新しい挑戦を詰め込んだ「You」

──福永さん自身もつらいときに音楽に助けられてきたんですか？

はい。改めて振り返ると思ったより音楽に助けられてきたなと実感しました。ここで倒れちゃったらダメだなと、踏ん張り続ける力をくれたというか。だから僕もそんな曲を書きたくて。今回「You」の制作に至ったのは漠然と「なんかやっと過去の経験を書けるような気がする」と思ったからなんですよね。それで挑戦してみたけど、やっぱり「田園」ぐらいストレートに言えるようになるまではまだ遠いなと思いました。でも曲も歌詞も、今自分たちができる最善のものを全力で作れたと思っています。

──メンバーには、歌詞に込めた福永さんの思いを伝えたのでしょうか？

伝えてないです。僕あんまり言わないんですよ（笑）。聴いてくれるみんなと同じように、メンバーにも歌詞から感じてほしいなっていうところがあって。言葉で補足をするよりも曲を聴いてほしいんです。読み取ってほしいとまでは言わないですけど、そこから感じたものだけでいいというか。

──制作はどのように進めていったのでしょうか？

これまでは始めにセッションでオケを作ることが多かったのですが、今回は初めてサビのメロディから作るっていう新しい挑戦をしました。このほかにもいくつか挑戦をしていて。その1つが間奏らしい間奏を作らないということ。自分の好きな洋楽アーティストの楽曲を聴いていたときに、ふと「あ、間奏ないなこの曲」って思ったりすることが何度かあったので、今回自分たちもチャレンジしてみました。間奏を抜いたことによってサビが今までよりも多く入ったりだとか、サビが繰り返されるような展開になったりだとか、自分たちの中でまた新たな構成の楽曲ができたと思います。

──AメロやBメロでリズムを刻んでいるのはフィンガースナップの音ですか？

そうです。サビ以外はみんなで指パッチンの音を録ってリズムとして入れました。あとは、ジャック・ガラットの楽曲に攻めたベースの音が入っているのを最近聴いて、それに影響を受けて2番のAメロにベースを「ファンファン」って鳴らして入れました。コーラスも14テイクも重ねるくらいこだわったり、Dave Smith InstrumentsのProphet '08を使ってピッチを揺らした音を入れたりと、やりたいことをいっぱいできましたね。攻めたサウンドになってると思います。

もっとたくさんの人を振り向かせたい

──「You」の歌詞には福永さんの実体験が入っているということですが、カップリングの2曲も誰かに向けて歌っているような、ストーリー性のある歌詞が特徴ですね。

カップリングの2曲はタイアップということもあり、テーマを意識しながら最高のものを作ろうと思いました。そのテーマがストーリー性のある歌詞につながったのかもしれないです。

──タイアップ曲を書き下ろすのは今回が初めてですよね。

そうです。今回初めてタイアップ曲を制作してみて、テーマがあるとすごく歌詞が書きやすいんだなっていうことに気付きました。「自由すぎると、人は何をしていいかわからなくなる」っていうのを本で読んだことがあるんですけど、ある程度のルールがある状態で制作することは、僕の性に合っているなと。スムーズにできました。

──これまでと比べて、楽曲を制作する際の気持ちは変わりましたか？

タイアップはもちろん曲が主役ではないですから、そういう意味では変わりましたね。「morning」は深町なかさん原作のテレビアニメ「ほのぼのログ」のテーマソングとして書き下ろしたんですけど、アニメを引き立てるような歌詞に仕上げました。「In your sense」はJ-WAVEのキャンペーンソングとして制作したんですけど、そのキャンペーンは雨の日に特定のお店で割引やプレゼントなどを受けられる「Happy Rainy J-WAVE」という面白いもので。「雨の日だからこそ感じられることってなんだろう」と思って書きました。

──この2曲には誰かに向けた優しい気持ちが描かれていて、福永さんの新たな一面が感じ取れました。

間口が広い歌詞だと思うので、この曲をきっかけにまた新しいリスナーと出会えたらいいなと思いますね。メジャーデビューして、今までよりもっとたくさんの人を振り向かせたい思いが強くあるので、多くの人を意識してるっていうところがあるかもしれません。

──その気持ちが歌詞に出ているんですね。

そうですね。前作「New generation」では「時代を変えたい」ということを歌っていて、もちろんその気持ちはずっと根本にあるんですけどね。雨のパレードのテーマの1つに「新しいこと、新鮮味を感じることを常にし続けていく」っていうものがあるので、次もまた新しいと感じてもらえるような曲を作りたいですね。