音楽ナタリー Power Push - BRAHMAN

映像、音、言葉で感じる20周年の本質

今は自分たちを構成しているものがすべて

──現在はそういう裏側まで見えてしまう時代ですよね。

そう言いつつも逆で、隠しているときのほうが見てほしかったわけ。俺たちに対して、勝手に寡黙でストイックなイメージができているわけじゃん。勝手なイメージをみんなが勝手に生んでいくでしょ。そこに自分も乗っかったっていうか。それに対して拒絶しなかった。本当は違うんだから、違うって言えばいいじゃん。でも「みんながそう思ってくれるんだったら」って、そういうイメージの中で生きていたのかなって。

TOSHI-LOW

──今は「違う」と言いたいんですか?

そういうわけじゃなくって、何年か前に、自分たちには表も裏もなくなって。じゃないと震災の活動とかやれなかったから。タイガーマスクが素顔で孤児院に行って……とかじゃなく、自分たちの素顔で震災の支援活動をやってしまったので、そういう自分たちも、ステージの上の自分たちも同じだって受け止め方をしているから、暴かれたという意識もないし。映画を観た人に「こんなとこまで」って言われるけど、自分たちには「こんなとこ」っていうリミットもない。観ても自分たちはそう思わないんじゃないかな。自分たちを知っている人が、最初のイメージと比べてどうこう思うっていうだけで。

──箭内さんにいろいろと聞かれて、20年間の記憶がよみがえるきっかけにはなったんじゃないんですか?

ああ、こんなの箭内に聞かれなくても、俺は記憶を行ったり来たりしてるから。歌詞を書く人間ならわかると思うけれど、自分の中の歴史を行ったり来たりしてる。自分の書いている対象は、どっか違うものなようで、結局自分だったりする。若いときの自分と対話していたり、認めたり認めなかったり、昔の自分が今の自分に食って掛かってきたり、っていうことをしょっちゅうやってきたから、ここのタームで思い返したとかはないんだけど。

昨日より前の自分とずーっと喋ってる

──過去を振り返るということが、自然なんですね。

過去を振り返るっていうのとはちょっと違って……そんな時系列の歴史とかじゃなくて、自分の残してきてしまった魂の残像みたいなものがボロボロボロボロどの瞬間にもあって、それが足かせになったりするんだよね。普通の人にとっては後悔っていう類だと思うけど。それを都合がいいんだけど拾いに行けちゃうんだよね、自分だけの世界の、自分だけの歴史の中で会話しているから。それって、20年の歴史を振り返るということとは違って。ずっとやってるの。ずーっと。一番初めに歌詞を書き出したときから。昨日より前の自分とずーっとしゃべってる。

──それって、歌詞を書く上では必要なことなんですか?

わかんないわかんない。俺だけかもしれないし。例えば「仲良くしよう」って歌詞を書いたとしても、そんなこと言った瞬間にお前のこと大嫌いになるわっていうくらい逆の自分もいて。ずーっと自分が拒絶していたものや受け入れたもの、心に印象付いていたものが、歌詞を1つ書くたびに、これが言いたい!ってことと、こんなことは言いたくないってことを繰り返し思うような気がして。それの究極系かなって気がする、「其限~sorekiri~」は。いつもと違って、これについて書けっていう命題はあったけどね。苦しかった。今までで一番苦しかったかもしれない。

──それって、時間もかかるし苦しい作業ですよね。

うん、書いては消して、書いては消して、一周して耐えうる言葉だけが残るっていう方式だから、すごく時間がかかるよね。しかも、それと音楽が呼応しなきゃいけないから。

──それがずれてたら……。

やり直しだよね、全部。

映画「ブラフマン」2015年7月4日全国一斉公開
映画「ブラフマン」
タワーレコード「NO MUSIC, NO LIFE.」、リクルート「ゼクシィ」、東京メトロ「TOKYO HEART」など、彼の作品を見たことがない人はいない、と言っても過言ではないだろう。あらゆるモノの核を切り取り、そのモノの魅力を最大限に表現する。稀代のクリエイティブディレクター箭内道彦。これまで、映画監督としてのオファーを固辞し続けて来た箭内が、「僕が知っている、ブラフマンの、愛すべきあの4人を、ただスクリーンに映すことであればできる。」と、イレギュラーなものとして受託した、最初で最後の監督作。4人との交友の深い箭内が見るBRAHMANの「人間」としての素顔。バンドの今、過去、未来。初代メンバーへの思い、家族や、古い友人の言葉も織り交ぜ、「人と人が、生きていくこと」を問いかける。箭内がたった1台のカメラに収めたブラフマンとは? ──ノン・フィクションの「ブラフマン」が解禁される。
  • 監督・撮影:箭内道彦
  • 主題歌:「其限 ~sorekiri~」BRAHMAN(TOY'S FACTORY)
  • 出演:BRAHMAN(TOSHI-LOW、KOHKI、MAKOTO、RONZI)
  • 語り:Ken Yokoyama、りょう、井浦新 ほか
  • 配給・宣伝:プレシディオ (c)2015 映画「ブラフマン」製作委員会
ニューシングル「其限 ~sorekiri~」 / 2014年7月1日発売 / TOY'S FACTORY
「其限 ~sorekiri~」
初回限定盤[CD+DVD]1800円 / TFCC-89549
通常盤[CD]1200円 / TFCC-89550
BRAHMAN(ブラフマン)
BRAHMAN

1995年に東京で結成された4人組ロック / パンクバンド。ハードコアと民族音楽をベースにしたサウンドを特徴とする。1996年に初めての作品として「grope our way」をリリース。1998年に発表した1stアルバム「A MAN OF THE WORLD」はトータル60万枚以上のセールスを誇り、90年代後半にひとつの社会現象になったパンクムーブメントにて絶大なる人気を集める。ライブを中心とした活動を行っており、日本以外にもヨーロッパやアジアでもツアーを行うなどワールドワイドな活躍を見せている。2011年3月11日の東日本大震災以降よりライブ中にMCを行うようになり、震災の復興支援を目的とした活動を積極的に展開。2013年2月にはフルアルバム「超克」をリリースした。2015年7月1日に2年10カ月ぶりのシングル「尽未来際」を発表。7月4日からは彼らの姿を追った箭内道彦監督のドキュメンタリー映画「ブラフマン」が公開される。