音楽ナタリー PowerPush - angela
2人を形作りし「ファフナー」のためatsukoとKATSUが生み出した「イグジスト」
なんか“ファフって”いる「イグジスト」という“バラード”
──今、アレンジがシャープになったという指摘に対して「バレた」とおっしゃってましたけど、過去の楽曲の手法を参照、引用したということは、ギミックを効かせたことになるのでは?
KATSU いや、そうやっていろんな手法を引用していったら、それだけで盛りだくさんになっちゃって。「Shangri-La」みたいにスパニッシュギターを入れたり、逆再生させたりみたいなド派手なギミックを入れる隙間がなくなっちゃったんです(笑)。
──だから楽曲全体としてはシャープな印象になった、と。
KATSU そうなんでしょうね。アイデア盛りだくさんとはいえ、これ見よがしに「ほらここ『Shangri-La』っぽいでしょ!」ってやっちゃうのも違いますから。そんなににぎやかに押せ押せではないんだけど、なんとなく「あっ、なんかここ『Shangri-La』みたい」「『蒼穹』みたいだ」って思ってもらえる。そういうアレンジになったなって思ってます。
atsuko それができるようになったのは11年間の経験の積み重ねのおかげかな、とは思ってるんですけどね。
KATSU 確かにこれまで蓄積してきた技術を駆使できた気はするけど、「『ファフナー』の新しい主題歌だ」っていうプレッシャーもあったし、いろんな手法を盛り込む作業自体もツラかった……(笑)。
──そのツラかったアレンジ作業をフィニッシュさせる要因、つまり曲やアレンジの落としどころってどうやって見つけるんですか?
KATSU 言葉にするのはスゲー難しいんですけど、僕「イグジスト」を聴いてると泣けるんですよ。曲を書いてるときもそうだし、デモ用のアレンジを考えてるときもそうだし、レコーディングやミックスのときもそうだったんですけど、ずっと「ああ、違うな違うな」「これ足してみよう」「これ引いてみよう」って試行錯誤して。でも、このアレンジ、音像が決まった瞬間、泣けてきたんです。「なんかきた!」って思えた。そこが作業のやめどき、落としどころが見つかった瞬間でしたね。
──「言葉にするのはスゲー難しい」って言ってるそばからなんなんですけど「なんかきた!」の「なんか」って言語化できたりします?
KATSU うーん……。なんか“ファフって”たんですよね。「ファフナー」してた(笑)。
atsuko あはははは(笑)。
KATSU 「あっ、この曲に羽原さんの作ってくれたオープニング映像が乗れば、みんなが『お帰り』って思ってくれる」っていう気がしたんです。それまで「作るのツラい」としか思えてなかったこの曲が泣ける感動的な1曲に変わったというか。だから「イグジスト」ってアップテンポな曲ではあるんですけど、僕の中では“バラード”っていう扱いなんですよ(笑)。
「総士くんが絶望的なことばっかり言うんですよ」
──カップリングのバラード「暗夜航路」も、初披露となった去年のクリスマスライブで歌い終えたatsukoさんが「ねっ、これで『ファフナー』のだいたいのストーリーがわかるでしょ」っておっしゃっていた通り、やはり「ファフナー」の世界観に寄り添った1曲になっています。
atsuko 言い換えるなら、真っ暗な1曲に(笑)。今回の「ファフナー」って本編が総士くんのモノローグで終わることが多いんですけど、彼、ホントに絶望的なことばっかり言うんですよ(笑)。
──あはははは(笑)。
atsuko それで「このあとに私たちの曲が流れんのか」ということを考え(笑)。あとテレビ第1シリーズもアッパーな「Shangri-La」がオープニングで、エンディングはバラードの「Separation」っていう組み合わせだったから「今回もバラードがいいね」っていう話が持ち上がっていたので“The 孤独曲”を作ってみたんです。「竜宮島」の住人の中にはいろんな年代の人がいるから、それぞれが抱えている悩みとか孤独に寄り添えるように。現実世界の私たちなら飲み会とかSNSでぶちまけることもできるんだろうけど……。
──未知の生命体・フェストゥムと人類の存亡を賭けて戦ってる「ファフナー」の世界じゃあ「ムカつくなう」「今オレが寂しい件について」なんてつぶやいてる場合じゃないですもんね(笑)。
atsuko だから1人で抱え込んでしまっている孤独感を書けたらいいなって思ってました。ただ、プロデューサーには去年の「アニサマ」(Animelo Summer Live 2014 -ONENESS-)の楽屋でデモを聴かせたんですけど、ライブ本番前のストレッチをしてる私に向かって「atsukoさんが一番言いたいのって『紙一重の 生と死を この先 何度歌うのだろう』っていうところですよね!」「愚痴ですか?」って言われてしまいまして……。
──あはははは(笑)。愚痴とは言わないまでも、完全に「ファフナー」に寄り添った「イグジスト」にはまず盛り込まれないだろう自己言及的なフレーズですよね。
KATSU 一瞬atsukoが素に戻ってますよね(笑)。
atsuko 最初にKATSUが言っていた通り「生きる」っていうのを歌うのがangelaだから、「紙一重の 生と死を」歌っていることについて愚痴るつもりはもちろんないんですけど、確かに一瞬素になったんでしょうね。当然私だって孤独感っていうのは覚えるわけだし、しかもタイトルの通り、夜がテーマの詞だから。夜って孤独を増長させるじゃないですか。そういうモチーフで詞を書いてたから、私自身の孤独な顔がチラチラしちゃったんでしょうね(笑)。でも1人孤独なまま、暗い夜の中に居続けたら人って崩れ落ちてしまうから。小舟で航路にこぎ出すこと、動き出すことによって自分を保っていたいし、「ファフナー」のキャラクターにも保っていてほしいから、こういう詞と曲にしてみました。
KATSU あとテレビ第1シリーズがアッパーな曲とバラードの組み合わせだったからっていうだけじゃなくて、僕らの中に「『ファフナー』の曲っていったらバラード」っていう印象があったから「暗夜航路」みたいな曲ができたっていう面もありますね。
atsuko うん。今回シングルと一緒にファフナーのテーマソングや劇中歌、キャラクターソングをまとめた「『蒼穹のファフナー』コンプリートベストアルバム」が同時発売されるんですけど、それに入ってる私たちが書いた曲17曲のうち半分くらいがバラードですから。アニメの関連楽曲でそこまでバラードばっかりっていうことってそんなにないと思うんだけど、「ファフナー」ではバラードがアリになっている。だから今回「暗夜航路」を作るときにも、なんていうか流れが見えやすかったですね。
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- ニューシングル「イグジスト」2015年2月11日発売 / スターチャイルド
- 限定生産盤 [CD+Blu-ray] 1944円 / KICM-93286
- アニメ盤 [CD]1296円 / KICM-3286
CD収録曲
- イグジスト
- 暗夜航路
- イグジスト off vocal version
- 暗夜航路 off vocal version
限定生産盤Blu-ray収録内容
- 「イグジスト」Music Clip
angela(アンジェラ)
岡山県出身のatsuko(Vo)とKATSU(G, Key)による2人組ユニット。それぞれ音楽を志し上京したのち結成し、2003年にテレビアニメ「宇宙のステルヴィア」のオープニング主題歌「明日へのbrilliant road」でメジャーデビュー。1stシングルながらオリコン週間シングルランキングで15位をマークし、瞬く間にアニメソングシーンで存在感を示す。以来「蒼穹のファフナー」シリーズ、「アスラクライン」、「K」シリーズなど、多くの人気アニメの関連楽曲を担当。また「Animelo Summer Live」やアメリカの「SAKURA-CON」、カナダの「CANADIAN NATIONAL EXPO」、フランスの「Japan Expo」など、国内外の大型アニメ系イベントにも多数出演する。2014年には5月にシングル「シドニア」、ベストアルバム「宝箱2 -TREASURE BOX II-」、同作と2007年のベスト盤「宝箱 -TREASURE BOX-」の楽曲を収録したBDM(Blu-ray Disc Music)盤「宝箱と宝箱2が入ったブルーレイで聞くやつ」、7月にシングル「Different colors」を発表した。2015年2月、テレビアニメ「蒼穹のファフナー EXODUS」のオープニング主題歌「イグジスト」をシングルとしてリリースした。