音楽ナタリー Power Push - cero

オリジナルメンバーを交えて辿った「Obscure Ride」までの道のり

時間がない

──作曲面だけではなく、「Obscure Ride」は歌詞でも変化が見られました。これまでのストーリー性とはまた別軸の、髙城さんの個人的な思いが言葉で明確に表れている。

髙城晶平(Vo, Flute, G)

髙城 それを書く必要性は感じてました。このアルバムは僕の母が亡くなり、自分に子供が生まれるっていうすごくビビッドなタイミングで制作していて。自分の状況は歌詞として書いてきた虚構以上にフィクションのような状況だと思って。

──なるほど。

髙城 それに、さっきの音楽性の話とも共通するんですけど、人生のスパンとして今やなんでもかんでも乗っけて走ってる時間はないんですよね。ごった煮のものを出し続けるのは何も言ってないに等しいとも思ったし。

 ああ、今回のアルバムは「意識的に削った」ものだって今聞いてすごく納得した。

髙城 これまで喜んでもらえてたようなやり方を続けることはできる。しかも僕ら自身がそれを楽しみながら、ライフワークとしてやれたとも思うんですけど、変える意識は必要でしたね。

ceroを成立させる強力なシステム

──今回はceroの約10年をざっくりと振り返る形になりました。これからに関してはどうでしょう。例えば10年先のceroはどうなってると思いますか?

ceroと柳智之。

荒内 今回のアルバムを作ったことで3人それぞれの得意分野っていうのが徐々に見えてきたんです。そういう意味で今後の10年は、30代を迎えてあれこれやるんじゃなくて、自分の選択肢をより明確にしていくことになるのかなって思います。

髙城 うん、ceroを基盤にしながら、色々なことをやっていきたいね。

橋本 そうだね。

荒内 ただバンドって、長くやることでいい形になっていくパターンとルーティン化しちゃって自家撞着を起こすパターンの2種類に分かれると思うんですけど、ceroは後者なのかなって3人でよく話していて。

──というのは?

髙城 例えばはっぴいえんどは4人それぞれの活動に分かれて、その結果4倍以上の枝葉を広げ、日本の大衆音楽の土台になった。その点でいえば彼らが解散する必然性はあったと思うんです。それと同じで、僕が2013年のLIQUIDROOMのライブで言った「日本の音楽シーンを変える」っていうようなことを本当に実現するには、それこそcero解散も辞さないくらいの覚悟を持つべきかなって。あの日の発言がもしハイプじゃないのだったら(笑)。

──それほどの意識を持って活動しているんですね。

荒内 とかいいながらceroはこれまでアルバムを出すたびに、それこそ1つのバンドが解散してまた組んでっていうようなことを繰り返してきてるんですけどね(笑)。

ceroと柳智之。

髙城 うん、もちろん続けることもできる。これまでも脱皮を繰り返してきたので、それによって新鮮味を失わずにやっていけているんですよね。ceroはそういう強固なシステムで成り立ってるグループだし、それに人間関係も良好ですしね。

荒内 そうそう、辞めたやつがこの場に来ちゃうくらいですからね。

 ははは(笑)。

ニューアルバム「Obscure Ride」 / 2015年5月27日発売 / カクバリズム
ニューアルバム「Obscure Ride」
初回限定盤 [CD+DVD] / 3400円 / DDCK-9005
通常盤 [CD] / 2900円 / DDCK-1043
CD収録曲
  1. C.E.R.O
  2. Yellow Magus(Obscure)
  3. Elephant Ghost
  4. Summer Soul
  5. Rewind Interlude
  6. ticktack
  7. Orphans
  8. Roji
  9. DRIFTIN'
  10. 夜去
  11. Wayang Park Banquet
  12. Narcolepsy Driver
  13. FALLIN'
初回限定盤DVD収録内容

「Wayang Paradise」

  1. ワールドレコード
  2. わたしのすがた
  3. exotic penguin night
  4. マイ・ロスト・シティー
  5. Contemporary Tokyo Cruise
  6. roof
  7. Bird Call
  8. outdoors
  9. cloudnine
  10. マクベス
  11. (I Found it)Back Beard
  12. あとがきにかえて
cero "Obscure Ride" Release TOUR
2015年7月4日(土)愛知県 DIAMOND HALL
2015年7月5日(日)大阪府 BIG CAT
2015年7月12日(日)東京都 Zepp Tokyo
※終了分は割愛
cero(セロ)

cero

2004年に髙城晶平(Vo, Flute, G)、荒内佑(Key, Cho)、柳智之(Dr)の3人により結成された。グループ名のceroは「Contemporary Exotica Rock Orchestra」の略称。2006年には橋本翼(G, Clarinet, Cho)が加入し4人編成となった。2007年にはその音楽性に興味を持った鈴木慶一(ムーンライダーズ)がプロデュースを手がけ、翌2008年には坂本龍一のレーベル・commmonsより発売されたコンピレーションアルバム「細野晴臣 STRANGE SONG BOOK-Tribute to Haruomi Hosono 2-」への参加を果たす。2011年にはカクバリズムより1stアルバム「WORLD RECORD」を発表。アルバム発売後、柳が絵描きとしての活動に専念するため脱退し3人編成に。2012年10月には2ndアルバム「My Lost City」をリリースする。2013年12月に「Yellow Magus」、2014年12月に「Orphans / 夜去」というブラックミュージックにアプローチした2枚のシングルを発表。2015年5月に3枚目のアルバム「Obscure Ride」をリリースした。