angela|デビュー15周年の“向こう側”へ

atsukoは声が「ファフナー」

──作詞もやはり煮詰まりましたか?

atsuko 煮詰まりました。当然、シナリオを拝読したうえで歌詞を書いているんですけど、影響を受けすぎると説明的な歌詞になって、「ここで敵が来るー♪」とか「戦ったけど○○さんがやられちゃうー♪」みたいになっちゃうので……。

KATSU そんな歌詞見たことねえよ(笑)。

atsuko 要は多くを語らず、聴いてくださる方の想像の余地を残すことも大事にしたいなと思っていて。それから以前、劇場版「蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH」の主題歌として「蒼穹」(2010年12月発売の17thシングル)という曲を作ったんですけど、「THE BEYOND」のサビにも「蒼穹」という言葉を使っているんです。そこは「また『蒼穹』か。ボキャブラリーが貧困だな」と思われたくないという変なプライドやエゴに苦しめられもしたんですけど。

──確かに「蒼穹」という言葉を再び使うのは作詞家として躊躇される部分だったでしょうね。

atsuko でも、ここまで長く「ファフナー」に関わってくるとそこからも解き放たれたというか、そのプライドやエゴの“向こう側”に行けた気がして。最初は冗談半分でサビに「蒼穹」と入れていて、自分でも「まさかね、このまま使わないよね」と思っていたんですけど、歌詞を書き進めていくうちに「蒼穹」以外の言葉がしっくりこなくなっちゃったんですよ。他方で「蒼穹」という言葉を使わずに「蒼穹」を表したいという欲求もあったんです。でも、そこに固執したがゆえに本当に言いたいことがぼんやりしちゃうくらいだったら、ためらわず直球を投げようと。それを成長と見るか開き直りと見るかはわからないですけど(笑)。

──レコーディングはいかがでした?

atsuko わりと勢いよくできたと思います。

KATSU atsukoは、声がもう“「ファフナー」声”なんですよ。

──「ファフナー」声ですか。

KATSU どんな作品であれレコーディング前に仮歌を録ったりするときに「ん? その歌声で正解なの?」みたいな違和感があったんですけど、「ファフナー」楽曲になると仮歌の段階で正解が見えることがあるんですよね。特に「EXODUS」の関連楽曲を作っていた3、4年ぐらい前からそれが顕著で。だからきっとatsukoは声が「ファフナー」なんだろうなと(笑)。

atsuko それは喜んでいいのかな?(笑)

KATSU 歌詞を書くのは確かに大変そうですけど、レコーディングは意外と楽そうというか、atsukoの思うがままに歌ったら「ファフナー」になる。そういう意味では「ファフナー」楽曲は、作るのは大変だけどレコーディングは一番やりやすいかもしれないですね。

atsuko 「ファフナー」は自分の持っているモノで勝負できるというか……逆にアニメ「アホガール」の主題歌の「全力☆Summer!」(2017年7月発売の26thシングル)とかは無理してテンションを上げなきゃいけなくて(笑)。要するに「ファフナー」に関してはニュートラルな気持ちで、そのままの自分でブースに入って歌ったら「ファフナー」の歌になるという感覚はありますね。もちろんボーッと歌っているわけではなくて、そこで細かく抑揚や表情も付けていくんですけど。

KATSU(G, Key)

あんまり賑やかにしないで!

──カップリングの「私はそこにいますか」は、端的に言ってすごい曲ですね。

atsuko 謎のジャンルの曲になったよね。

KATSU エンジニアさんがマスタリングしながら、曲が展開してEDMになった瞬間にのけぞったからね。

atsuko 「フラメンコとEDMを掛け合わせた人は、たぶん世界初だよ」って言われた(笑)。

KATSU この「私はそこにいますか」を作るにあたり、プロデューサーの中西(豪)さんから「無印の『ファフナー』から『EXODUS』までを総括するイメージソングを作ってくれ」とオーダーされて、「長っ!」って(笑)。

atsuko 「50話以上あるんですよ! ちょっと長すぎません?」と言ったら「今までの『ファフナー』の中で亡くなったり去っていったりした人たちもたくさんいるから、彼らの気持ちにフォーカスした曲を作ってもらえないか」と。実際、「ファフナー」は序盤から主要なキャラクターもいなくなっていくような作品なので、確かにそういう曲を書けたら素敵だなと。

KATSU 僕の中では15年近く「ファフナー」を応援してくれている人だけがハッとする曲にしたくて。まず「そこにいますか」という言葉は最初に出てくるキーワードだから、このタイトル自体に“「ファフナー」み”を感じると思うんですよね。さらに出だしの「覚えていますか?」という1行でもう「ファフナー」に脳をやられてしまっているファンの頭には自動的にキャラクターが3、4人は浮かんでくるはず。

──なるほど。

KATSU あるいは「翔空」と書いて「そら」と読むのもそう。第1期の「ファフナー」第6話のサブタイトルが「翔空~ぎせい」なんですけど、これは(羽佐間)翔子が死んでしまうエピソードなんです。だから「ファフナー」のファンが「翔空」を見ると「ああ、翔子か……」ってなるんじゃないか。そういうふうに、その人のことが思い出せる曲になるといいなあって。

──曲の展開が目まぐるしいのにも何か狙いがあるんですか?

KATSU それはすごく単純な理由で、「ファフナー」の歴史を1曲の中で表現したかったからです。例えばEDMになるパートは、そこに今までの「ファフナー」のどんなシーンが乗るかが自分の中でイメージできたからああなっただけなんですよ。

──スパニッシュギターが入ってパーカッシブになるあたりは「Shangri-La」を思い起こさせます。

KATSU 鋭い。もともと中西さんがイメージソングのサンプルとして挙げてくれたのが、音楽劇「蒼穹のファフナー」のテーマソングの「Remember me」(2013年4月発売の6thアルバム「ZERO」収録曲)というスパニッシュ系の曲だったんです。そこに土臭いパーカッションをふんだんに入れてしまおうと。だから「私はそこにいますか」は「Remember me」と対になる曲であり、同時に「Shangri-La」で特徴的だったティンバレスのソロもあるという訳のわからない曲でもあったりするんですけど。

atsuko 歌詞の内容的には故人への届かぬ思いみたいなものも書いているのに、KATSUさんがアレンジでパーカッションをカランカラン入れてくるので「あんまりにぎやかにしないで!」って3回ぐらい言いましたね(笑)。

恋愛に悩んでる人が聴いても何も得るものがない

──「ファフナー」楽曲の作詞に慣れはありますか? それとも毎回大変ですか?

atsuko 大変ですね。でも初期の頃、それこそ「Shangri-La」の歌詞とかは中西さんからのダメ出しもあったんですけど、ここ数年はまったくないですね。むしろ不安になって「本当に歌詞読んでますか?」って(笑)。

KATSU 中西さんからOKが出ても、自分たちで直してます。

atsuko 私は歌詞の大枠を決めずになんとなく書き始めるので、曲によっては全然まとまらなくて。KATSUさんと仮歌を入れる段階では「ここ、どうしよう?」ってなることもしょっちゅうなんです。そうやってとっ散らかった状態で一応仮歌を録るんですけど、そしたらKATSUさんから「Aメロは全部書き換えて」みたいなダメ出しがきて。そういうやり取りを2人で繰り返してブラッシュアップしていくことが多いですね。

──ライターと編集者みたいな関係ですね。

atsuko そうかもしれないですね。昔は「なんだよ、ダメ出ししやがって。じゃあお前が書けよ」と思ってたんですけど(笑)。

KATSU ダメ出しじゃなくて、いいところを探してるの。歌詞の中から一番いい言葉を見つけて、それを一番効果的な場所で使いたい。たぶんatsukoも自分で書いててどの言葉に聴き手が引っかかるのかがわからなくなってることもあると思うんです。代表的なのは「全力☆Summer!」なんですけど、サビ頭の「かっとばせ夏が来た」というフレーズは、もともと2番サビの繰り返しのところにあったんですよ。だから「これは目立つ場所に持ってこなきゃダメでしょ」って。

──まさに編集者が見出しやキャッチになるようなフレーズを選ぶような作業ですね。

KATSU もちろん歌詞全体の流れや言葉の意味は汲み取ろうとしているんですけど、それよりもまず言葉そのもののインパクトがメロディと合致したときに、その曲は一番輝くんですよね。だからそこに神経を研ぎ澄ませてる。

atsuko ただ、もともと2番サビにあった言葉を1番サビに持ってくるような場合は、歌詞の中で組み立てていた物語の時系列が狂うこともあるんです。そこを調整するのは大変ではあるんですけど、やっぱりアニメの主題歌であれば放送で流れる90秒間でいかにフックを作るかとか、視聴者の方に「あのサビのフレーズが頭から離れない」みたいに思ってもらうことを常に目指しているので。

──アニメのために曲を作るという姿勢はまったくブレないですね。

atsuko さっきも言いましたけど、今回も「ファフナー」のことしか考えてないですから(笑)。そういう意味では、私たちは自分で曲を作って自分で表現しているけど、自分のことを書いてるわけではないという不思議な感覚もあって。でもそれがすごく楽しいんですよね。例えばJ-POPの曲って、恋愛ソングが多いじゃないですか。それはそれで、恋愛観を見つめて曲を書き続けられる人は尊敬に値すると思うんです。一方でアニメの世界では、宇宙からの侵略者と戦ったり、アホになったり、いろんなことが起こるわけですよ。それを彩る、あるいはより際立たせるための楽曲を作るという作業が、年々楽しくなってきてる。

KATSU この「THE BEYOND」というシングルに関して言えば、極論すれば「蒼穹のファフナー」ファンのための作品として成立していれば僕らは満足なんです。だから恋愛に悩んでる人がこれを聴いても何も得るものがない。

──ははは(笑)。

atsuko 確かに、何も得るものがない(笑)。

angela
angela「THE BEYOND」
2019年5月22日発売 / KING RECORDS
angela「THE BEYOND」期間限定盤

期間限定盤 [CD+Blu-ray]
1944円 / KICM-91939

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angela「THE BEYOND」アニメ盤

アニメ盤 [CD]
1296円 / KICM-1939

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CD収録曲
  1. THE BEYOND
  2. 私はそこにいますか
  3. THE BEYOND(OFF VOCAL VERSION)
  4. 私はそこにいますか(OFF VOCAL VERSION)
期間限定盤Blu-ray収録内容
  • 「THE BEYOND」Music Clip
angela
「angelaのデビュー15周年記念ライヴ!!とAll Time Best Liveが両方入ったBlu-ray」
2019年4月24日発売 / KING RECORDS
angela「angelaのデビュー15周年記念ライヴ!!とAll Time Best Liveが両方入ったBlu-ray」

[Blu-ray 2枚組]
8100円 / KIXM-368

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angela 15th Anniversary Live(河口湖ステラシアター / 2018年5月19日公演)
  1. over the limits
  2. 蒼穹
  3. イグジスト
  4. パノラマ
  5. Jump up!
  6. 全力☆Summer!
  7. feel, like a breeze
  8. fly me to the sky
  9. 是、夏祭り
  10. 涙が止まるまで
  11. Separation
  12. dear my best friend
  13. To be with U!
  14. SURVIVE!
  15. BLAZE
  16. Shangri-La
  17. 果て無きモノローグ
  18. Galactic material
  19. 騎士行進曲
  20. 明日へのbrilliant road

<アンコール>

  1. E1. KINGS
  2. E2. DEAD OR ALIVE
  3. E3. 約束

<ダブルアンコール>

  1. E1. シドニア
  2. E2. KIZUNA
angela Live 2018 All Time Best in 日比谷野音(日比谷野外大音楽堂 / 2018年10月27日公演)
  1. 明日へのbrilliant road
  2. シドニア
  3. 全力☆Summer!
  4. Beautiful fighter
  5. ANGEL
  6. Spiral
  7. gravitation
  8. 僕じゃない
  9. The end of the world
  10. オルタナティヴ
  11. 蒼穹
  12. 接触
  13. in your arms
  14. キラキラ-go-round
  15. 愛すること
  16. 笑顔をみせて
  17. 未来とゆう名の答え
  18. 蒼い春
  19. 騎士行進曲
  20. Lost Small World ~檻の向こうに~
  21. KINGS
  22. SURVIVE!

<アンコール>

  1. That's Halloween
  2. DEAD OR ALIVE
  3. Shangri-La
Music Clips

シドニア / イグジスト / 騎士行進曲 / DEAD OR ALIVE / 僕は僕であって / 全力☆Summer! / SURVIVE!

映像特典
  • angela 15th Anniversary Live メイキング映像
  • angela Live 2018 All Time Best in 日比谷野音 メイキング映像
angela(アンジェラ)
岡山県出身のatsuko(Vo)とKATSU(G, Key)による2人組ユニット。それぞれ音楽を志し上京した後に結成し、2003年にテレビアニメ「宇宙のステルヴィア」のオープニング主題歌「明日へのbrilliant road」でメジャーデビュー。1stシングルながらオリコン週間シングルランキングで15位をマークし、瞬く間にアニメソングシーンで存在感を示す。以来「蒼穹のファフナー」シリーズ、「アスラクライン」、「K」シリーズなど、多くの人気アニメの関連楽曲を担当している。2017年3月に自身初の東京・日本武道館単独公演「angelaのミュージック・ワンダー★特大サーカスin日本武道館~僕等は目指したShangri-La~」を開催。同年12月にはニューアルバム「Beyond」をリリースした。2018年5月に山梨・河口湖ステラシアターにて、メジャーデビュー15周年を記念したライブ「angela 15th Anniversary Live」を実施。10月にはベストアルバム「angela All Time Best 2003-2009」「angela All Time Best 2010-2017」を同時リリースし、東京・日比谷野外音楽堂にてワンマンライブ「angela Live 2018 All Time Best in 日比谷野音」を開催した。2019年4月にはデビュー15周年のアニバーサリーイヤーに開催した2つのワンマンライブの映像を収めたBlu-ray「angelaのデビュー15周年記念ライヴ!!とAll Time Best Liveが両方入ったBlu-ray」をリリース。5月にはアニメ「蒼穹のファフナー THE BEYOND」のオープニングテーマを収めた最新シングル「THE BEYOND」を発表する。