雨のパレード|枠を取り払い、自由に羽ばたいた第2の1stアルバム

雨のパレードのニューアルバム「BORDERLESS」が1月22日にリリースされた。

2019年1月に現在の3人編成となり、蔦谷好位置を共同プロデューサーに迎え制作したシングル「Ahead Ahead」を皮切りに、新曲を連続で配信リリースしてきた雨パレ。「BORDERLESS」は新たな試みが詰まった既発曲や、Dos Monosとのコラボ曲「惑星STRaNdING(ft. Dos Monos)」などを含む全11曲が収録され、バンドの幅広い音楽性が感じられる内容に仕上がっている。

蔦谷好位置やDos Monosとの制作に、雨パレの3人はどのような手応えを得たのか。メンバー全員に聞いた。

取材・文 / 天野史彬 撮影 / 映美

胸を張ってどこにでも属せるバンドでありたい

──新作「BORDERLESS」は雨のパレードが3人体制になって初のフルアルバムということになりますけど、蔦谷好位置さんを共同プロデューサーに迎えたことも含めて、バンドの変化がとてもポジティブに作用したアルバムになりましたね。皆さんの手応えはいかがですか?

福永浩平(Vo) 今まで表現したかったものにより近付けているという実感はあって。曲の作り方の手法も大きく変わって、やりたいことがやれるようになった状況です。今回は自信作になったと思います。

大澤実音穂(Dr) やっぱり3人になったことは結果的に、すごくポジティブな変化につながったと思うんですよね。前作よりも音楽性を更新できたし、Dos Monosや蔦谷さんのような人たちと一緒にやらせていただくことで、自分たちのよさも改めて見えてくるものがあって。「めっちゃ売れてほしい」と思える作品になりました。

山﨑康介(G, Syn) このアルバムで、自分たちの表現の幅をすごく広げることができたと思うんです。タイトルの「BORDERLESS」という言葉にふさわしいアルバムになったと思います。

雨のパレード

──これまでセッションを起点にしていた制作のやり方が、パソコンを使ったものに変わったり、ライブでも同期を取り入れるようになったりと、3人体制になったことで生まれた変化はこれまでのインタビューでも語っていましたね。そういった変化があったうえで、今回のアルバムの全体像として、事前に描いていた青写真はあったのでしょうか?

福永 いや……正直、3人になってからは必死で。新しいライブのやり方や楽曲制作のやり方を模索していく中で、蔦谷さんとの制作もあり、目まぐるしい日々を送っていたので、目の前の1曲1曲に魂を込めて、突き詰めるべきところをとことん突き詰めるということだけをずっとやっていたんですよね。なので、制作中は「これは、どうまとまるんだろう?」と自分たちでも思っていました。でも、結果的にすごくカラフルなアルバムになったと思うし、1曲目の「BORDELESS」ができて、この曲をアルバムの頭に置いたことによって作品の一体感がより出たような気はします。

──1曲目「BORDERLESS」はとてもスケールの大きな曲で、雨のパレードの新境地を感じさせますよね。歌詞の内容も力強く、肯定的で。

福永 「BORDERLESS」の歌詞は、「人って誰かに許してほしいのかな」という気持ちをもとに書いたんです。

──“許し”ですか。

福永 自分たちはこれまで活動してきた中で、どこの畑にも属せない感じがずっとあったんですよね。シティポップでもないし、ギターロックでもないし、J-POPでもないし、「自分たちはなんなんだろう?」という疑問が自分の中にも積もっていたんです。「ひと言では表現できないバンドだね」とずっと言われてきたし、「どう売っていけばいいのかわからない」とか、「誰と対バンさせればいいのかわからない」みたいなことをスタッフに言われたこともあったし。でも去年の中旬あたりに、昔からの知り合いのイベンターの方にライブを観ていただいたとき、「ロッキン(ROCK IN JAPAN FESTIVAL)もフジ(FUJI ROCK FESTIVAL)もサマソニ(SUMMER SONIC)も出られるバンドだね」と言われたんです。それがすごくうれしかったんですよね。

──「ひと言で表現できない」というのは、どんな場所にでも行けるということでもあった。

福永 そう、「胸を張ってどこにでも属せるバンドでありたい」という思いは、自分の中にずっとあったので。僕はその言葉を言われたとき、すごく許されたような気がしたんです。なので次は自分たちが、僕らの音楽を聴いてくれる人を許してあげられるといいなと思ったんです。どんな寄り道をしてもそれがアイデンティティになるし、それを「正しいんだよ」と肯定してあげられるような曲を書きたいなと思って。

──雨パレが表現するものとして“許し”という言葉は非常にしっくりきます。人が持つ歪さや惑いを、決して上から目線ではなく、許しているようなバンドだなと思うので。

福永 ありがとうございます。僕らは自分たちの音楽を多くの人に届けたいという気持ちがありますけど、届けるべきは、僕らなりの答えみたいなものだと思うんです。いろいろな経験を経て、伝えることができるものがあると思うので。

「Ahead Ahead」でつかんだ観客と一緒に盛り上がる感覚

──タイトル曲「BORDERLESS」の開けたサウンドは、どのようにして生まれていったんですか?

福永 曲自体は、蔦谷さんと一緒に作った最後の曲だったんですよね。「アルバムの表題曲にふさわしい曲ってどんな曲だろう?」とみんなで考えながら作りました。

──具体的に、蔦谷さんとはどんなお話をされたんですか?

福永 この「BORDERLESS」を作るまでに4曲、蔦谷さんと一緒に作らせてもらったんですけど、その4曲は原型をこちらから投げて、蔦谷さんと話し合いながら作っていったんです。でも5曲目に関しては「こんな曲、どうだろう?」という感じで、蔦谷さんが一度提案してくれたイメージがあって。その曲が、本当に僕らにピッタリの曲だったんですよね。蔦谷さんが、1年近く僕らと一緒に制作をしていく中で、「雨のパレードにはこういう曲をやってほしい」と常々おっしゃっていたニュアンスが入っていて。ただ、その段階ではすごくクールでカッコいいと思ったんですけど、蔦谷さんと一緒に作ってきた4曲の流れの最後の曲であることを考えたときに、「もっと開けていたものであったほうがいいのかな?」とも思うようになって。

──なるほど。

福永 去年の4月にシングルのリリースパーティで「Ahead Ahead」を初めてお客さんの前で演奏したとき、すごく盛り上がったんですよ。蔦谷さんがおっしゃっていたんですけど、「アーティストには2種類いて、お客さんを圧倒する人と、お客さんと一緒に盛り上がる人がいる」と。どちらも在り方としては正しいんですけど、初めて「Ahead Ahead」を演奏したとき、雨のパレードとして初めて、後者の感覚……お客さんと一緒に盛り上がる感覚を得たんです。それがすごく新鮮な経験でカルチャーショックだったんです。「これか!」みたいな。そこから、新しい種類のライブの楽しさを感じるようになって。それで、アルバムの1曲目は徹底的にみんなとつながることができる曲がいいなと思った。0から曲を考え直して、その結果として、「BORDERLESS」が生まれました。