音楽ナタリー Power Push - ARAKI

異端の歌い手 初作品で体現した自身のスタイル

青森を捨てたわけじゃない

──アルバムについても話を聞かせてください。まずジャケットを見て、リンゴが描かれていることに安心するファンも多いんじゃないかなと思いました。

よく見てますね(笑)。僕、歌い手として活動し始めた頃は「青森出身なのに」って動画のタイトルに付けてたんですよね。そのうち、タイトルに「青森」って出すことをしなくなったんですけど、そうしたらけっこう「青森を捨てたんですか?」って言われることが多くて。でも僕の中では別に捨てたとかそういうわけじゃなかったんで、今回はジャケットにリンゴを描いてもらったんです。

──ジャケットイラストを描いた猫将軍さんにはどういうオーダーをしたんですか?

いろいろお話してから進めたかったので、大阪まで会いに行ったんですよ。この界隈ではメールとかで連絡するのが普通みたいなんですが、構図とかそういうのを話すのは絶対実際に会ったほうがいいなと思ったんで。人となりも見たかったし。

──実際にお会いしてどういう話をしたんですか?

「THE SKY'S THE LIMIT」ジャケット

最初は今のジャケットとは全然違う構図のイラストを考えていたんですけど、話していくうちにあんまりパッとしないですね、みたいな感じになって。ちょっと1回リフレッシュして考え直して生まれたのがこのイラストですね。

──リンゴはARAKIさんにとってなじみ深いものですが、描かれている蜘蛛はどういう経緯で?

猫将軍さんが昆虫とか爬虫類を描くのがすごく得意な方で、メチャクチャカッコいい絵を描くんですよね。で、何か描いてもらうならクモがいいなと思って。すごくスタイリッシュに描いてくれたんで、気に入っています。ちなみにこのクモはイラストの僕をじっと見てるんですよ。「俺のリンゴを食べようとしてんじゃねー」って感じで。そういう構図にしてもらいました(笑)。

なんで誰もCrusher-Pにお願いしないんだろう

──アルバムの収録曲の話も聞かせてください。まずは作家陣の名前を見て海外で活動するCrusher-Pさんの書き下ろし曲が入っていることに驚きました。Crusher-Pさんが書き下ろし曲を提供することって珍しいですよね?

そうだと思います。僕からしたらなんで誰もお願いしないんだろう、って思ってたくらいで。ボカロ曲のカバーである「ECHO」をアルバムに入れてる人はいっぱいいるんですけど。

──しかも女性ボーカリストばかり。

ARAKI

誰もやってないと逆にやりたくなる性分ですから(笑)。どうせカバーとかで連絡は取るんだから思い切って新曲をお願いしてみたら快くOKしていただいたんです。最初に14曲目に収録されている「You've Made Yourself Clear」のデモを送ってもらったんですけど「もうちょっと激しめの曲もお願いします!」って英語で送ってみたら「Again」も書いてくれたんです。

──Crusher-Pさんに最初声をかけたとき、どういうオーダーをしたんですか?

いや、特になんにも。すでに「ECHO」の“歌ってみた”動画は投稿してたんで、「ECHO」と同じくらいのキーとかテンポで大丈夫ですってくらいのことを英語で伝えて。あとはもうお任せでした。特に「Again」はデモを聴いた時点で「これはもう俺が歌うしかない」って思ったくらい、しっくりきた曲です。そもそも僕に宛てた曲なんですけど(笑)。

──「Again」のサウンドプロデュースを手がけているThe Living Tombstoneさんも海外の方ですよね?

はい。この方は偶然日本に来るタイミングが合ったので会いに行って。僕は全然英語を話せないけど、こういう洋楽が好きなんだっていう曲の好みとかを伝えました。そうしたら僕が好きそうなアレンジのデモを何バージョンか作ってくれたんですよね。インディーズのバンドとかだとお願いごとを身内で済ませちゃうことが多いんですけど、今回は今まで経験したことがないコミュニケーションがあったので面白かったですね。

Linkin Parkっぽい曲をお願いします

──アルバムの序盤にはDECO*27さんの楽曲が3曲入っています。ARAKIさんはライブでもDECO*27さんの曲を歌うことが多いですよね。

“歌ってみた”動画を投稿してる曲もいっぱいあるので、1曲に絞ることができなくて。歌い手さんのアルバムで1人の作家の曲を1曲ずつ入れてる構成のものがよくあるんですけど、僕はそれがしっくりこなくて。「この人の曲を歌いたいな」と思うと2、3曲入れたくなっちゃうんですよ。なのでCrusher-PさんとDECO*27さんは3曲ずつ入ってます。

──「サイレーション」は今作のための書き下ろし曲ですが、DECO*27さんとはどういうやり取りをしたんですか?

確か「Linkin Parkっぽい曲をお願いします」って言いました。僕、Linkin Parkの「Faint」って曲がすごく好きで。それをDECO*27さんに伝えたら「知ってます」っておっしゃって、「そういう感じでお願いします」ってオーダーしました。

──ライブで盛り上がる様子が目に浮かぶ曲でした。

直接お会いしたときに、僕が「ストリーミングハート」を歌っているライブの動画を観せて、「ライブでやりたいのでお客さんが一緒に歌えるところがほしいです」とかちょっと細かいお願いもしています。だいぶカッコいい曲にしてもらったんで、ライブでもかなり盛り上がると思います。早く皆さんにも聴いてもらいたいですね。

1stアルバム「THE SKY'S THE LIMIT」 / 2016年9月28日発売 / Subcul-rise Record
「THE SKY'S THE LIMIT」
初回限定盤 [CD+DVD] 2700円 / SCGA-00051~2
通常盤 [CD] 2300円 / SCGA-00046
CD収録曲
  1. ECHO
    [作詞・作曲:Crusher-P]
  2. サイレーション
    [作詞・作曲:DECO*27]
  3. ゴーストルール
    [作詞・作曲:DECO*27]
  4. 一騎当千
    [作詞・作曲:梅とら]
  5. アンチビート
    [作詞・作曲:DECO*27]
  6. TIME
    [作曲:柴崎浩 / 作詞:ARAKI]
  7. Again
    [作詞・作曲:Crusher-P]
  8. ひとりぼっちのユーエフオー
    [作詞・作曲:ピノキオピー]
  9. サイドワインダー
    [作詞・作曲:MARETU]
  10. only one
    [作詞・作曲:tilt-six]
  11. WAVE
    [作詞・作曲:niki]
  12. ヒカレルサテライト
    [作詞・作曲:tilt-six]
  13. Strangers
    [作詞・作曲:Heavenz]
  14. You've Made Yourself Clear
    [作詞・作曲:Crusher-P]
初回限定盤DVD収録内容
  • Again [Music Video]
  • About me [Acoustic Session](Lyrics & Music_蝶々P)
  • About me ~Behind The Scenes~
Amazon.co.jp限定ボーナスCD収録曲

未公開歌ってみたボーナスCD

  • マインドブランド
    [作詞・作曲:MARETU]
  • CITRUS
    [作詞・作曲:Orangestar]
ARAKI(アラキ)
ARAKI

2013年8月にニコニコ動画に初めて“歌ってみた”動画を投稿し、歌い手としての活動をスタートさせる。2014年12月に投稿した「ECHO」の歌唱動画が300万再生を記録。そのほか数多くの投稿動画がニコニコ動画にて“殿堂入り”を果たし知名度を高めていった。2016年1月より開催されたライブツアー「XYZ TOUR 2016 -DJ Style-」に参加したほか、同年8月から9月にかけて行われたツアー「XYZ TOUR 2016 -SUMMER-」では、国内で実施されたすべての公演に出演。同年9月に自身の1stアルバム「THE SKY'S THE LIMIT」をリリースした。