Bitfan特集 あらき×小久保知洋インタビュー|アーティストとファンをつなぐプラットフォームの魅力とは

アーティストやクリエイターとファンをつなぐシステムとして広く普及しているファンクラブ。株式会社SKIYAKIはこのシステムに着目し、誰でも手軽にファンクラブサイト、オフィシャルサイト、ECサイトを開設できるプラットフォーム・Bitfanを運営している。

Bitfanで開設できるファンクラブサイトには、動画や写真の投稿機能、リアルタイムのライブ配信機能、ファン同士が交流できるグループチャット機能などが実装されている。

音楽ナタリーではBitfanを実際に活用しているあらきと、SKIYAKI代表取締役社長の小久保知洋氏にインタビュー。あらきにはアーティストサイドとしてBitfanを使い始めたきっかけや使い心地、開発者側の小久保にはBitfanの詳しい機能や今後の展望を語ってもらった。

取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 大川晋児

かゆいところに手が届く

──あらきさんがBitfanを使い始めたきっかけはどういうものだったんですか?

あらき 以前やっていたファンクラブの運営元がファンクラブ事業自体を畳むことになったので、移行先を探さなければならなくなったんです。そこで何社か検討したんですけど、会員情報が個人情報にあたるということで「会員はイチから登録し直しになります」と言われたりしていたんですね。その中で、Bitfanさんだけは「そのままデータベースごと移行できますよ」と言ってくれて。それが1つ、選んだポイントとしては大きかったですね。

──なるほど。

あらき 移行の際に会員番号がリセットされて、また先着順で番号が決まっていく形になったらファンがかわいそうじゃないですか。だから「会員番号も含めて引き継がれる形で移行できるのか?」という問い合わせを各社にしたんですけども、そこに関してはBitfanさんからしか返事がなくて。

──会員情報を引き継いで移管できるシステムは、業界的には珍しいものなんですか?

小久保知洋 どうなんですかね? あまりそういう目線で考えたことはなかったですけど……当然やるものだと思っていたので。

左からあらき、小久保知洋。

左からあらき、小久保知洋。

──あらきさんのように、行き場を失ったアーティストの受け皿としてBitfanが機能するケースは多いのでしょうか?

小久保 それは、僕らの業界では当たり前のことなんです。移管というのは当然のように行われていることなので……もちろんケースによって「これは移行できるけどこれはできない」みたいなことが生じたりはしますし、業者によっては「規模が大きければやるよ」というような基準を設けているところもあるのかもしれませんが。

──Bitfanでは基本的にすべてのケースに対応したい?

小久保 はい。実はあらきさんの移管のときも少し機能が足りなくて、多少の開発が必要だったんですよ。そういう細かい機能追加を少しずつ繰り返してきたことで、基本的に今はだいたいどんな移管作業も引き受けられる感じになっているんじゃないかと思いますね。

──そうしてBitfanに移行してきたあらきさんですが、実際に使ってみてどんな感触をお持ちですか?

あらき いやあ、面白いなと思いますね。

──面白い?

あらき 活気があるんですよ。Bitfanを利用しているアーティストさんたちもそうなんですけど、開発側の活気も感じるというか。俺が使い始めたのは去年の12月とかなんで、まだ半年くらいしか経ってないんですけど、それでもその間に細かい機能のアップデートがすごく多かったですし。

小久保 そこはけっこう評価いただいているポイントでして、我々としても意識的に取り組んでいるところなんです。「こういう改修を加えました」というお知らせはこまめに出すようにしていますし、いただいたご要望に対して「具体的に何から実装するか」という会議も頻繁に行っています。

あらき しかも、ちゃんと“かゆいところに手が届く”改修が多い印象ですね。こないだなんて、ライブ配信の画面が縦固定だったのが横画面にもできるようになったんですけど、「誰がこれを進言しているんだろう?」と思いましたから(笑)。完全に使う側目線の改善だし、開発者の発想じゃないと思うんですよね。

──Bitfanには、「とにかくアーティストが使いやすいものを」という哲学がある?

小久保 そうです。ソーシャルメディアの影響が大きいと思うんですが、近年はアーティストさんもファンクラブにいろいろな機能を求めるようになってきているんですね。旧来のファンクラブには「チケットが優先的に買えて、たまにブログが更新されるくらいでいい」「コミュニケーション要素は一切いらない」というスタンスのところも多かったのですが、最近は「ライブ配信がしたい」「コミュニティとしても機能させたい」といった声が多くなってきた。

あらき 今の、特に若手のアーティストにはそういう人が多いでしょうね。

小久保 アーティストさんの生の声を聞く機会を積極的に設けながら、「どうすればアーティストは使いやすいと感じるのか」「ファンに対して何をしたいと思っているのか」を常に把握できるよう心がけています。それを基準にサービスの開発を進めていくべきだと考えていますね。

あらき その心意気は感じますね。それはもう、ひしひしと。

全部の扉がファンクラブに通じている

小久保 今日、ぜひあらきさんに聞いてみたかったことがあって。

あらき なんでも聞いてください(笑)。

小久保 あらきさんは、うちに限らずありとあらゆるツールを使いこなしていますよね。LINEの公式アカウント、ツイキャス、YouTubeライブなどなど。それらをどう使い分けているのか、その中でファンクラブはどういった位置付けになっているのか、それを一番聞いてみたくて。

あらき 例えば公式LINEだったら日常のことをたまにポロッと言ったり、さらっと広く告知するときに使ったり、YouTubeライブはある程度かしこまった正式な告知をするとき、ツイキャスだったら飲みながらしゃべるようなテンションのとき、というふうに切り分けていますね。ファンクラブに関しては、そういういろんなプラットフォームの一層奥にある、スペシャルでディープなコンテンツが存在する場所として考えています。オープンなTwitterやLINE、YouTubeなどの奥に扉があって、その全部の扉がファンクラブに通じているイメージですね。

小久保 なるほど。

あらき いろんなプラットフォームがあるからこそ、お客さんたちは今社長がおっしゃったように「ファンクラブには何があるんだろう?」と気になるんだと思うんですよ。それを意識的に狙っているわけじゃないけど(笑)、逆にすべてを一元化してしまうと、リーチしづらい層が出てきてしまうかなあと。若い子はInstagramしか見ないとか、年配の人はいわゆるホームページだったら見るとか、あるじゃないですか。みんなの生活圏が違うから、そのすべての人に届けるためには、すべてをやったほうがいいかなと(笑)。

あらき

あらき

──Bitfanの思想としては、そんなふうにアーティストがあれこれやらずに済むよう「ここで一元化してください」というのが基本なんですよね?

小久保 本来的にはそうですね。そもそも、こんなにあらゆるツールを使いこなせる人はなかなかいないです(笑)。

──「あらきさんのような人ですら、Bitfanだけで済ませられるようになる」が理想形だったりするわけですか?

小久保 もちろんそれが理想ではあるのですが、あらきさんが見据えているのはどちらかというと“ファンの拡大”という話なので、それは本来ファンクラブの役目ではないんですよ。もちろん、それをファンクラブサービスに求めているアーティストが多いのも理解はしていますし、協力できるものならしたい。ですが、現実問題として我々にはそれ以前にやるべきことが山ほどある、という感じですね。