音楽ナタリー PowerPush - angela
2人を形作りし「ファフナー」のためatsukoとKATSUが生み出した「イグジスト」
重いんだけど重くなりすぎない言葉たち
──新しい「ファフナー」の世界を言い当てられた理由って「なんか」って感じなんですか? 「イグジスト」って詞にせよ、曲にせよ「Shangri-La」とは肌合いが違うし、意図的、戦略的にこの仕上がりを目指したんだと思ってました。
atsuko そうですか?
──例えばatsukoさんが書いた詞なら「Shangri-La」よりも言葉は強いし、エグいですよね。同じように若い子たちが一歩踏み出す歌、成長する歌ではあるんだけど、「Shangri-La」ほどロマンチックではない。「戦々恐々」「食らい尽くす」なんていう……。
atsuko おどろおどろしい言葉を使ってみました(笑)。
──ですよね(笑)。
atsuko 「Shangri-La」は原作のないオリジナルアニメである「ファフナー」の最初のテーマソングだから、作ってるときって、その時点でできあがっている脚本は読ませていただきましたけど、先々の展開までは知らなかったんですよ。だから未確認で不確定な世界の中に生きる若い子たちの思春期感というか、彼らの悩みや成長を歌ったんですけど、今回は続編っていうこともあるから私たちも含め、みんなもうアニメの世界のことを知ってるじゃないですか。「主要キャラがこんなにあっさり死んじゃう世界なんだ」っていうことは(笑)。しかも「EXODUS」の展開って、シナリオを読ませていただいたとき思わずプロデューサーに「どうするんですか、これ?」って聞いちゃったくらいキツかったんですよ。
──だから言葉もおどろおどろしくなった?
atsuko そうですね。でも「イグジスト」はアニメのオープニング主題歌でもあるわけで。「キツい、キツい」とばかりも言ってられない。“少年少女が悲観的な状況の中、戦っています”ということではなくて、“悲観的な状況の中にあってそれでも戦う少年少女たちがいます”ということを表現したかったから、おどろおどろしかったり、何かを暗示したりしているような言葉ではあるんだけど、実はちょっとポップに聞こえる、って感じにしようとは考えてましたね。実際「戦々恐々」って字面だけ見ると怖いんだけど、言葉自体の響きもそうだし、あのメロディに乗せて歌うと……。
──「せんせん」「きょうきょう」と反復語連発だから、すごくリズムがいいですよね。
atsuko なんかノリがいいですよね(笑)。「食らい尽くす」もその前の詞が「早々に早熟な実も」。「早々に早熟な実も 食らい尽くすの?」っていうフレーズですから。確かに言葉は重いんだけど「ファフナー」ファンの中にはほかのアニメのファン以上にいろいろ考察してくれるタイプの方が多いから、きっと「えっ、誰か早々に食らい尽くされちゃうの?」なんて想像してくれるだろうし、「そうそう」「そうじゅく」でやっぱり韻を踏んでるから、言葉自体もそんなに重たく響いたりはしないかなって思ってます。
「ファフナー」ファンと「お帰り」と言い合いたい
──そのヘヴィなフレーズでポップに言葉遊びをするのってatsukoさん一流のレトリックだと思うんですけど、どうやって思いつくものなんですか?
atsuko この曲に限らず「ファフナー」の楽曲についてはアニメの世界にどっぷり浸かって書いてますね。シナリオやキャラクターのことはもちろんイメージするし、あと曲を書いてるときにはオープニングの映像はまだできてないんだけど、それでも、あの「ファフナー」の画に合わさったときに生きるような言葉を、みたいなことも考えてます。だからこの曲が「今、放送中の『蒼穹のファフナー EXODUS』のオープニング主題歌です」みたいな前情報なしに突然FMラジオなんかで流れたら、リスナーの方は相当ビックリするだろうなって思ってます(笑)。
──つまり本当にアニメソングとしての機能性のみに特化して詞を書いた、と。
atsuko アニメソングはやっぱりアニメに寄り添うべきものだと思ってますから。かといってキャラソンみたいに直接的に誰かのことを歌っているわけではないから、間口が極端に狭いわけではなくて。みんなに「このフレーズは(「ファフナー」の主人公の1人である真壁)一騎のことを歌ってるのかな?」「ここは(皆城)総士のことかな?」なんて想像しながら聴いてもらえる。でも「ファフナー」のオープニング主題歌であることは間違いないっていう作り方ができたかな、とは思ってます。
──一方、お2人の手による曲とアレンジは「Shangri-La」よりもシャープですよね。変わった8ビートを刻んでいたり、サビ前のブレイクにアニメのキーワードでもある「そこにいますか?」っていう囁きを入れたりはしているものの、2コーラス目を抜けたあとパーカッシブなリズムパターンの上にスパニッシュギターのソロが乗る「Shangri-La」みたいな派手なギミックは効かせていない。
KATSU バレた(笑)。そういうアレンジにしたのは、11年間待っていた「ファフナー」ファンに「お帰り」って言いたかったし、逆に「お帰り」って言ってほしかったからなんです。で、じゃあどうすれば「お帰り」って言い合えるかって考えたとき思いついたのが、「Shangri-La」とか「Separation」とか「蒼穹」とか「ファフナー」の関連楽曲の中でも代表曲と呼ばれるものの要素をちょっとずつ盛り込むことで。例えばサビ前、「そこにいますか?」のところでブレイクを入れるのとか、間奏に「ハッ」で歌うコーラスを入れていたりするのなんかは「Shangri-La」でも使った手法だし、その間奏全体のテイストは「蒼穹」をイメージしていますし。で、新しいシリーズのオープニングなのに昔の手法ばっかりマネてても面白くない。「EXODUS」では(「ファフナー」シリーズの舞台)「竜宮島」の登場人物がめちゃくちゃ増える。今までの人たちはもちろん出てくる上に、新しく後輩はできるし「人類軍」っていう人たちも新たに島に入ってくる。そしてみんなが同じ目的で戦うっていうことで「ハッ」のコーラスワークは「Shangri-La」以上に複雑で、いろんな人の声が重なっている感じにしたいな、って考えたりもしました。
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- ニューシングル「イグジスト」2015年2月11日発売 / スターチャイルド
- 限定生産盤 [CD+Blu-ray] 1944円 / KICM-93286
- アニメ盤 [CD]1296円 / KICM-3286
CD収録曲
- イグジスト
- 暗夜航路
- イグジスト off vocal version
- 暗夜航路 off vocal version
限定生産盤Blu-ray収録内容
- 「イグジスト」Music Clip
angela(アンジェラ)
岡山県出身のatsuko(Vo)とKATSU(G, Key)による2人組ユニット。それぞれ音楽を志し上京したのち結成し、2003年にテレビアニメ「宇宙のステルヴィア」のオープニング主題歌「明日へのbrilliant road」でメジャーデビュー。1stシングルながらオリコン週間シングルランキングで15位をマークし、瞬く間にアニメソングシーンで存在感を示す。以来「蒼穹のファフナー」シリーズ、「アスラクライン」、「K」シリーズなど、多くの人気アニメの関連楽曲を担当。また「Animelo Summer Live」やアメリカの「SAKURA-CON」、カナダの「CANADIAN NATIONAL EXPO」、フランスの「Japan Expo」など、国内外の大型アニメ系イベントにも多数出演する。2014年には5月にシングル「シドニア」、ベストアルバム「宝箱2 -TREASURE BOX II-」、同作と2007年のベスト盤「宝箱 -TREASURE BOX-」の楽曲を収録したBDM(Blu-ray Disc Music)盤「宝箱と宝箱2が入ったブルーレイで聞くやつ」、7月にシングル「Different colors」を発表した。2015年2月、テレビアニメ「蒼穹のファフナー EXODUS」のオープニング主題歌「イグジスト」をシングルとしてリリースした。