音楽ナタリー Power Push - BRAHMAN
映像、音、言葉で感じる20周年の本質
数少ないキーワードで何を生み出せるか
──「其限~sorekiri~」も時間はかかりましたか?
「其限~sorekiri~」は、タイトルは読みづらいかもしれないけど、中の歌詞は難しい言葉を使っていないから、作詞はすごく難しかったよ。難しい言葉って解釈が多いから含みを持たせられるし、見た目もカッコいいし、便利っちゃ便利なのね。勝手に想像してもらえるし。簡単な言葉はそれしかないから、そこで勝負するのはものすごく大変だった。
──どうして、簡単な言葉で書こうと思ったんですか?
頭の中にテーマがあって、それについてのトレイラーが3分くらい動いていると考えてもらえればわかりやすいんだけど。それが難しい言葉を使うような芸術的なものじゃなく、もっと青春ロードムービーみたいなものに近くて。それにいつもみたいな硬骨な言葉を乗せてしまったら違うよね、って思って。
──テーマというのは?
主題歌を作れっていうのだったけど、映画とまったくかけ離れても仕方ないし、でも(歌詞を)作っている段階では映画がどうなるのかわからなかったし。自分たちが出ているってこと以外は何もないんだもん。
──箭内さんも、主題歌を引き出したキーパーソンですよね。
歌詞はみんなでイメージするしかないよね。数少ないキーワードで何を生み出せるかっていう。でも、箭内道彦はそれに長けてんの。あの人は少なめな言葉……間違ってないツボを付いてる言葉なんだけど、それを相手に投げ掛けるんだよね。あんま多い言葉を投げ掛けられると、単純に並べる作業になるけど、少ない言葉なら自分で考えるしかないじゃん。ほんとにこの意味なのかなとか、この逆の意味なのかな、何かに結び付いてるのかなって自分で考える。自分で考え出すと、言葉そのものより何十倍も意味を持ったものが生まれてくるじゃん。箭内が、それを適当につないで最後に結び合わせたのが、この映画なんだと思う。
──適当!?
適当だよ。何も計算されていないと思う。
作った、歌う、それでいい
──でも、バラバラの簡単な点から映画と曲が生まれたって考えると、すごいことですね。
自分たちの作り方と箭内の作り方は似ていたっていうことだよ。
──それ、前から気付いていました?
箭内みたいにだらしなくねえだろ俺たち、とは思っていたけど。箭内は、ずーっと偶然を紐といていくんだもん。これ必然だって思うまでたぐっていくんだもん。そのために邪魔なものは排除しているんだよ。
──だからピンポイントな事象にフォーカスしているんですね。
わかんない、観てないもん。
──ですよね。
箭内はピュアなんだと思う。狙う相手も何もないまま始まるし。監督やりたくないって言っていたんだから。でも、そういうものから生まれるものもあるんだよね。
──それにしても、簡単な言葉の歌詞は衝撃的でしたよ。
聴いてて気持ち悪い?
──気持ち悪くはないですけど、不思議でした。まさか自分自身を重ね合わせられるような歌詞がBRAHMANの曲で聴けるとは思っていなかったから。どちらかというと、BRAHMANの歌詞は、距離感があって、眺めるように聴いていたんですよね……すみません、一方的な感想を述べてしまいました。
いやいや、まだ誰からも感想を受け取っていないから、素直に聞きたいなって。だって録ったばっかだよ、最近。だから、作品に昇華させた実感がないまま物事が進んでいって、そのままライブをやって、何ひとつ振り返ったり、結果を見ることなく進んでるから。でも、それでいいなっていう気がしてるの。なんの見返りも求めていないし。やっぱり今までは、自分たちが作ってこんだけ苦労したんだから対価が欲しいって思ってたんだと思う。いろんな人に見てもらいたいとか評価してほしいとか。でも今、それがまったくなくて。特に「其限~sorekiri~」に関しては。興味がないわけじゃないんだけど、作った、歌う、それでいいって。
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- 映画「ブラフマン」2015年7月4日全国一斉公開
- タワーレコード「NO MUSIC, NO LIFE.」、リクルート「ゼクシィ」、東京メトロ「TOKYO HEART」など、彼の作品を見たことがない人はいない、と言っても過言ではないだろう。あらゆるモノの核を切り取り、そのモノの魅力を最大限に表現する。稀代のクリエイティブディレクター箭内道彦。これまで、映画監督としてのオファーを固辞し続けて来た箭内が、「僕が知っている、ブラフマンの、愛すべきあの4人を、ただスクリーンに映すことであればできる。」と、イレギュラーなものとして受託した、最初で最後の監督作。4人との交友の深い箭内が見るBRAHMANの「人間」としての素顔。バンドの今、過去、未来。初代メンバーへの思い、家族や、古い友人の言葉も織り交ぜ、「人と人が、生きていくこと」を問いかける。箭内がたった1台のカメラに収めたブラフマンとは? ──ノン・フィクションの「ブラフマン」が解禁される。
- 監督・撮影:箭内道彦
- 主題歌:「其限 ~sorekiri~」BRAHMAN(TOY'S FACTORY)
- 出演:BRAHMAN(TOSHI-LOW、KOHKI、MAKOTO、RONZI)
- 語り:Ken Yokoyama、りょう、井浦新 ほか
- 配給・宣伝:プレシディオ (c)2015 映画「ブラフマン」製作委員会
- ニューシングル「其限 ~sorekiri~」 / 2014年7月1日発売 / TOY'S FACTORY
- 「其限 ~sorekiri~」
- 初回限定盤[CD+DVD]1800円 / TFCC-89549
- 通常盤[CD]1200円 / TFCC-89550
BRAHMAN(ブラフマン)
1995年に東京で結成された4人組ロック / パンクバンド。ハードコアと民族音楽をベースにしたサウンドを特徴とする。1996年に初めての作品として「grope our way」をリリース。1998年に発表した1stアルバム「A MAN OF THE WORLD」はトータル60万枚以上のセールスを誇り、90年代後半にひとつの社会現象になったパンクムーブメントにて絶大なる人気を集める。ライブを中心とした活動を行っており、日本以外にもヨーロッパやアジアでもツアーを行うなどワールドワイドな活躍を見せている。2011年3月11日の東日本大震災以降よりライブ中にMCを行うようになり、震災の復興支援を目的とした活動を積極的に展開。2013年2月にはフルアルバム「超克」をリリースした。2015年7月1日に2年10カ月ぶりのシングル「尽未来際」を発表。7月4日からは彼らの姿を追った箭内道彦監督のドキュメンタリー映画「ブラフマン」が公開される。