超特急が、12月16日にニューシングル「Asayake」をリリースする。
6月発売の「Stand up」以来半年ぶりにリリースされるシングルの表題曲は、温かくきらびやかなサウンドのポップチューン。「君が君のまま いられるように 僕らこの場所で踊るよ」と歌うこの曲で、超特急は聴く者の背中を優しく押すようなメッセージを投げかける。
未曾有の事態に世界が不安に包まれ、日々の暮らしも一変した2020年。1年を締めくくり、来年を見据えるこのタイミングで発表される楽曲に、超特急はどんな思いを込めたのか。音楽ナタリーではメンバー5人にインタビュー。楽曲について、さらには激動の1年を駆け抜けて思うことについて、話を聞いた。
取材・文 / 三橋あずみ 撮影 / NORBERTO RUBEN
今だからこそ、表題曲に
──「Asayake」聴かせてもらいました。この曲を聴いて思ったのは、今回皆さんに話を聞くにあたって、曲を構成するあれこれについて詳しく聞くことよりも、なぜ超特急が2020年の最後にこの曲を出すのか、その理由を教えてもらうことが一番大事なんじゃないかな、と……。
カイ そうですよね。
ユーキ 最初に曲を聴いたときは意外だと感じたんです、僕は。すごく丸く、角がない感じの曲で「僕らっぽくないな」とも思えて。でも今年はコロナだったり、いろんなことがあって……。
──2020年は超特急にとってはCDデビュー8周年という年でしたが、想定外のことがたくさん起きた1年でしたね。
ユーキ はい。そうやって今の状況を踏まえて考えたとき、この「Asayake」が今回のシングルの表題曲になった意味は理解できるなと思いました。今だからこそ、表題曲になったのかなと。
リョウガ 僕たちとしてはね、超特急らしさ、グループの個性を確立するために、「自分たちらしい」と思えるような曲を出したい気持ちもあったんです。だけど、僕たち含めてみんなが大変な状況下にある、こんな時期ですし。「Asayake」というタイトルの通り、明るいこれからを追い求めて走り、来年へ向けての希望を歌に込める……いい選曲になったんじゃないかなと感じています。実際に聴いてくれた皆さんの反応が気になる部分もあるけど、結果的にいい形になるんじゃないかなと。
カイ 今出すことにすごく意味があるシングルだよね。王道のJ-POPという感じで、その道は超特急があまり通ってきていないもので……J-POPのグループなのに(笑)。だから新鮮で面白いなと思いました。歌詞の内容も、僕たちが支える、寄り添う、そっと背中に手を添えるよ、という内容じゃないですか。今まで僕たちはライブで8号車(超特急ファンの呼称)から幸せをもらっていることをひたすら実感してきたグループだから、こうして会えなくなってしまった時期に……僕たちからの恩返しじゃないけど、「離れないよ」ということをしっかりと示したいなって。リョウガの言ったように、今後ライブで披露するのも楽しみですね。この曲は確実に年末の配信ライブでもやると思いますし、パフォーマンスをしたときにみんながどういう反応をしてくれるのかを期待したい曲です。
タクヤ 僕もみんなと思うことは一緒で。「Asayake」に関しては、歌詞により注目しながら曲を聴いてほしいなと思います。この状況の中、この歌詞が心に響くという人はきっとたくさんいらっしゃると思うので……そんな皆さんにぱあっときれいな朝焼けを見せられたら。
カイ いいこと言うなあ。
タカシ タイトル通りなんだけど、「明けない夜はない」っていう感覚だよね。思うように行動できなかった1年だったけど、8号車のみんなやこの曲を聴いてくれる人にとって、「Asayake」を聴いている間は温かな気持ちになってくれたらいいなと思ってこの曲にしたっていうのもあるので。
──優しい聴き心地だけど、そこに込められたメッセージは力強いですよね。タカシさんはこの曲をどう噛み砕いてレコーディングに臨んだんですか?
タカシ Aメロとかは特にそうなんですけど、「歌う」というよりも「話す」という感覚に近かったです。聴く人に寄り添いたいなと思ったので。あと、この曲はジャンルで言うとJ-POPど真ん中という感じだけど、ラップパートがあったり展開に緩急があったり、作りはすごく緻密なんです。細かく見てみると面白いことをたくさんやっている曲でもあるので、1つひとつのセクションごとにいろんな見せ方、聴かせ方ができればいいなということは注意点というか、ポイントにしていた部分ですね。
振り付けでもそっと寄り添っている
──タカシさんが歌った「Asayake」を聴いて、ダンサーの皆さんはどんなことを思いましたか?
タクヤ 僕がイメージしたのは、街を歩いている1人の8号車が、この曲を聴いて空を見上げる……これです。この景色!
リョウガ 僕はなんというか、踊りが連想しにくい曲だなと思ったんですよね。それに加えてこそばゆいと言いますか。それは、歌詞がまっすぐで回りくどい言い方をしない、包み隠さず伝える表現だったからだと思うんですけど……自分がこれを言っている側として考えると、こっ恥ずかしくなっちゃって(笑)。
ユーキ リョウガが言った「踊りが連想しにくい」っていうのは、この曲がまっすぐなポップスだからだと思うんですよね。僕も似たようなことを感じたというか、まず「この曲を超特急らしく表現するにはどうすればいいんだろう?」ということをすごく考えました。正統派な感じのダンスを付けたら、ほかで見覚えのあるものになってしまいそうだから、いい感じに僕らなりの表現に落とし込みたいなと。そういった意味で、振り付けは洋楽やK-POPにも詳しく、ガツガツ踊っている方にお願いしたくて、今回50(fifty)さんにお願いしたんです。50さんには昔から本当にお世話になっていて、僕らのこともよく知っているし。
──そうだったんですね。「自分たちらしさを出したい」という思いは、50さんにも伝えて?
ユーキ そうですね。50さんは僕ららしさみたいな部分もわかってくださっているから。そういった思いを汲み取って、しっかりと踊れる振りを付けてくださいました。
──では「Asayake」のダンスパフォーマンスについて、もう少し聞いてもいいですか?
タクヤ 今回僕がセンターですけど、“センター感”はないですから。
ユーキ いやあるよ、めちゃくちゃある! タクヤが1人称で立って、周りでほかのメンバーが彼の世界観を表現するような部分もありますし。あと僕らはセンターじゃないけど、「Asayake」は音を取っているだけでなんか楽しいんですよ。
カイ そう、それわかる。「Asayake」のダンス、すごい好きなんだよね。
ユーキ 踊ってて気持ちいいよね。間奏なんかは特にしっかり踊っているんですけど、みんなで星を描くシーンにはかわいさもあるし。
タカシ 描く方法が独特でね。
ユーキ ね。8号車のみんなも、自然とニッコリしちゃうんじゃないかな。あと、エスコートの仕方が上手な感じがするんですよね。「来いよ!」とか「一緒にやろうぜ!」じゃなくて、振り付けでもそっと寄り添っている。
タカシ 確かに。紳士的やな。
──踊っているときのマインドも?
ユーキ 優しいですね。トガっていない。アプローチの仕方が紳士的でおしゃれだと思います。
カイ 芯が通っているけどそれを押し付けない雰囲気があるから、踊ってて気持ちいいのかな。
タクヤ 僕はAメロの「『らしさ』って誰かに決められたものじゃない 自分で掴んだ自分がどうしようもなくていい」のノリがすごい好きです。ホントに好きなんですよ、今回の振り付け。
リョウガ よかったじゃん、センターで。
タクヤ みんなが言うように気持ちいいし、「自分カッコいいんだろうな」って感じちゃう……(どんどん小声に)。
カイ いや、もちろんカッコいいよ(笑)。
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“みんなの中心”にいる人