橘慶太が約6年ぶりのソロアルバム「RE:ONE」を発表した。
40歳の節目に放たれた「RE:ONE」は、橘が楽曲のみならずビジュアルや衣装などすべてのクリエイティブを自らプロデュースした作品。2025年の日常の中で生み出したという楽曲をメインに収録した、プライベート感のある1枚だ。
音楽ナタリーでは橘にインタビューし、現在のモードが色濃く反映された楽曲の制作エピソードや「こんなに開示できるようになったのは、自分としては成長かもしれない」というマインドの変化などをたっぷり語ってもらった。またインタビュー後半では3月14日にw-inds.のデビュー25周年を迎えるにあたっての心境も語られている。
取材・文 / 西廣智一撮影 / 映美
今までの作品の中で一番リピートしてる
──w-inds.のアルバム「winderlust」から1年を待たずして、慶太さんのソロアルバム「RE:ONE」が届けられました。ものすごいハイペースで制作が続きますね。アルバムの制作はいつ頃スタートしたんですか?
実は、今回のソロアルバムは趣味で作った曲を集めたものなんですよ。というのも、2025年1月から毎月1曲完成させようと自分の中で決めて。9月くらいに「なんだかいい曲がたくさんそろったな。アルバムとしてまとめてみたいな」という気持ちが芽生えてきたんです。12月には40歳の誕生日を迎えるし、30歳のときにもソロアルバムを出させていただいた経緯もありまして、今回もこのタイミングで出したいなとスタッフさんに相談して、急遽リリースすることになりました。
──では、もともとはアルバムを念頭に置いていたわけではなかったと。
そうですね。「毎月1曲作る」と目標を持ち、曲を最後までちゃんと完成させることでいろんなスキルが身に付いて、自分自身が一番成長できますし。そうやって趣味も兼ねて、日頃から曲を作り続けていた結果、最終的に形としてまとまったというのが今作です。
──でも、趣味だからこそ、今一番やりたいことに直結しているわけですよね。
はい。好きなものですから、特に悩むこともなかったです。今までは「アルバムの中にこういう曲を入れなきゃ」とか「こういう曲はライブで映えるだろうな」とか、w-inds.らしさを意識して曲作りをしていたので、そこを全部取り払って、その時期に聴いていた音楽に対して「こういう曲いいな。自分も歌いたいから、作ってみよう」みたいな。そういう意味では、今作においてはなんのストレスもなく……あ、ストレスゼロにちなんだ「ZERO」ってタイトルにすればよかったですね(笑)。そう思うくらい、本当に自由に作らせてもらいました。
──だからなのか、アルバム全体を通して感じたのは無理にアゲようとせず、比較的落ち着いたトーンで統一されていることなんです。
確かにそうですね。だいぶ肩の力が抜けていますし。アルバムとして出すことを決めてから作ったのは1曲だけなんですよ。
──最後に追加した1曲というのは?
7曲目の「Only You And I」です。
──アップテンポの曲やダンスナンバーを追加したのかと思いきや、全体のムードに沿ったスローナンバーなんですね。
確かに(笑)。やりたいこと、作りたいものが一貫していたんでしょうね。もちろんこの中にはダンスミュージックも含まれているんですけど、それよりもR&Bを通過したミッドバラードやJ-POP的なものが、自分的にはしっくり来る時期だったんだと思います。やりたいことが偏りすぎていて、アルバムとしてのまとまりがいいのかはわからないですけど、自分の好みが今までで一番反映されているので、完成してからもかなりリピートしています。たぶん、今までの作品の中でも一番聴いているんじゃないかな。
──深く考え込んだり、あえて狙ったりしていないからこそ、今まで以上に自身の根源にあるものが反映されていると。
どの曲も1日とか2日ぐらいでできたものばかりですから、自分の素の部分は出ているかもしれないけど、意識的に構築してきた自分らしさは出ていないかもしれません。
どの環境で聴いても楽しんでもらうために
──ソングライターの皆さんにお話を聞くと、新しい機材が手に入るとそれを使いこなしたくて新しい曲を作ることもあるそうですが、慶太さんもそういう傾向はありますか?
間違いなくあります。機材を新調するとモチベーションが上がるので、創作活動においては非常に大事だと思います。今回のソロアルバムでも、そういった傾向はもちろんあって。2025年の11月中旬から2週間くらい海外に行っていまして、帰国したら1週間ぐらいでアルバムの残り半分くらいを仕上げようと思っていたんです。で、ホテルでネットサーフィンをしていたら、ちょっと前に出ていたNeumannのオーディオインターフェイスを見つけて。数値的にもコスパ的にもよさそうだったので、その場ですぐ注文したんです。で、帰国後に使ってみたらめっちゃテンションが上がって。結果的に、渡航前に仕上がっていた5曲もやり直しました(笑)。
──インターフェイスひとつ変わるだけで、音の仕上がりがガラッと変わるものですか?
全然違いますね。リスナーの皆さんがこのアルバムを聴く環境はそれぞれ違うと思いますけど、どの環境で聴いてもいい音で楽しんでもらうために、とことんこだわっています。
──慶太さんはアルバムを完成させる際、どんな環境を使ってリスニングのテストをしていますか?
メインはAmphionというハイエンドのスピーカーで、ほかにはAirPodsと自分が普段から愛用しているヘッドフォン、スマホのスピーカーやMacBookのスピーカー、カーステレオ。あとモノラルのBluetoothスピーカーでも聴いてみて調整しています。
──ものすごい徹底ぶりですね。確かに、僕もこのアルバムをMacBookのスピーカーやBluetoothでつないだ外付けスピーカー、スマホからワイヤレスでつないだイヤフォンで聴いてみましたが、どの環境でもいい聴き心地でした。
本当ですか。よかった、安心しました。今挙げたような環境で聴いたとき、1つでも気持ち悪いと感じるものがあったら嫌なので、念入りに試しています。
──バックトラックの音数がだいぶ絞られているから、先ほど挙げた試聴環境でも魅力が伝わりやすいのかなと。
音数の少ないサウンドは昨今の音楽シーンで主流になっていますし、僕もそっちのほうが好きですけど、今作に関してはそこはあまり意識的ではなくて。アルバムオープニングの「PLEASE」は中でも比較的音数が多いほうですが、結果的にノリで作っているものばかりなので、そのときの心境が反映されているのかもしれません。
自分の中に根付いているグルーヴ
──2025年に始めたプライベートでの曲作りにおいて、最初に完成したのはどれですか?
アルバム8曲目の「Wake me when it's over」が最初に完成して、次が3曲目の「GREAT GAME」です。
──「Wake me when it's over」は本作の中で比較的ダンサブルな楽曲ですね。
w-inds.のアルバムのテンションが残っている中で作ったので、これは完全に「winderlust」の延長線上にある曲だと思います。
──「GREAT GAME」はゆったりとしたテンポで、歌で全体の空気感を作っていくような楽曲です。ここで早くもモードが切り替わるんですね。
「Wake me when it's over」よりももっとポップス寄りの曲を作りたいなと思って、聴きやすさ重視で取り組んだのが「GREAT GAME」です。
──「Nostalgic Magic」にはソウルフルな空気感もありますけど、アルバム全体的には現在の海外でのメインストリームを席巻するサウンドの延長線上にあるものという印象を受けました。
まさに、そこが今の好みのど真ん中なので、そういうテイストに仕上げたかったんですよ。
──ピアノを軸にしたミッドバラード「恋花火」はリズムが跳ねていて、R&Bやヒップホップを通過したJ-POPというイメージがあります。
そういうグルーヴ感は確実に、子供の頃から自分の中に根付いているものであって、無意識のうちに出ちゃうんですよね。
──だからなのか、ミドルやスローな曲でもグルーヴが感じられて、通して聴いてテンポよく感じました。
ああ、それはうれしいですね。そのへんは意識的といえば意識的なんですが、自分の気持ちいいポイントだからこそ、無意識に出てくるところもある。僕、ドラムに関してはまずサンプリングしたものを貼って、そこからキックの位置を1つひとつ聴きながら手作業でズラしているんです。ズラすタイミングは計算しているわけではなく、気持ちいい感覚に沿っているので、そこで違いは出せているんでしょうね。
──そういう感覚的な要素がベースにあるから、慶太さん自身、完成してからも楽しめるんでしょうね。
自分の一番気持ちいい音やリズムなので、そうかもしれないですね。
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J-POPっていいな、くもりの日もいいな


