点として浮かんでいたイメージを、線でつないでくださった
──続いてオープニングテーマの「ピンクレモネード」についてお聞きします。いただいた資料によると、分島さんは「みあちゃんからもらったイメージやキーワードをもとにフレーズを組み立てて作詞しました」とのことですが、どのようなやりとりがあったんですか?
みあ 先ほどお話ししたように、歌詞の打ち合わせでは作品のことをあまり話せなかったんですけど、花音さんは「何かあったら連絡してください」と連絡先を教えてくださったんです。その日のうちにご連絡して、そこで作品のお話やキーワードのやりとりもさせてもらいましたね。「花音さんのおじゃまにならない程度に参考にしてください」と。
分島 じゃまじゃないよ(笑)。
みあ ならよかったです(笑)。私は「ベルまま。」の原作を読んで、これはすごくかわいいラブソングにできるかもしれないけど、でもそれだけじゃなくて、恋の一歩手前の感情を歌にできたらいいなと思ったんです。まず「何かが始まる予感がするときのワクワク感だったり胸のときめきを歌えたらうれしいです」と花音さんにお伝えして、「はじまり」「魔法」「ヒール」「背伸び」「万華鏡」「お菓子」といったワードをお渡ししたら、それが全部歌詞に使われていて。
分島 全部じゃないよ(笑)。
みあ いや、全部ですよ。私、確認しましたもん。
一同 ははは(笑)。
みあ そうやって、私の中で点として浮かんでいたイメージを、花音さんが線でつないでくださったんです。だから歌詞を受け取ったときに感動して、すぐに「ありがとうございます!」と連絡しました。
分島 私としては、甘くなりすぎないように気を付けましたね。三月のパンタシアのキャラクターや世界観はすごくストイックに定義されている印象があって、みあちゃんがこの曲で歌いたいイメージもはっきりしていました。
みあ 打ち合わせのときも花音さんは私のことを探ってくださったと言うか、「三月のパンタシアのみあが歌うにあたってどういう歌詞が一番合うんだろう?」みたいなことをすごく聞いてくださって。そういった姿勢を尊敬しますし、カッコいいなと思います。しかもそのあとも優しいお姉さんみたいに気にかけてくださったんです。
分島 また何を言い出すの?(笑)
みあ ごはんにも誘っていただいたんですけど、そこでは打ち合わせの場とは違って、ふわっとしたチャーミングな一面も見られたりして。お会いするといつもときめきます(笑)。
分島 ありがとう(笑)。
──ちなみに「ピンクレモネード」というワードはどちらから出たものですか?
分島 私かな。ベルゼブブのイメージカラーと言うか、彼女が金髪でピンク色のお洋服を着ているところから連想しました。あとは、恋愛の甘酸っぱさみたいなものと、作品の色と、リリックの心情が重なるかなと思って付けたタイトルですね。
──正直、使いにくかったキーワードはありました?
分島 いや、そんなには……でも、「お菓子」は入れてないよ?
みあ 「お菓子」は「ピンクレモネード」に集約されたんだと勝手に思ってました(笑)。
分島 なるほど(笑)。あと個人的に、Dメロは三パシ感を出そうと思って、そこまでの歌詞と切り離すと言うか、そのブロックだけ夜のイメージになっているんですよ。ちょっと情緒的な雰囲気を出しています。
みあ Dメロに「万華鏡」というキーワードが出てきますが、私は万華鏡みたいに毎日世界の色が変わって見えてキラキラしているようなイメージでワードをお渡ししたんです。それをこんなふうに歌詞のストーリーに落とし込めるんだなって、感激しました。
自分の気持ちをストレートに表現できない子の歌
──「ピンクレモネード」は非常にさわやかな曲ですが、いわゆるポップスではなく、ピアノをフィーチャーしたギターロックですね。
みあ アレンジを担当してくださった堀江晶太(PENGUIN RESEARCH)さんのおかげでロック色が強くなり、びっくりしました。この曲がこれから「ベルまま。」の世界観とどういうふうに溶け合っていくのか、すごく楽しみです。
千葉 僕はオープニングの制作には関わっていないんですけど、作品の印象から、もっと柔らかい雰囲気の曲を予想していたんですよ。なので「ピンクレモネード」を初めて聴かせてもらったときに「おお、そう来たか!」と意外でした。もしも柔らかい曲がオープニングだったら、最初から最後までのどかな作品になっていたと思うので、そこにピリッと刺激を与えてくれているいい曲だと思います。
分島 アレンジが上がってきたとき、このクールでカッコいい曲に、自分の歌詞がちゃんと乗るのかちょっと不安だったんですけど、みあちゃんの声が曲と歌詞をうまくつないでくれましたね。
──みあさんは、大好きな花音お姉さんが書かれた歌詞をどういう気持ちで歌われました?
みあ 私はレコーディングのときに気分を一番大切にしているんです。例えば歌詞の中で描かれている始まりの予感だったり、まだ好きなのかわからないけど、明日その人に会えると思ったらドキドキして「こういうふうに話せたらいいな」とか1人で妄想して盛り上がっちゃう感じだったり。逆に「今日はうまく話せなかったな」とか「なんでこの人の前だと緊張しちゃうんだろう?」というモヤモヤした感じやじれったい気持ちも自分の中に作って、その気分を聴いてくださる皆さんにそのまま伝えたいと思って歌いました。
──その気分に自分をうまく持っていけました?
みあ もともとテンションをチューニングするとき、切なさや苦しさみたいなマイナスの感情のほうが得意なんですよ。だから、ワクワク感みたいなハッピーな気持ちに自分を持っていくのにはちょっと時間がかかったんですけど、「あ、ここだ!」というのが自分でわかってからはパーン!って歌えました。
分島 みあちゃんとごはんを食べに行ったときに、ほとんど表情を変えずに落ち着いた声で「今すごく楽しいです」と言うんです。それホントかな、実は退屈してるんじゃないかなと思って「今の楽しさを10段階で表したらどれくらい?」って聞いたら「10です」って(笑)。
一同 ははは(笑)。
分島 「そんなに楽しんでるの!?」って驚いて。
みあ 楽しいと思っているのが人に伝わりづらいのは、私自身薄々勘付いています(笑)。それってたぶん歌も同じで、だからチューニングがちょっと難しかったんだと思います。
分島 でも、「ピンクレモネード」は感情を100%表に出すようなタイプの子の歌にはしていないから。むしろ言いたいことがうまく言えない、自分の気持ちをストレートに表現できない子の歌というイメージなので、みあちゃんの表現がすごく合ってるんですよ。声もクリアでかわいらしいので、監督が守り抜きたいゆるふわ感とも調和が取れていて、とても素敵なオープニングにしてくれたと思います。
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ガールズトークの雰囲気を楽曲に
- アニメ「ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。」
- 放送情報
-
ABCテレビ:毎週水曜26:50~
Abema TV:毎週水曜26:50~
TOKYO MX、群馬テレビ、とちぎテレビ、BS11:毎週土曜24:30~
テレビ愛知:毎週土曜25:50~
AT-X:毎週火曜22:00~
- ストーリー
-
数十万の悪魔を統べる万魔殿(パンデモニウム)の主・大悪魔ベルゼブブ。その近侍として仕えることになった新人職員・ミュリンは知的でクールな彼女に憧れていたが、ベルゼブブの実態は、モフモフ大好きゆるふわ少女だった!?
不器用ながら徐々に距離を縮めていくベルとミュリン、そして2人を取り巻くこれまた不器用でユニークな悪魔たち。このお話は、悪魔たちが“ある気持ち”に名前をつけるまでのお話……かもしれない。 - スタッフ
-
原作:matoba(掲載 月刊「少年ガンガン」スクウェア・エニックス刊)
監督:和ト湊
シリーズ構成・脚本:冨田頼子
キャラクターデザイン:住本悦子
総作画監督:住本悦子、伊藤大翼、依田正彦
プロップデザイン:住本悦子、依田正彦
美術監督:本田光平
美術設定:綱頭瑛子
色彩設計:木村聡子
撮影監督:小畑芳樹
編集:長谷川舞
音楽:分島花音、千葉"naotyu-"直樹
音響監督:本山哲
アニメーション制作:ライデンフィルム
製作:「ベルまま。」製作委員会
- キャスト
-
ベルゼブブ:大西沙織
ミュリン:安田陸矢
ベルフェゴール:久野美咲
アザゼル:日野聡
サルガタナス:加隈亜衣
アスタロト:松岡禎丞
エウリノーム:赤﨑千夏
ダンタリオン:悠木碧
モレク:興津和幸
ナレーション:井上喜久子
ほか
©matoba/SQUARE ENIX・「ベルまま。」製作委員会
- 三月のパンタシア「ピンクレモネード」
- 2018年11月21日発売 / SACRA MUSIC
-
初回限定盤 [CD+DVD]
2376円 / VVCL-1355~6 -
通常盤 [CD]
1296円 / VVCL-1357 -
期間生産限定盤 [CD+DVD]
1728円 / VVCL-1358~9
- 初回限定盤、通常盤CD収録曲
-
- ピンクレモネード
- 恋を落とす
- サイレン
- ピンクレモネード -Instrumental-
- 期間生産限定盤CD収録曲
-
- ピンクレモネード
- 恋を落とす
- サイレン
- ピンクレモネード -TV size-
- 初回限定盤DVD収録内容
-
- 「ピンクレモネード」 -Lyric Video-
- 期間生産限定盤DVD収録内容
-
- TVアニメ「ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。」ノンクレジットオープニング
- ベルゼブブ(CV.大西沙織)&ベルフェゴール(CV.久野美咲)&サルガタナス(CV.加隈亜衣)「あくまで恋煩い」
- 発売中 / アニプレックス
-
ベルゼブブ [CD]
1296円 / SVWC-70376 -
ベルフェゴール [CD]
1296円 / SVWC-70377 -
サルガタナス [CD]
1296円 / SVWC-70378
- ベルゼブブ収録曲
-
- あくまで恋煩い
- あくまで恋煩い<ベルゼブブver.>
- もふもふファジーハート
- あくまで恋煩い<Instrumental>
- もふもふファジーハート<Instrumental>
- ベルフェゴール収録曲
-
- あくまで恋煩い
- あくまで恋煩い<ベルフェゴールver.>
- らぶるブーケ
- あくまで恋煩い<Instrumental>
- らぶるブーケ<Instrumental>
- サルガタナス収録曲
-
- あくまで恋煩い
- あくまで恋煩い<サルガタナスver.>
- 可愛い♡らんでぶー
- あくまで恋煩い<Instrumental>
- 可愛い♡らんでぶー<Instrumental>
- 「ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。1」
- 2018年12月26日発売 / アニプレックス
-
完全生産限定盤 [Blu-ray2枚組]
7560円 / ANZX-13021 -
完全生産限定盤 [DVD2枚組]
6480円 / ANZB-13021
- 収録話数
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- 第1話「ボーイ・ミーツ・モフみガール。 / 近侍の心、 閣下知らず。」
- 第2話「兄貴はメルヘンなお味。 / 登場、 バイブレーションガール。」
- 完全生産限定盤Blu-ray / DVD特典
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- matoba描き下ろし全巻収納BOX
- 住本悦子描き下ろしデジジャケット
- オリジナル・サウンドトラックCD 1
- カラーブックレット
- 応援イラストカード
- オーディオコメンタリー(第1話)
- 特典映像(キャラクターミニPV&本PV)
- イベントチケット優先販売申込券
- 分島花音(ワケシマカノン)
- 東京都出身の女性シンガーソングライター、チェリスト、作詞家、イラストレーター。3歳からチェロを始め、クラシック音楽と共に育つ。2008年に1stシングル「still doll」でメジャーデビューし、2011年にはヨーロッパ10都市でツアーを行った。以降も精力的に活動を行い、2018年にアニメ「ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。」で初めて劇伴を手がけた。
- 千葉"naotyu-"直樹(チバナオチュウナオキ)
- ソニー・ミュージックパブリッシング所属の作曲家。2000年代初頭に各Webサイトで楽曲を発表し、若手作曲家・トラックメイカーとして注目を集める。以降ももいろクローバーZや三澤紗千香といったさまざまなアーティストに楽曲提供するほか、アニメ「ニセコイ」「ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。」などの音楽を手がけている。
- 三月のパンタシア(サンガツノパンタシア)
- 「終わりと始まりの物語を空想する」をコンセプトに、ボーカルのみあを中心に結成されたプロジェクト。コンポーザーとしてすこっぷ、n-buna、ゆうゆ、40mP、buzzG、イラストレーターとして浅見なつ、loundraw、bob、ノベリストとしてみのりが名を連ねる。2015年8月に活動を開始し、2016年6月にテレビアニメ「キズナイーバー」エンディングテーマであるシングル「はじまりの速度」でメジャーデビュー。2018年8月にはみあが書き下ろした小説とイラストレーターのダイスケリチャードが手がけたイラスト、楽曲を連動させて展開するプロジェクト「ガールズブルー」が始動した。11月21日にアニメ「ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。」のオープニングテーマを表題曲としたシングル「ピンクレモネード」をリリースする。