ナタリー PowerPush - Base Ball Bear

日常が生んだ新たな地平 結成10周年アルバム堂々完成

昨年9月にリリースした2枚の“3.5thアルバム”を序章とし、Base Ball Bearは結成10周年となる2011年に絶対的な4thアルバムを作り上げようとメンバー一丸となって、制作とライブの日々に心血を注いだ。そして、ついに完成した「新呼吸」と名づけられた本作は、掛け値なしの最高傑作となった。

ソングライターとして新たなフェーズに立った小出祐介が、朝と朝を結びながら「繰り返しはじまっていく日常」の実相をコンセプチュアルに描出。サウンド面ではかつてないほどBase Ball Bearというギターロックバンドの独創性を鮮烈に打ち出し、バンドが覚醒していく全貌を徹頭徹尾リアルかつドラマティックに記録している。今回ナタリーではメンバー全員にインタビューを敢行。「新呼吸」が生まれた必然をたっぷり語ってもらった。

取材・文 / 三宅正一 インタビュー撮影 / 佐藤類

 
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結成10周年だからできたアルバム

──このアルバムは、相当な手応えがあると思うんですけど。

小出祐介(Vo, G)

小出祐介(Vo, G) はい! まさか「はい」と言われるとは思わなかったでしょ?

──いやいや、言うべきでしょう。10周年にして特別なアルバムが完成したと思うし、特別なアルバムを作ろうと心血を注いでここに向かっていったと思うんですね。

小出 うん、そうですね。

──コンセプト的にも、サウンド的にも、ロックバンドとしての在り方としても、Base Ball Bearの本質を突き詰めながら、アルバムというパッケージで「新呼吸」を提示するような作品だと思います。まず、それぞれに率直な手応えを訊きたいんですけど。

小出 手応え……。いや、あのね、不安ですよ、どっちかっていうと。達成感や充実感はものすごくありますし、実際こうした取材を含めて周りからの評判もすごくいいんですけど。ただ、リスナーの方々がどう聴くのかな?っていう不安はあります。そこで初めてリリースしたことになるので。

──もちろん、リスナーに向けて作っているわけだしね。

小出 そうですね。それを踏まえて、Base Ball Bearを知らない方やロックバンドの音楽に興味がないという方もぜひ聴いてもらいたいなって思えるアルバムになりましたね。

──ホリくんはどうですか?

堀之内大介(Dr) コンセプトもしっかりしていて、僕ららしいアルバムができたなと思いますね。達成感もあるし、次につながるものもいっぱいあったので。すごくいい作品ができたなと思ってます。

──関根さんは?

関根史織(B) (小出から)コンセプトを聞いたときから、面白いなと思っていて。それがちゃんと形になったなと思います。作品としてもいいし、演奏的にもすごくいいテイクが録れたなって。10周年にふさわしいアルバムになったなと思います。

──最後に湯浅くんは?

湯浅将平(G) 前回の3.5枚目っていう、わざわざ「.5」をつけてリリースした2枚のミニアルバムを経て、満を持しての4.0枚目にふさわしいアルバムになったと思います。通しで聴いたときの感動というか……アルバム全体の空気感がよりBase Ball Bearを感じられるものになったなって。

──湯浅くんが言った3.5枚目のアルバムと、リードシングル3枚で「新呼吸」への道筋をしっかり作ってきたと思うんですね。改めて、その道筋の中で何を見つけられたと思っていますか?

小出 やっぱり「新呼吸」というテーマにたどり着いたということが大きいです。そして、それは2011年というこの1年と密接につながるテーマだなと思っていて。ホントにいろんなことがあった2011年と、Base Ball Bear結成10周年っていうタイミングが重なって。今年バンドが10周年じゃなかったら、多分こういうアルバムは作れなかったと思うんですね。時代の温度も感じながら作ったアルバムなので。

音楽に自分の日常を落とし込む

──小出くんの言葉どおり、このアルバムは明らかに2011年、もっと言えば東日本大震災が起きた3月11日以降の視座から生まれたものだと思う。それと同時にバンドが10周年を迎えたタイミングで、自分たちは何を表現するべきなのか、鳴らすべきなのか、そういうところとストイックに向き合って生まれたものでもあって。その2つの軸が重なって、バンドの本質がどんどん浮き彫りになっていったと思うんですね。

小出 そうですね。僕は3月11日の地震があって確信したことがあったんですね。それは自分の日常という観念の在り方で。やっぱり俺にとっての日常はこういうことなんだなって再確認したんです。

──その小出くんが再確認した日常の在り方が、この「新呼吸」というテーマを導いたと思うんですけど。このテーマが自分の中で出てきたのはいつ頃だったんですか?

小出 言葉自体はもう「yoakemae」を作ったときから既にあって。「yoakemae」のサビで「新しい呼吸をしたんだ」で歌っていて。その時点で「新呼吸」っていう言葉が自分の中にあったし、それをアルバムのタイトルにしようって決めていて。じゃあその「新呼吸」という言葉になぜ引っかかったのか。それをそこからまた考えていったんですね。その時点では最終的な着地点がわからなかった。

──そこが定まらないと、アルバムの全体像を描けないなと思った、と。

小出 そうそう。何を歌いたいのかということと、自分の歌の在り方についてすごく考えて。その途中で震災があって。加えて、僕のおじいさんが亡くなったのも結構大きいんですよね。それが実は「yoakemae」の発売日だったんですけど。

──Twitterで呟いてましたね。

小出 うん。「yoakemae」の発売日に亡くなって、「Tabibito In The Dark」の発売日にお墓が建ったんですけど。

──何かを感じざるを得ないよね。

小出 うん。おじいさんが自分の今後の日常からいなくなってしまったということ。僕はこれまで周りで亡くなった人が全然いなかったから、初めて自分の近しい家族がいなくなって「ああ、こういうことか」って思ったんですよね。おじいさんが亡くなったことで、おじいさんのすごさもわかったし、逆に自分がどうしていくべきか改めて気付いたというかね。おじいさんには最後の最後に、すごく大事なことを教わったような感じがしますね。

──小出くんはそこで3月11日も、おじいさんが亡くなったことも、自分がこれから音楽を作っていくことも、すべて日常の出来事なんだって受け止めたんだと思うんですね。

小出祐介(Vo,G)

小出 そうそう。そもそも日常ってそういうものなんですよね。震災以降、よく言われるじゃないですか。「元の日常に早く戻れますように」って。あれが自分の中でしっくりきてなくて。じゃあ元の日常ってすごく平和なもので、平穏なものなのか?って。いや、違う、と。日常、日々というのはそもそも流動的なものだってずっと思ってきたし。

──そもそも起伏に富んでいて。

小出 そう、常に変わっていくものだと思っていたから。日常って、常温、平熱な日々ていう意味じゃないでしょ? つらいことも、悲しいことも、なんでもないこともすべて引っくるめての日常じゃないかって。だから、これからも日常は続いていくし、常に新しい日常があるんだって思った。元の日常もクソもないっていう。だから「がんばろう」みたいなことも言いたくなくて。「がんばろう」の純度を俺はすごく意識しちゃうから。「がんばろう」って言うんだったら、現地(被災地)で直接言いたいと思っていて。だから、俺は表立って震災についてコメントしなかったんですけど。そういう思いを踏まえて、自分の歌の在り方を改めて見つめ直さなきゃいけないなと思って。で、希望の歌や喜びの歌とか……そういうものを歌いたい気持ちもあるけど、それ自体が僕にとっては半信半疑で。やっぱり俺は堂々と「これはあなたの歌だから」とは言えないなって。だけど、その代わりに自分の日常をそのまま落とし込むアルバムを作ることで、希望に希望を持つための歌は歌えるんじゃないかと思って。ちょっとあまのじゃくな言い方になっちゃいますけど。

──でも、そもそも小出くんにとっての歌の在り方もそういうものなんだって再確認したんだよね。

小出 そうそう。そういう意味でいろんなことが立体的に一致していく感じがあって。その到着点がこのアルバムだったということですね。

ニューアルバム「新呼吸」 / 2011年11月9日発売 / EMI Music Japan

  • 初回限定盤 / 2500円(税込) / TOCT-28016 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤 / 2800円(税込) / TOCT-28017 / Amazon.co.jpへ
  • レコチョクにて着うた(R)、着うたフル(R)配信中!
CD収録曲
  1. 深朝
  2. ダビングデイズ
  3. school zone
  4. 転校生
  5. スローモーションをもう一度
  6. short hair
  7. Tabibito In The Dark
  8. ヒカリナ
  9. 夜空1/2
  10. kodoku no synthesizer
  11. yoakemae (hontou_no_yoakemae ver.)
  12. 新呼吸

「映像版『バンドBについて』第二巻」 / 2011年11月9日発売 /  3500円(税込)/ EMI Music Japan / TOBF-5717 / Amazon.co.jpへ

CD収録曲
  1. changes
  2. SUMMER ANTHEM
  3. LOVE MATHEMATICS
  4. 神々LOOKS YOU
  5. BREEEEZE GIRL
  6. Stairway Generation
  7. ホワイトワイライト
  8. 十字架You and I
  9. 十字架You and I (真のエンディングver.)
  10. kimino-me
  11. クチビル・ディテクティヴ
  12. yoakemae
  13. short hair
  14. Tabibito In The Dark
Base Ball Bear(べーすぼーるべあー)

2001年、同じ高校に通っていた4人のメンバーにより、学園祭に出演するために結成。高校在学中からライブを行い、2003年11月にインディーズで初のミニアルバム「夕方ジェネレーション」を発表。その後も楽曲制作、ライブと精力的な活動を続け、2006年にメジャーデビュー。同年11月にアルバム「C」をリリースした。2007年には「抱きしめたい」「ドラマチック」「真夏の条件」「愛してる」といったシングルや、アルバム「十七歳」を立て続けに発表。その後も順調にリリースを重ね、2010年1月には初の日本武道館単独公演を開催する。2011年6月にバンド結成10周年のアニバーサリーイヤーの幕開けを飾るシングル「yoakemae」を発売。これを皮切りに同年8月に「short hair」、10月に「Tabibito In The Dark / スローモーションをもう一度 part.2」とシングルを立て続けに発表し、11月に4thアルバム「新呼吸」をリリース。2012年1月には2度目の日本武道館公演を控えている。