雨のパレード|蔦谷好位置共同プロデュースで描く新たなポップスの世界

雨のパレードが4月24日にニューシングル「Ahead Ahead」をリリースする。

今年初めに福永浩平(Vo)、山﨑康介(G, Syn)、大澤実音穂(Dr)という3人体制になった彼ら。新体制初の作品となる本作は、蔦谷好位置を共同プロデューサーとして迎えた表題曲「Ahead Ahead」と新曲「/eɔː/」のほか、Neetz(KANDYTOWN)による「Hwyl」、小林うてなによる「Reason of Black Color」、荘子itおよび彼が所属するユニット・Dos Monosによる「Hometown feat. TABU ZOMBIE(from SOIL&"PIMP"SESSIONS)」のリミックス音源が収録される。

バンドの新たなスタートを切るシングルはどのように生まれたのか。フロントマンでありコンポーザーである福永に聞いた。

取材・文 / 小野島大 撮影 / 映美

新体制での変化

──新体制になって初めての音源ですが、今までと何か心持ちであったり、制作方法で変わったところはありましたか?

今まで僕らはセッションで曲を作っていたんですけど、3人になったことで初めてDTMで曲を作るようになったんです。今まで自分たちが弾く楽器の音だけで作っていたのが、打ち込みで音が重ねられるようになって。

──ベーシストの是永さんが辞められると発表になったのは今年になってからですが、曲を作ったタイミングというのは?

今回プロデュースしてくださった蔦谷(好位置)さんと作業に入った時点では4人で、その後、脱退が決まったんです。

──今までいたメンバーがいなくなると、後釜の補充も含めていろいろ考えられたと思います。

今のところサポートメンバーを入れてやる気持ちはあまりなくて。僕らはライブも全部手弾きでやっていて同期を使ってなかったんですけど、今回3人体制になったので同期を取り入れて、今まで出せなかった音を出せるようになった。なので、サポートを入れずに3人でやっていこうという感じになっていますね。僕らとしては、さらにサウンドがよくなっている印象なんです。既存の曲で言うと「You」は、レコーディングでコーラスを僕がかなり重ねているんですけど、今までのライブでは(ギターの)康介さん1人のコーラスを入れることしかできなかった。でも、今後は14人分の僕の声が一緒に流れることで曲の印象がだいぶ変わると思います。「MARCH」という曲もストリングスやアコギ、タンバリンの音がライブで流せるようになった。ほかの曲もかなりよく聞こえるんじゃないかと、僕たちはワクワクした感覚になっていますね。

福永浩平(Vo)

──なるほど。

以前は4人のセッションで曲を作ってレコーディングしてたから、そのままライブでできる状態だったんです。ただそれは昔ながらのかなりアナログなやり方だった。録ったあとに、例えばアコギやストリングスを足してみようとか、サイドチェインだったらシンセにダッキングかけてみたいな後処理をやっていたんです。でも決してパソコンで曲を作るのを敬遠してたわけじゃなくて、セッションで曲を作るのが一番手っ取り早かったからというだけの理由だったんですね。僕や康介さんはソフト音源をいろいろ扱ってたし、今はレコーディング前の曲作りの段階から打ち込みのサウンドを取り込める体制になったので、そこもプラスかなとは思っています。

──曲の書き方や発想方法も変わってきましたか?

そうですね、音作りに関しては変わるというよりアップデートできているなという感覚がすごくあって。蔦谷さんがDTMのやり方を教えてくださる方なので、いろんな刺激を受けて勉強させてもらってる感じです。

音作りのほうが喜びを得られる

──蔦谷さんといえば、Superfly、米津玄師、SKY-HI、クリープハイプなどを手がける売れっ子プロデューサーですが、なぜ彼と一緒にやることに?

今までプロデューサーがいなかったわけではないんですけど、蔦谷さんのようなプロデューサーの方とがっつりやったことがなくて。でもメンバーだけでの制作は、前回のアルバム「Reason of Black Color」でかなりやり尽くした、出し切った感もあって、今後ポップスのフィールドで戦っていくには僕らも変わったほうがいいと思っていたし、プロデューサーを付けるということに対しても拒否反応があったわけではなかった。なので、このタイミングで一緒にやってみるのはどうかとディレクターに言われたときに、すんなり受け入れられたんです。

──なるほど。

レーベル的に僕らのような音楽性のアーティストを世の中へ発信していく、広めていくためにはヒットを経験した人と一度組んでみるべきなんじゃないか、とも思っていたみたいで。多くの人に音楽を届けたいという意味で、蔦谷さんとは向いているベクトルが同じだし、僕らと志の部分でも近いものがあると思ったんです。ポップスのフィールドで戦うつもりでずっとバンドをやってきたので。もともと僕は洋楽の新譜がすごい大好きで、そういう音色とかアプローチとかアレンジみたいなものを自分たちの楽曲に積極的に取り入れてやっていくというスタンスだったんです。あくまでポップスの中でいろいろなエッジのある表現を吸収して、消化していくってことをやるうえで一番適した方なのかなという思いに至って。

──一緒にやってみてどうでした?

最初は僕も気を張って、「まったく違うものにされたくない」みたいな感覚で制作に取り組んでいたんですけど、細々とした分かれ道で蔦谷さんが選ぶ答えが僕とすごく近いものがあって。この人は信頼できる人だなと思いました。今ではめちゃくちゃ信頼を置いてますね。蔦谷さん自身、ポップなものだけでなく、エッジのある音も作れる人なんです。そういう意味でどっちもできるバンドでありたいという僕らが目指しているアーティスト像とすごくリンクするなと。

──今までは洋楽の新しいR&Bやヒップホップ、エレクトロニカを聴いて、それを取り込もうとしたときは自分たちで手法を考える必要があったわけですよね。そういうときはどういうふうにやっていたんですか?

それはホントに手探りですね。曲を聴いて機材を調べたり、メンバー同士でディスカッションしたりしながら。

──機材には相当こだわりがある?

機材は大好きですね。康介さんも好きだし、僕もかなり好きです。

──機材をいじりながらの試行錯誤みたいなもの自体が楽しい?

もちろん。そこに僕は音楽作りの醍醐味を感じていて、1音のロマンはすごく大事にしています。

──歌モノである限りは歌メロがあって歌詞があるというのが大前提ですけれど、歌メロと歌詞を作ることと、いろんなサウンドの細かいディテールの部分を仕上げていくのとどっちが性に合っていますか?

メロディに関しては曲の一部だと思っていて。なので、別個に考えられないというか。でも、どちらかといったら僕は音作りかな。音作りはやっぱり楽しい作業だから。