかみさま」発売のタイミングで顔を公開した。