伝説にならなくていいから晴れて!
──一方の野音も雨の予報でしたよね(参照:angela、“ベストライブ”で25曲届けるも「まだ歌い足りない!」 )。当日はキングレコードさんも自腹で200着のカッパを用意されていたらしく……。
KATSU あの200着はどこに行ったのか。
atsuko 「雨の野音は伝説になる」なんて言いますけど、私としては「伝説にならなくていいから晴れて!」と思っていたんです。雨だとお客さんもスタッフさんも濡れちゃうし、機材の搬入、搬出や物販のことも考えると申し訳ない気持ちになっちゃうので。でも、全然降らなくてよかったですね。
──野音ではブラスセクションが入って、バンドメンバーもいつもと違いました。
KATSU 15周年記念ライブを振り返る場で、「Shangri-La」(2004年8月発売の6thシングル)以降のレコーディングでベースを弾いてくれているIKUOさんや、僕のピアノの師匠でもある蓮沼健介さん、「Animelo Summer Live」で出会ったドラマーのmasshoi(山内優)くんとか、凄腕のミュージシャンを集めてライブをやるのはどうかという案が出ていて。それでアポイントを取ったらみんな快くOKしてくれたんですよね。
atsuko ありがたいことにね。
KATSU その中でブラスも入れることになって。初期のangelaのライブではブラスを入れてたんですけど、やっぱりそれなりに大変でずっと入れてなかったんです。だからある種、実験的な試みでもあったんですけど、「in your arms」(2004年6月発売の5thシングル)以降のレコーディングでブラスをお願いしているYOKANさんに相談したら「ぜひやりたい」と言ってくれて。結果、例えば「明日へのbrilliant road」(2003年5月発売の1stシングル)とか「Shangri-La」とか「シドニア」(2014年5月発売の21stシングル)のようなブラスの印象がない曲も、新しいアレンジでより華やかさが出て。これは「大サーカス」でもきっと映えるというビジョンが見えました。
──ベタな質問ですが、このBlu-rayの一番の見どころを挙げるとしたらどこですか?
KATSU 演出でしょうね。どっちのライブもほかのアーティストさんはやらないことをやっていると思うので。自分たちとしても、この2つライブのあり方が今後の参考になるというか、angelaのライブの教科書みたいな位置付けにもなっているんです。
──atsukoさんは?
atsuko 見どころは、私ですかね。
KATSU (笑)。
atsuko 皆さん私を見にきてくださってるんだと思ってるんですけど(笑)、私自身はライブ中の私は見えないじゃないですか。だから映像化されて初めて自分を客観視できるというか、「次はもっとこうしよう」みたいな発見もあって。あと、ライブ中は私は基本的に客席を見ているので、KATSUさんやダンサーさんやバンドの皆さんがどんな表情をしているのかも断片的にしか見えない。でも、映像ではカメラさんが個々を寄りで撮ってくれてるので「楽しそうだな」とか「必死だな」とか「譜面ガン見してるな」とか、よくわかるんですよ。現場では気付かなかった細部が見えるのも、映像作品の醍醐味かなと思います。
『THE BEYOND』はファフナー世界の“島唄”
──ここからはニューシングル「THE BEYOND」について伺います。表題曲はアニメ「蒼穹のファフナー THE BEYOND」のオープニングテーマですが、直近のアルバムのタイトルも「Beyond」(2017年12月発売の9thアルバム)でしたよね。
atsuko そうなんです。「THE」が付いて帰ってきた。
KATSU しかもアルバム「Beyond」にも「蒼穹のファフナー THE BEYOND」の関連楽曲が入っているからちょっとややこしいんですけど、「Beyond」に「THE BEYOND」は入っていません。アルバム「Beyond」は、その前にやった武道館公演で「来たぜ武道館、行くぜその先へ!」と宣言して終わったので、そこからテーマを引っ張ってきていて。一方、今回のシングル「THE BEYOND」は「蒼穹のファフナー THE BEYOND」の主題歌なので、そのまま「THE BEYOND」というタイトルを付けてます。
atsuko 安直といえば安直ですね。
KATSU 「蒼穹のファフナー」シリーズも始まって15年になるんですけど、15年追いかけているファンの人はもちろん、「蒼穹のファフナー EXODUS」(TVシリーズ第2期)から第1期の「ファフナー」に入った人もたくさんいるらしいんですね。で、個人的な感想を言えば「蒼穹のファフナー THE BEYOND」は「EXODUS」を超越しちゃってるというか、さらにすごいことになってるのに、世界観はちゃんと地続きなんです。
──アルバム「Beyond」には「蒼穹のファフナー THE BEYOND」のイメージソング「Prologue -君の向こう側-」が収録されていましたよね(参照:angela「Beyond」インタビュー)。
KATSU そう。「Prologue -君の向こう側-」と「THE BEYOND」で共通している部分もあるんです。例えば「EXODUS」の終盤に、物語の主な舞台である竜宮島を海中に沈めるエピソードがあるんですけど、それが僕の中ではすごく衝撃的だったんです。だからイメージソングの「Prologue -君の向こう側-」と同様に、「THE BEYOND」でも曲の冒頭に民謡風のメロを入れようと最初から決めていて。つまり、自分が生まれ育った故郷の島を忘れないために、その島に伝わる民謡を通して「これは島唄なんです」と示したかった。
atsuko 歌詞も含めて、この曲は「蒼穹のファフナー THE BEYOND」のオープニングテーマでしか通用しないよね。今までもそういう姿勢でアニメソングを作ってきたんでけど、その度合いが特に強いというか、本当に「ファフナー」のことだけを考えて作ったことは確かです。
煮詰まりの向こう側へ
──アルバム「Beyond」リリース時のインタビューで、「蒼穹のファフナー THE BEYOND」のイメージソング「Prologue -君の向こう側-」の制作には「アルバム1枚作るくらいの労力を費やしたんじゃないか」とおっしゃっていましたが、今回の「THE BEYOND」は……。
KATSU 「Prologue -君の向こう側-」とは比較にならないくらい、大変でしたね。「THE BEYOND」を作る前に、劇場アニメーション「K SEVEN STORIES」の曲をたくさん書いていたんですけど、「K」シリーズの楽曲はある意味で瞬発力で書けるんですよ。
──「素直に『カッコいい』と思ったものをやる」とおっしゃっていましたよね(参照:angela デビュー15周年特集 第3回「K SEVEN SONGS」インタビュー)。
KATSU 「ファフナー」はそうじゃなくて。音楽に限らず、何か作品を作るときは先に完成形をある程度イメージして、そこを目指して作っていくと思うんです。だけど「ファフナー」楽曲の場合はそのイメージがぼんやりしていて、作っていく段階で徐々に見えてくる感じなんですよ。例えばAという選択をすれば「ファフナー」になるんだけど、Bでも「ファフナー」になるかもしれないと思ったら、AとBの両方を試さなきゃいけないし、それだけで2倍の時間がかかるんですよね。
atsuko しかも全然2択じゃ済まないからね。
KATSU 以前、脚本の冲方丁さんが「『ファフナー』の執筆は遺跡の発掘と一緒だ」とおっしゃっていたんですけど、それと似てるなって。つまりブラシでちょっとずつ砂を払っていくうちに全貌が見えてくる。
atsuko 私たちは「どうやったら『ファフナー』になるか?」とか「どうやったら『K』になるか?」とか、ちゃんと筋道を立てて考えたことはないんですけど、実際に曲ができていく過程を比べてみると「ファフナー」はずいぶん頭を使ってますね。あるいは煮詰まってる。「THE BEYOND」は“煮詰まりの向こう側へ”みたいな煮詰まり方をした曲(笑)。
──「THE BEYOND」には、これまでの「ファフナー」楽曲の要素も随所に見られますね。
KATSU そうですね。できる限り「ファフナー」因子みたいなものは組み入れたくて、例えば「Shangri-La」のメロディを堂々と使っています。「Shangri-La」は第1期の「ファフナー」のオープニングだし、あれから15年近く経ってもこの曲の偉大さは変わらないどころから年々増しているんですよね。だから本音を言うと「Shangri-La」にあやかりたいなと(笑)。別に「Shangri-La」のメロディがなくても曲としては成立するんですけど、わざわざそれを入れることで「『ファフナー』が帰ってきた!」「おかえり!」って思ってもらえるんじゃないかという結論に至りました。
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atsukoは声が「ファフナー」
- angela「THE BEYOND」
- 2019年5月22日発売 / KING RECORDS
-
期間限定盤 [CD+Blu-ray]
1944円 / KICM-91939 -
アニメ盤 [CD]
1296円 / KICM-1939
- CD収録曲
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- THE BEYOND
- 私はそこにいますか
- THE BEYOND(OFF VOCAL VERSION)
- 私はそこにいますか(OFF VOCAL VERSION)
- 期間限定盤Blu-ray収録内容
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- 「THE BEYOND」Music Clip
- angela
「angelaのデビュー15周年記念ライヴ!!とAll Time Best Liveが両方入ったBlu-ray」 - 2019年4月24日発売 / KING RECORDS
-
[Blu-ray 2枚組]
8100円 / KIXM-368
- angela 15th Anniversary Live(河口湖ステラシアター / 2018年5月19日公演)
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- over the limits
- 蒼穹
- イグジスト
- パノラマ
- Jump up!
- 全力☆Summer!
- feel, like a breeze
- fly me to the sky
- 是、夏祭り
- 涙が止まるまで
- Separation
- dear my best friend
- To be with U!
- SURVIVE!
- BLAZE
- Shangri-La
- 果て無きモノローグ
- Galactic material
- 騎士行進曲
- 明日へのbrilliant road
<アンコール>
- E1. KINGS
- E2. DEAD OR ALIVE
- E3. 約束
<ダブルアンコール>
- E1. シドニア
- E2. KIZUNA
- angela Live 2018 All Time Best in 日比谷野音(日比谷野外大音楽堂 / 2018年10月27日公演)
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- 明日へのbrilliant road
- シドニア
- 全力☆Summer!
- Beautiful fighter
- ANGEL
- Spiral
- gravitation
- 僕じゃない
- The end of the world
- オルタナティヴ
- 蒼穹
- 接触
- in your arms
- キラキラ-go-round
- 愛すること
- 笑顔をみせて
- 未来とゆう名の答え
- 蒼い春
- 騎士行進曲
- Lost Small World ~檻の向こうに~
- KINGS
- SURVIVE!
<アンコール>
- That's Halloween
- DEAD OR ALIVE
- Shangri-La
- Music Clips
-
シドニア / イグジスト / 騎士行進曲 / DEAD OR ALIVE / 僕は僕であって / 全力☆Summer! / SURVIVE!
- 映像特典
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- angela 15th Anniversary Live メイキング映像
- angela Live 2018 All Time Best in 日比谷野音 メイキング映像
- angela(アンジェラ)
- 岡山県出身のatsuko(Vo)とKATSU(G, Key)による2人組ユニット。それぞれ音楽を志し上京した後に結成し、2003年にテレビアニメ「宇宙のステルヴィア」のオープニング主題歌「明日へのbrilliant road」でメジャーデビュー。1stシングルながらオリコン週間シングルランキングで15位をマークし、瞬く間にアニメソングシーンで存在感を示す。以来「蒼穹のファフナー」シリーズ、「アスラクライン」、「K」シリーズなど、多くの人気アニメの関連楽曲を担当している。2017年3月に自身初の東京・日本武道館単独公演「angelaのミュージック・ワンダー★特大サーカスin日本武道館~僕等は目指したShangri-La~」を開催。同年12月にはニューアルバム「Beyond」をリリースした。2018年5月に山梨・河口湖ステラシアターにて、メジャーデビュー15周年を記念したライブ「angela 15th Anniversary Live」を実施。10月にはベストアルバム「angela All Time Best 2003-2009」「angela All Time Best 2010-2017」を同時リリースし、東京・日比谷野外音楽堂にてワンマンライブ「angela Live 2018 All Time Best in 日比谷野音」を開催した。2019年4月にはデビュー15周年のアニバーサリーイヤーに開催した2つのワンマンライブの映像を収めたBlu-ray「angelaのデビュー15周年記念ライヴ!!とAll Time Best Liveが両方入ったBlu-ray」をリリース。5月にはアニメ「蒼穹のファフナー THE BEYOND」のオープニングテーマを収めた最新シングル「THE BEYOND」を発表する。