2019年から約6年にわたり活動してきた3人組ロックバンド・シズクノメが2025年12月にラストライブを行い、解散。そのバンドのボーカリストだった西野駿壱が、Ku:ui(クーイ)としてソロデビューを果たした。
「自分が悲しみ続けるのも、ファンをずっと悲しませ続けるのもしんどい」と考えた西野は、バンド解散からわずか5日後にKu:uiとしてのデビュー曲「クズボシ」を発表。「俺が引っ張っていくぞ」という気概でスタートダッシュを切った彼が、2ndシングル「壊楽」(カイラク)をリリースした今、抱えているのはいったいどんな思いなのか。ここまでの怒涛の道のりを振り返りつつ、Ku:uiとしての展望について語ってもらった。
取材・文 / 蜂須賀ちなみ撮影 / 後藤壮太郎
「先に行って待ってるね」
──2025年12月14日にシズクノメのラストライブが開催されました。「笑って終わりたい」とおっしゃっていましたが、実際には涙されていましたね。当日はどんな気持ちでライブをしていましたか?
6年続けたバンドなので、悲しくなかったと言ったら嘘になります。SNSでファンの方々の反応を見ていたら、悲しんでいる人も、混乱している人もいて。自分自身もグッとくるものがあったんですけど……でもメンバーとしっかり話し合って、「各々ちゃんと前を向いて、次に進む」と決めたうえでのラストライブだったので。やっぱり笑って終わりたかったんですよね。
──そしてバンドのラストライブの5日後に、Ku:uiの初の楽曲「クズボシ」をリリースされました。
あの5日間はめちゃめちゃそわそわしてました。「クズボシ」は、シズクノメと比べたら暗めの曲なので、「どんな反応がくるだろう?」って。
──かなり短いスパンでの再スタートですよね。
そうですね。そもそも「西野は音楽を辞めるかもしれない」と思われていた方もいらっしゃったので、「Ku:uiとして歩み始めます」とすぐに発表できたことや、「あ、音楽を続けてくれるんだ」と喜んでくれているファンの声を聞けたことがすごくうれしかったです。バンドをやっていた頃に、メンバーの脱退などのターニングポイントを何度か経験していて。これまでの経験から「自分が悲しみ続けるのも、ファンを悲しませ続けるのもしんどい」「まず自分が歩き出さないと、ずっとネガティブな状態が続く」と感じていたんです。なので、ファンを少しでも安心させるために、ソロアーティストとしてすぐにスタートを切ろうと心を決めました。動き出す以上は、「俺が引っ張っていくぞ」という気持ちで。「早すぎるんじゃない?」と思う人もいるかもしれないけど、好きなタイミングで戻ってきてくれたらいいなと思っていて。「俺は先に行って待ってるね」「また笑えるようになったら一緒に遊ぼうよ」という気持ちです。
ソロだけどチーム
──「Ku:ui」という名前について教えてください。
バンドでは西野駿壱という本名で活動していたので、自分の名前でソロ活動をする選択肢もあったんですけど……バンドをやっていたとき、関わってくれる人たちが増えて、どんどん大きなチームになっていくのを感じていたんですよ。その頃のチーム感が好きだったし、バンドで手伝ってくれていた楽器隊の方々との間にも深い絆が生まれたので、「西野駿壱+バックバンド」という見え方にならないように、ソロプロジェクトだけどチーム名のようなものが欲しかったんです。いろいろ候補を考えた中で、最初に自分からシンプルに出てきたのが「Ku:ui」という言葉で。
──表記も含めて、さまざまな意味が込められていそうですが。
一番の決め手は語感だったけど、この名前にはいろいろな意味を込めています。「K」はシズクノメに関連する数字「9(く)」から。前のバンドに関わる数字が「429」だったので、そこからつなげる意味で頭に付けました。真ん中の「u:u」は「You to You」。ファンともチームの人たちとも、1対1で音楽をしたいという意味です。最後の「i」はローマ数字の「1」と同じ形ということで、本名の駿壱から。親からもらった名前の一部を使いたかったし、「一番になりたい」という気持ちも込められそうだなと思いました。
──チーム感を大事にしたいとおっしゃいましたが、その感覚はずっとバンドを続けてきたからこそ芽生えたものでしょうか?
そうですね。僕は、以前やっていたバンドが解散したタイミングで、シズクノメの元メンバーから声をかけてもらったんですよ。当時はバンドを解散したばかりだったから、「もう誰かと一緒に音楽をやらなくてもいいかな」と思っていたんですけど、ちょうど同じ時期に、BUMP OF CHICKENのライブを西武ドームに観に行って。音からメンバー同士の仲のよさや、友達だけどちゃんと切磋琢磨し合っている姿が伝わってきて、カッコいいなと思ったんです。BUMPのライブに感化されて、誘いをOKして、シズクノメが結成された。6年間活動する中で、チームとして動くことの楽しさを知りました。自分の活動が大きくなるにつれて、周りにいる人たちの士気も上がっていく。その感覚がすごく好きなんです。
──実際にKu:uiとして動き始めて、チームとしての充実を感じた瞬間はありましたか?
ありました。ソロだと自分が主体になるので、責任感の重さがバンドとは違うんです。でもその分、自分が意思を持って動いた先に、思ってもみなかった角度からアイデアが返ってくる。アレンジャーの方から「もっとこうしたらよくなるんじゃない?」とアドバイスをもらいながら曲をブラッシュアップしていくこともあれば、アー写撮影のスタイリングで「普段着ない服にも挑戦してみない?」と提案してもらうこともあって。自分の中になかった発想が出てくるのがすごく楽しい。そうすると自分もたぎるし、周りの方々も一緒になってたぎってくれているのが伝わってきています。僕は小さい頃から周りに合わせちゃうような性格で、何か思うことがあっても空気を読んで言わないことが多かったんです。だけど1人になったら、自分がやるしかない。この環境が、自分を気持ちよく追い込んでくれているというか。バンドのときには出す機会がなかった潜在能力が引き出されているなと感じています。最初は「1人になったからがんばらなきゃ」という気持ちが先行していたけど、動き始めてからは「自分って意外とこういうこともできるんだな」という発見が毎日あって楽しい。今、「曲を作るのが楽しい」という気持ちが一番大きいです。
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