ナタリー PowerPush - BUMP OF CHICKEN
「FINAL FANTASY」制作陣との信頼から生まれた“日常を歌う”曲
昨年12月の6thアルバム「COSMONAUT」以降、2011年に入ってからもBUMP OF CHICKENは引き続き楽曲制作の日々を送り、コンスタントにシングルをリリースしている。2月には長編アニメ「映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ 天使たち~」の主題歌「友達の唄」。5月には東日本大震災を受けて制作し、マンガ家・井上雄彦とのコラボレーションとともにSoftbankの復興支援ポータルサイトCMに起用されたチャリティシングル「Smile」。そして、今回もまた特別な作品との邂逅によって生まれた楽曲が世に放たれる。タイトルは、「ゼロ」。メンバーも大ファンだという国民的ロールプレイングゲーム「FINAL FANTASY」シリーズの最新作「FINAL FANTASY 零式」の主題歌として書き下ろされた楽曲である。
相変わらずの緻密さをもって築き上げられた荘厳なサウンドで描かれているのは、生命と生命の交わりとその終わりを深遠な筆致で焼きつける、魂の歌だ。それは聴く者に「零式」の世界観の核心を想起させながら、その実やはりどこまでもBUMP OF CHICKENの真髄が響く楽曲として迫ってくる。今回のコラボレーションに至った経緯と「ゼロ」に込めた思い、そして間近に迫った3年半ぶりの全国ツアーのことまで、メンバー全員に語ってもらった。
取材・文 / 三宅正一
「言ったとおりに書けたじゃん!」
──「ゼロ」はいつ頃書いたんですか?
藤原基央(Vo, G) 今年の1月20日とか21日とかそのくらいで。
直井由文(B) 詳細に覚えてるね(笑)。
藤原 うん(笑)。時系列を整理すると、「零式」の主題歌のお話をいただいたのが、去年の6月くらいで。「COSMONAUT」のプロモーション時期には「友達の唄」はできていたんですけど、「ゼロ」はできていなかったんですね。スタッフから「『FINAL FANTASY』の曲はいつ書くの?」ってせっつかれたときになんとなく「1月の3週が過ぎたくらいに書けるんじゃないかな」ってまるで他人事のように答えたことを覚えていて。で、ホントに1月3週過ぎたあたりにスタジオに入ってできたんですよね。「言ったとおりに書けたじゃん!」ってスタッフに言ってもらったのも覚えてる。
──今はそのほかにも新しい曲が生まれているんですか?
藤原 はい。ちょいちょい生まれてますね。「COSMONAUT」のときよりはペースは落ちているんですけど。それはなぜかというと、もっぱらレコーディングに入ってるからで。
──ただ、レコーディングに入っているときも曲作りと向き合えば、何かが生まれるという感触もある?
藤原 うん、そういう感じですね。
──いいじゃないですか!
藤原 ふふふふ。いいと思います(笑)。
──表情も今晴れやかだしね。
藤原 はい、晴れやかですね(笑)。
「『FINAL FANTASY』の主題歌の依頼がきました」「えええっ!?」
──「零式」とのコラボレーションは突然オファーをもらったという感じだったんですか?
藤原 いや、突然ということでもないんです。
直井 「零式」のクリエイティブプロデューサーであり、キャラクターデザイナーでもある野村哲也さんとは数年前にお食事をご一緒したことがあって。
藤原 そう。「FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN」という映像作品(2005年9月リリース)の試写会に誘っていただいたんですよね。ホントに光栄なことに。その試写会は六本木ヒルズで行われたんですけど、もう、すごく華やかな席で。僕らは隅っこのほうで萎縮しながら試写会が始まるのを待っていて(笑)。作品にも感動したし、後日、まさか野村さんとお食事させていただけるとは、という感じでした。食事の席での僕らは、ただただ「『FINAL FANTASY』シリーズが大好きです」ということを伝えまして(笑)。
直井 そうだったね。僕らが一方的に「FINAL FANTASY」への思いを語るものだから、野村さんも「ありがとうございます」って言うしかないみたいな(笑)。そういうこともあって、野村さんをはじめスタッフの方々と面識はあったんです。そのときは別に「主題歌をお願いします」とか、そういう具体的な話はなかったんですけど。
藤原 話の流れの中で野村さんと「いつかお仕事をご一緒できたらいいですね」という会話はあったんですけど、当時の僕らはそれが現実のものになるとは思ってもみなくて。
──4人とも「FINAL FANTASY」はずっとプレイしてきたんですか?
藤原 僕はけっこう古いタイトルからリアルタイムでプレイしていましたね。
直井 僕はハードがスーパーファミコンに移行してからだから、「FINAL FANTASY IV」からリアルタイムでやっていることになりますね。
増川弘明(G) 僕は後追いなんですけど、今は新しいシリーズが出る度にプレイしています。
藤原 升くんは元々ゲーム自体あまりやらないんですけど、それでも「FINAL FANTASY」シリーズは、メンバーからの影響もあっていくつかプレイしているんですよ。
升秀夫(Dr) そうなんです。
直井 そんな中で、みんなで夢を話すように「いつか自分たちが『FINAL FANTASY』の主題歌を作るなんてことになったら最高だよね」って話していて。なので、今回レコードを会社のスタッフから「『FINAL FANTASY』の主題歌の依頼がきました」って聞いたときは4人で「えええっ!?」ってなって。声もちょっと高めになるくらい(笑)。
一同 (笑)。
直井 で、詳しく訊いたら、元々「零式」は「アギト」という名前だったんですけど、僕らにオファーが来たのはその「アギト」だと言うので。信じられなかったですね。
──「映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ 天使たち~」のために「友達の唄」を書き下ろしたときも同じような驚きと喜びがありましたよね。少年時代から親しみを覚えてきた作品の主題歌を手がけるという特別なコラボレーションが続いている。
藤原 そうなんですよね。それも「ドラえもん」と「FINAL FANTASY」のオファーをいただいたのって、わりと近い時期だったんですよ。だから最初は正直テンパってましたね(笑)。とりあえず曲を作るということを頭の中で考えないようにして。
CD収録曲
- ゼロ
- Smile
- ゼロ (“FINAL FANTASY零式” オープニングver.)
DVD収録曲
- ゼロ (“FINAL FANTASY零式” 特別編集MV)
- ゼロ (“FINAL FANTASY零式” オープニングver.ダイジェストMV)
収録曲
- ゼロ
- Smile
BUMP OF CHICKEN(ばんぷおぶちきん)
藤原基央(Vo, G)、増川弘明(G)、直井由文(B)、升秀夫(Dr)の幼なじみ4人によって、1994年に結成。高校入学後に本格的な活動をスタートする。地元・千葉や下北沢を中心にライブを続け、1999年にインディーズからアルバム「FLAME VEIN」を発表。これが大きな話題を呼び、2000年9月にはシングル「ダイヤモンド」で待望のメジャーデビューを果たす。
その後も「jupiter」「ユグドラシル」といったアルバムがロックファンを中心に熱狂的な支持を集め、2007年には映画「ALWAYS 続・三丁目の夕日」主題歌に起用されたシングル「花の名」を含むメジャー3rdフルアルバム「orbital period」をリリース。2008年には全国33カ所41公演、22万人動員の大規模なツアーを成功させた。
2009年11月に両A面シングル「R.I.P. / Merry Christmas」を発表したあとは、精力的なペースで楽曲をリリース。2010年4月にシングル「HAPPY」「魔法の料理 ~君から君へ~」を、10月にシングル「宇宙飛行士への手紙 / モーターサイクル」を発売。12月には宇宙飛行士を意味する単語をタイトルに冠したアルバム「COSMONAUT」をリリースした。
さらに2012年2月には「映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ天使たち~」の主題歌として書き下ろした「友達の唄」をシングルとして、5月には東日本大震災被災者を支援する「復興支援ポータルサイト」のテレビCMソング「Smile」をチャリティシングルとして発表。10月に、PSPゲームソフト「FINAL FANTASY 零式」テーマソングとして書き下ろした「ゼロ」をシングルリリースし、12月からは約3年半ぶりの全国ツアー「BUMP OF CHICKEN 2011-12 TOUR『GOOD GLIDER TOUR』」に乗り出す。