音楽ナタリー Power Push - BRAHMAN

映像、音、言葉で感じる20周年の本質

結局自分に戻っている気はする

──どうしてそうなれたんでしょうね?

若かったんじゃない? 欲張りじゃん、若いと。歳取っても欲張りな人はいるけどね。

TOSHI-LOW

──1周して、ピュアになったんじゃないんですか?

結局自分に戻っている気はするよ、すごく。いつの間にか、自分から発してるものじゃない自分に囚われてしまって。そうすると楽だしね。どうせこう思われているならこうしたほうがいいやって。そうじゃなく、もっと自分の核というか……「なんでやってるんですか?」「楽しいから」、そんぐらいの答えしか言えなくなってるんだよ。

──BRAHMAN以前の、歌い始めたときやバンドを始めたときも、そういうピュアな衝動が動機だったんですか?

それって、ほかの人はどういう理由で始めるの?

──モテたいとか、金持ちになりたいとか、有名になりたいとか、狙いがある人だっていると思いますよ。

多分、どっかから俺も狙いを持っちゃったと思うんだよね。でも一番初めはなくて、バンドや音楽を「お金を持てる道具」だって思ったこともなかったし、有名になれる才能があるなんて思っていなかったし。やってみたいから、楽しいから、それだけだったと思うの。田舎でジャーンって鳴らした瞬間の「わあ、うれしい!」っていう感覚しかなかったし。でも、BRAHMANを始めて何年かして、評価が大きくなってきて、こういうふうにやったらもっと評価される、お金も入るってわかってきたら、考えざるを得なかったし。でも考えながらも考えたくないって思ってきたから、TOY'S FACTORYに入ったのに取材を受けなかったし、オリコンに載せるなって言ってみたり、閉ざしてた時期。だからみんなはいろんなものを隠してたって思うかもしれないけど、でもあの当時はああじゃないとバンドをやっていけなかったと思うし。

10年後は見えてたけど、20年後は見えてなかった

──あの頃を経たから今があると思いますか?

TOSHI-LOW

んー、なんにしろ何も無駄がないんだよ、嫌なことにせよ。今ここにいるっていうことは、その道を通ったからだし、もしっていうのはあり得ないし、考えても仕方ない。もっとこうできたらよかったっていうことも、ごまんとあるよ。でも、全部が自分を構成してる1つひとつの欠片だから、受け止めていくしかないし、そういう作業を30代でし始めていたんだと思う、少しずつ。2000年くらいから閉ざし始めて……その前は楽しかったんだよ。でも、自分が思ってもいない数が売れたり、人が来たり、批評されて、自分を作り出さなきゃ守れなくて、作り出したものをまた脱ぎ出すっていう、砂の城を作って流してって自分でやってるような作業なんだけど……想定してなかったから。20周年っていうのも、俺はすべてのことに対して、今日明日のことと10年後のことを考えてやってるから、10年後は見えてたけど、20年後は見えてなかったし。むしろ常に「ここで終われる」と思ったから続けていたんだけど、終われなかったんだよね。

──終われなかった?

後悔があったんだよ、10年目とかは。自分の中で精神的にも限界だったし、個人の才能的にも、これ以上出てくるものはないんじゃないかなって。だから、そっからの20周年って……ねえ、よくやったね(笑)。その間に、この映画のインタビューで震災の話はしないようにしようと思ったけど、やっぱり俺は震災に救われたんだよね。絶妙なタイミングだったと思う、俺の人生の中で。それでこの映画があるんだもん。震災がなかったら箭内道彦とだって仲良くならなかったし。

映画「ブラフマン」2015年7月4日全国一斉公開
映画「ブラフマン」
タワーレコード「NO MUSIC, NO LIFE.」、リクルート「ゼクシィ」、東京メトロ「TOKYO HEART」など、彼の作品を見たことがない人はいない、と言っても過言ではないだろう。あらゆるモノの核を切り取り、そのモノの魅力を最大限に表現する。稀代のクリエイティブディレクター箭内道彦。これまで、映画監督としてのオファーを固辞し続けて来た箭内が、「僕が知っている、ブラフマンの、愛すべきあの4人を、ただスクリーンに映すことであればできる。」と、イレギュラーなものとして受託した、最初で最後の監督作。4人との交友の深い箭内が見るBRAHMANの「人間」としての素顔。バンドの今、過去、未来。初代メンバーへの思い、家族や、古い友人の言葉も織り交ぜ、「人と人が、生きていくこと」を問いかける。箭内がたった1台のカメラに収めたブラフマンとは? ──ノン・フィクションの「ブラフマン」が解禁される。
  • 監督・撮影:箭内道彦
  • 主題歌:「其限 ~sorekiri~」BRAHMAN(TOY'S FACTORY)
  • 出演:BRAHMAN(TOSHI-LOW、KOHKI、MAKOTO、RONZI)
  • 語り:Ken Yokoyama、りょう、井浦新 ほか
  • 配給・宣伝:プレシディオ (c)2015 映画「ブラフマン」製作委員会
ニューシングル「其限 ~sorekiri~」 / 2014年7月1日発売 / TOY'S FACTORY
「其限 ~sorekiri~」
初回限定盤[CD+DVD]1800円 / TFCC-89549
通常盤[CD]1200円 / TFCC-89550
BRAHMAN(ブラフマン)
BRAHMAN

1995年に東京で結成された4人組ロック / パンクバンド。ハードコアと民族音楽をベースにしたサウンドを特徴とする。1996年に初めての作品として「grope our way」をリリース。1998年に発表した1stアルバム「A MAN OF THE WORLD」はトータル60万枚以上のセールスを誇り、90年代後半にひとつの社会現象になったパンクムーブメントにて絶大なる人気を集める。ライブを中心とした活動を行っており、日本以外にもヨーロッパやアジアでもツアーを行うなどワールドワイドな活躍を見せている。2011年3月11日の東日本大震災以降よりライブ中にMCを行うようになり、震災の復興支援を目的とした活動を積極的に展開。2013年2月にはフルアルバム「超克」をリリースした。2015年7月1日に2年10カ月ぶりのシングル「尽未来際」を発表。7月4日からは彼らの姿を追った箭内道彦監督のドキュメンタリー映画「ブラフマン」が公開される。