音楽ナタリー PowerPush - angela

2人を形作りし「ファフナー」のためatsukoとKATSUが生み出した「イグジスト」

angelaがニューシングル「イグジスト」をリリースした。

彼らは昨年12月24日に東京・ゆうぽうとホールでライブ「angelaのミュージック・ワンダー★大サーカス2014」を開催。このステージ上でシングルのカップリング曲「暗夜航路」を初披露し、また「イグジスト」のビデオクリップも初めて公開している。そのステージ上、atsuko(Vo)とKATSU(G)は「10年待ちました!」とシャウト。「イグジスト」がテレビシリーズとしては10年ぶりの新作となるアニメ「蒼穹のファフナー EXODUS」のオープニング主題歌に、「暗夜航路」がエンディング主題歌に採用されたことへの喜びを高らかに表明した。そしてangelaファン、“ぢぇらっ子”たちも、彼らのその言葉に当日一番の大歓声で応えている。

2004年放送の「蒼穹のファフナー」のオープニング主題歌「Shangri-La」でスマッシュヒットを飛ばして以来、劇場版アニメ、舞台など、さまざまなメディアミックス展開を見せる「ファフナー」シリーズに楽曲を提供し続けてきたangela。そんな彼ら自身とファンが切望した新シリーズのテーマソングに込められた思いとは? そして彼らの「ファフナー」への思いとは? 今回の特集では「angelaのミュージック・ワンダー★大サーカス2014」の模様をお届けするとともに、atsukoとKATSUに話を聞いた。

取材・文 / 成松哲 ライブ撮影 / 岡本麻衣(ODD JOB)

angelaをangelaにしてくれた「蒼穹のファフナー」

atsuko(Vo)

──去年7月の「Different colors」のインタビュー(参照:angela「Different colors」インタビュー)でお2人は、「蒼穹のファフナー」シリーズは「作り込んだ曲を提供するべき作品」だとおっしゃっていました。だからまずはangelaの「蒼穹のファフナー」というアニメとの付き合い方について教えてください。

atsuko(Vo) 「ファフナー」は2004年に始まったシリーズで、その頃、私たちはデビュー2年目。まだ右も左もわからない中「一から立ち上げるオリジナルアニメの楽曲を」っていうお話をいただいたんですね。だから当時は闇雲ではあったけど、すごく勢いと情熱をもって楽曲制作に取り組んでたなあっていう記憶があります。それに監督の羽原(信義)さんだったり、今回の「(蒼穹のファフナー)エグゾダス」の総監督をなさっている能戸(隆)さんだったり、シリーズ構成の冲方(丁)さんだったり、アニメを作る上で要になる人たちとある意味家族ぐるみのようなお付き合いをさせていただきながらも、しっかり話し合いをしながら作っていて。今、別のアニメに関わらせてもらうときもそうするようにしているんですけど、そういう私たちの曲作りのスタイルも「ファフナー」の最初のシリーズのときにできあがった気がしています。

KATSU(G, Key)

KATSU(G, Key) あと僕らのデビュー曲の「明日へのbrilliant road」が主題歌だった「宇宙のステルヴィア」と「ファフナー」ってどっちもXEBECの制作で、「ステルヴィア」の頃、XEBECのスタッフさんがデビュー当時の僕らに「期待してるよ」って声をかけてくれていて……。

──本当にXEBECの次回作である「ファフナー」にも呼ばれた、と。

KATSU そうなんですよね。しかもその「ステルヴィア」での僕たちの仕事を見ていてくれた人たちと一緒に曲を作ることができた。だから去年の「アニサマ」(「Animelo Summer Live 2014 -ONENESS-」)でatsukoが(「蒼穹のファフナー」テレビ第1シリーズ主題歌)「Shangri-La」を歌う前に言っていた「angelaをangelaにしてくれた曲です」に僕「本当にそうだよな」ってウルッときて。あれって本当に2人の嘘偽りない気持ちだったから。「蒼穹のファフナー」っていう作品がなければその後のangela、「K」や「シドニアの騎士」のテーマソングを作るangelaっていうものもなかったはずですから。

「ファフナー」ファンを裏切らないための試行錯誤

──その「angelaなるもの」ってどういうものなんでしょう?

KATSU ざっくり言ってしまうと「ロボ」「SF」「生きる」をテーマに曲を作るユニットっていうことですよね。インディーズ時代って「CDデビューしたい」みたいな漠然とした夢や目標しかなかったし、デビューした直後も「デビューできた!」みたいな気持ちしかなかったんですけど(笑)、「蒼穹のファフナー」が、自分たちはシーンの中でどういうジャンルのどういう曲を作ればいいのかを教えてくれたんです。

──そしてテレビ第1シリーズ放送後もangelaはテレビの特番や、舞台「音楽劇 蒼穹のファフナー」や劇場版アニメ「蒼穹のファフナー HEAVEN&EARTH」のための楽曲を書いたりと、10年以上「蒼穹のファフナー」というシリーズと向き合い続けた。で今回「蒼穹のファフナー EXODUS」のオープニング、エンディングを担当することになったわけですけど、それこそもう「ファフナー」との付き合いには慣れたものというか……。

atsuko いや、一大プレッシャーですよ!(笑) 最初に「またテレビシリーズやることになったから、テーマソングよろしくね」って感じの話をもらったのが……4、5年前?

KATSU うん。もうその瞬間から逃げたくてしかたなかった(笑)。

angela

atsuko 確かに(笑)。でも私たちが逃げた代わりに誰かが「ファフナー」のオープニングを歌うことになるかと思ったら……。

──絶対ムカつきますよね(笑)。でも何がそんなにプレッシャーだったんでしょう?

atsuko 例えばテレビ第1シリーズの頃、中高生だった「ファフナー」ファンの方って、もう社会に出て働いているわけですよね。

──そうでしょうね。

atsuko で、そういうファンの中には、忙しくなったからってことで最近はちょっとアニメから距離を置いていたんだけど「あっ、また『ファフナー』やるんだ」っていうことで、また帰ってくる方も多いと思うんです。やっぱりそういう人たちを裏切れないじゃないですか。「えっ!?」って曲を作って、私たちがどうこう言われる分にはまだいいんだけど、「ファフナー」から裏切られたと思われるのは絶対に避けたかったので。

KATSU だから曲が完成するまでがすごく長かった……。

atsuko オープニング主題歌の「イグジスト」はサビが特に決まらなくて。たぶんアニメのプロデューサーにも「11年ぶりのテレビシリーズでの『ファフナー』だ」っていうプレッシャーがあったからだと思うんですけど、いろんなデモを何度出してみても「なんか違うんですよね」と(笑)。で、私たちの中にも「作り続ければ今よりもっといいものができるはず」っていう期待があるから延々と作り続け……。

KATSU まあ「ミュージシャンあるある」なんですけどね(笑)。

atsuko 「自分が最初に作ったものがそんなにいいわけがない」「ブラッシュアップすればさらによくなるに違いない」って思い込みがちっていう(笑)。

──ということは……。

atsuko いろいろ悩んで、いろんなデモを提出した結果、最初の形に戻ってました(笑)。

──つまり最初から「蒼穹のファフナー EXODUS」の世界を一発で言い当てられていた、と。

KATSU なんか当てちゃってましたね(笑)。

ニューシングル「イグジスト」2015年2月11日発売 / スターチャイルド
限定生産盤 [CD+Blu-ray] 1944円 / KICM-93286
アニメ盤 [CD]1296円 / KICM-3286
CD収録曲
  1. イグジスト
  2. 暗夜航路
  3. イグジスト off vocal version
  4. 暗夜航路 off vocal version
限定生産盤Blu-ray収録内容
  • 「イグジスト」Music Clip
angela(アンジェラ)

岡山県出身のatsuko(Vo)とKATSU(G, Key)による2人組ユニット。それぞれ音楽を志し上京したのち結成し、2003年にテレビアニメ「宇宙のステルヴィア」のオープニング主題歌「明日へのbrilliant road」でメジャーデビュー。1stシングルながらオリコン週間シングルランキングで15位をマークし、瞬く間にアニメソングシーンで存在感を示す。以来「蒼穹のファフナー」シリーズ、「アスラクライン」、「K」シリーズなど、多くの人気アニメの関連楽曲を担当。また「Animelo Summer Live」やアメリカの「SAKURA-CON」、カナダの「CANADIAN NATIONAL EXPO」、フランスの「Japan Expo」など、国内外の大型アニメ系イベントにも多数出演する。2014年には5月にシングル「シドニア」、ベストアルバム「宝箱2 -TREASURE BOX II-」、同作と2007年のベスト盤「宝箱 -TREASURE BOX-」の楽曲を収録したBDM(Blu-ray Disc Music)盤「宝箱と宝箱2が入ったブルーレイで聞くやつ」、7月にシングル「Different colors」を発表した。2015年2月、テレビアニメ「蒼穹のファフナー EXODUS」のオープニング主題歌「イグジスト」をシングルとしてリリースした。