ナタリー PowerPush - Base Ball Bear
日常が生んだ新たな地平 結成10周年アルバム堂々完成
音の空間へのこだわりを貫いた
──タイトル曲「新呼吸」のアレンジは、自由で軽やかな部分と壮大な部分が共存していて。
小出 俺はそんなに壮大だとは思ってなくて。パーツで聴くとすごくシンプルなんですよね。
──そう、シンプルだよね。でも、組曲みたいな感触もあると思うんです。
小出 そうそう、そういうものにしたいなと思っていて。かといって、オーケストラみたいな感じになるのも違うし、やっぱりギターバンドらしいアレンジにしたかった。
──そこですよね。ロックバンドのフォーマットを解体して完全独自のサウンドスケープを再構築するっていうのはどの曲でも徹底されていて。そのあたりで全体的に意識したことは何ですか?
小出 音の空間ですね。
──どれも変な音像だよね。
小出 うん、変ですよ(笑)。とにかくギターで倍音のある空間を作るのが難しい。やりすぎてもいけないし、そもそも鍵盤やシンセを入れないから、どうやって作るんだ?と。そうなると、すごくアナログな話になるんですけど、もうマイキングとかでしかないんです。マイクでどういうふうに音を拾うか、とか。今回はトラックダウンで何かをやってるのってほとんどなくて。そもそもの録り音がこうだっていう。
──卓でどうこうしている音ではないと。
小出 そう。あとは僕のギターでひとつ大きなポイントがあるんですけど。要はジャカジャーンって入れてるだけではなくて、その裏に倍音だけのギターを入れたりしてます。
──「short hair」でフィーチャーした方法論だよね。
小出 そうそう。ギターを何十本も重ねるっていうやり方で倍音を稼ぐ。音圧はあるけどうるさくないやり方。あとは同じギターで、同じ設定なんだけど、トーンだけを絞って、こもってるギターをわざと後ろに置くことで、エセシンセ的な音を擬似的に作ったりとか。
歌は屋根みたいなもの
──「深朝」の印象的なイントロはどう作ってるの?
小出 あれはどシンプルなんですよ。湯浅のギターのペダルを俺がただ手でうーんって押してるだけ(笑)。
──そうなんだ(笑)。
小出 わかんないですよね? 何がトリックなのか。全部生音なんですけど。
──小出くんも含めて各プレイヤーにかかる負担はかなりのものだったと思うんですけど、例えばフレーズに関してはそれぞれに委ねたの?
小出 今回半々くらいかな? 俺が「こうしてください」って、決め打ちのフレーズを言ったものもあるし。堀くんに関しては、そんなに俺言ってないよね。
堀之内 うん、ほとんど言ってない。リズムのビート感だけですね。音像に関してはもう全部(小出に)任せているので、基本は歌メロができた段階で、歌メロに寄せられるようなフレーズを考えていろいろ叩いてましたね。
小出 今回は仮歌を聴きながら叩くっていう感じだったからね。
堀之内 うん。先にベーシックでドラムとベースだけ録るんだけど、そのときに小出のギターと仮歌も聴きながら。
小出 ドラムとベースの絡み方はすごく気にしてました。ベーシックがガチっと決まってないと、俺の狙ってるグラデーションの作り方が変わってくるから。まずはキックの在り方とベースの在り方っていうのをとにかく気にしていて。かつスネアも埋もれず、みたいな。僕はやっぱりドラムがデカいのが一番好きですね。ドラムがデカくて、キックが体感できて、プラスしてベースはドラムを邪魔することなく、ちゃんと真ん中にグルーヴィに存在するっていう。それをかなり忠実にやっていって。ただあんまりやりすぎると打ち込みに聴こえてくるから難しいんですけど。僕らはロックバンドだから、これ以上踏み込むと、ちょっとダンスっぽくなっちゃうというラインがあって。
──そこは「yoakemae」でもすごく悩んでたところでしたね。
小出 そうそう。だから、トラックダウンのときもキックをすごく気にしてたもんね。
関根 うん。爆音で聞きながらディレクターと「これいきすぎじゃないか」「いや、でもこれくらい欲しい」みたいな、そういうやり取りをしてた。
小出 そういう感じ。俺とディレクターのせめぎ合い。ディレクターはキックに関しては保守派で。「いや、そんなにデカくないほうが……」って。逆に歌をガンガン前に出したいと。俺は、歌は最終的にサウンドの上にちゃんとポンと乗ってればいいと思ってるから。屋根みたいなもんだと思っていて。
──でも、裏を返せば、その屋根に強固な自信を持っているということでしょ?
小出 今回は特にそうでしたね。
CD収録曲
- 深朝
- ダビングデイズ
- school zone
- 転校生
- スローモーションをもう一度
- short hair
- Tabibito In The Dark
- ヒカリナ
- 夜空1/2
- kodoku no synthesizer
- yoakemae (hontou_no_yoakemae ver.)
- 新呼吸
CD収録曲
- changes
- SUMMER ANTHEM
- LOVE MATHEMATICS
- 神々LOOKS YOU
- BREEEEZE GIRL
- Stairway Generation
- ホワイトワイライト
- 十字架You and I
- 十字架You and I (真のエンディングver.)
- kimino-me
- クチビル・ディテクティヴ
- yoakemae
- short hair
- Tabibito In The Dark
Base Ball Bear(べーすぼーるべあー)
2001年、同じ高校に通っていた4人のメンバーにより、学園祭に出演するために結成。高校在学中からライブを行い、2003年11月にインディーズで初のミニアルバム「夕方ジェネレーション」を発表。その後も楽曲制作、ライブと精力的な活動を続け、2006年にメジャーデビュー。同年11月にアルバム「C」をリリースした。2007年には「抱きしめたい」「ドラマチック」「真夏の条件」「愛してる」といったシングルや、アルバム「十七歳」を立て続けに発表。その後も順調にリリースを重ね、2010年1月には初の日本武道館単独公演を開催する。2011年6月にバンド結成10周年のアニバーサリーイヤーの幕開けを飾るシングル「yoakemae」を発売。これを皮切りに同年8月に「short hair」、10月に「Tabibito In The Dark / スローモーションをもう一度 part.2」とシングルを立て続けに発表し、11月に4thアルバム「新呼吸」をリリース。2012年1月には2度目の日本武道館公演を控えている。