音楽ナタリー Power Push - amazarashi

amazarashi 5周年の軌跡と秋田ひろむが見据える未来

聴いててしんどいアルバムになった

──「世界収束二一一六」の仕上がりについての率直な感想を聞かせてください。

聴いててしんどいアルバムになりました。自分が言いたかったことを全部詰め込んだアルバムができたと思います。

──アルバムの全体像に関して、制作前の段階で思い描いていたのはどんなことでしたか?

amazarashiのライブの様子。(写真提供:Sony Music Associated Records)

初めは純粋にいい曲が溜まってきたからそろそろアルバム作ろうかという感じでした。

──今から100年後を想起させる“二一一六”という数字が印象的なアルバムタイトルに込めた思いを教えてください。

100年後はたぶん、僕らの次の世代だと思うんですけど、手は届かないけれど間接的に関わっている少し近い未来、という意味合いで付けました。

──オープニングを飾る「タクシードライバー」はピアノの美しい音色が印象的なナンバーで、現実にあふれるさまざまな暗い事柄が歌詞には登場します。制作の起点となるきっかけは何かあったのでしょうか? また「長いトンネルを抜け、夜の向こうへ連れてって」と希望を託す対象となった“タクシードライバー”は、秋田さんの中ではどんなものを暗示する存在なのでしょうか?

東京でタクシーに乗ったときに運転手と豊川(真奈美 / Key)が政治の話を延々としてて、それが印象に残っていたので曲にしました。生活者として熱を持って何かを世に問うことって最近なかなかないなと思っていて、運転手や僕らが感じる世の中の違和感とか、都会と田舎の対比や僕自身の生活のこととかをない交ぜにした歌です。今を生きる生活者の象徴としての“タクシードライバー”です。

──続いて「多数決」はスリリングなアレンジのピアノロックナンバーです。多数決の不条理さを歌うこの曲でもっとも伝えたかったメッセージはなんでしょう? また力強い歌声が特に印象的だったので、ボーカルに関してのこだわりを教えてください。

多様性を認めてほしいっていうのが根元にある曲です。画一的な価値観でしか生きられない、ちょっとはみ出すと生きづらいといった息苦しさに対して、それは違うんじゃないかと思って作りました。ボーカルに関しては今回エディットを控えめにして、むき出しな感じを意識しました。

──「多数決」のミュージックビデオの仕上がりに関しての感想を聞かせてください。また実写パートへのご出演はいかがでしたか?

やっぱりYKBXさんはすごいです。映像的なカッコよさはもちろんですし、キャラクターやデザインが何を比喩してるのかと考えながら完成したMVを観ると、とても深いなと思います。撮影に関してはあまり慣れてないので、これでいいのかなと思いながらやってました。撮影場所が地下深くで、階段が長くて足がパンパンになりました。

アニメタイアップがもたらした影響

──「季節は次々死んでいく」がアニメ「東京喰種トーキョーグール√A」のエンディングテーマ、「スピードと摩擦」がアニメ「乱歩奇譚 Game of Laplace」のオープニングテーマにそれぞれ採用されて感じたことを教えてください。

反響が大きくて、アニメってすごいんだなと思いました。台湾でフェスに出演できたのもこれらのタイアップのおかげなので感謝してます。活動しやすさも活動の幅も広がったと思います。

──ポエトリーリーディング曲の「分岐」にちなんでお伺いします。amazarashiの活動の中で重要な分岐点はありましたか?

amazarashiをやるかやらないかが分岐点だったと思います。7年前くらいでしょうか。もう音楽を辞めるっていう選択肢もあったんですけど、むしろ状況的に音楽なんてやってる場合じゃなかったんですけど、それでも続けててよかったです。今のところは。

──「百年経ったら」は静かなオープニングから激しく展開していくミディアムナンバーです。歌詞は地球から出ていった者に手を振る主人公が、荒れた世界で生きることを引き受ける覚悟を持っているような内容になっていました。これはどのような思いでつづられた曲なのでしょうか? またアルバムタイトルにも通ずる“百年”にはどんな希望が込められていますか?

科学が発達して、SFみたいな時代になったなって最近思ってて。でも僕の住む青森では昔ながらの田舎の風景がある。それらを対比しつつ、僕らの人間性が合理主義にないがしろにされなければいいなと思いながら作りました。「百年経ったら起こして」っていうのはもう投げやりな感じです。諦めてる感じで、死なせてくれと言ってるのと同じです。

ニューアルバム「世界収束二一一六」/ 2016年2月24日発売 / Sony Music Associated Records
初回限定盤A [CD+DVD+書籍] / 3780円 / AICL-3068~9
初回限定盤B [CD+グッズ] / 3780円 / AICL-3071~2
通常盤 [CD] / 3000円 / AICL-3070
CD収録曲
  1. タクシードライバー
  2. 多数決
  3. 季節は次々死んでいく
  4. 分岐
  5. 百年経ったら
  6. ライフイズビューティフル
  7. 吐きそうだ
  8. しらふ
  9. スピードと摩擦
  10. エンディングテーマ
  11. 花は誰かの死体に咲く
  12. 収束
初回限定盤A DVD収録内容
amazarashi 5th anniversary live 3D edition 2015.08.16
  • 後期衝動
  • 季節は次々死んでいく
  • ヒガシズム
  • 冷凍睡眠
  • スターライト
MV
  • 多数決
amazarashi 5th anniversary Live Tour 2016「世界分岐二〇一六」
2016年1月17日(日)北海道 Zepp Sapporo(※公演終了)
2016年1月24日(日)愛知県 Zepp Nagoya(※公演終了)
2016年1月31日(日)福岡県 Zepp Fukuoka(※公演終了)
2016年2月20日(土)広島県 広島CLUB QUATTRO(※公演終了)
2016年2月21日(日)大阪府 Zepp Namba(※公演終了)
2016年2月27日(土)東京都 Zepp Tokyo
2016年2月28日(日)東京都 Zepp Tokyo
2016年3月6日(日)東京都 中野サンプラザホール
amazarashi LIVE 360°
2016年10月15日(土)千葉県 幕張イベントホール
amazarashi(アマザラシ)

青森県むつ市在住の秋田ひろむを中心としたバンド。2009年12月に青森県内500枚限定の詩集付きミニアルバム「0.」を、翌2010年2月にその全国盤となる「0.6」をリリースした。その後2010年6月に「爆弾の作り方」をSony Music Associated Recordsから発表。アーティスト本人の露出がないまま、口コミを中心に話題を集めていき、2011年11月には初のフルアルバム「千年幸福論」を発表した。2013年8月に「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO」に初出演。2014年9月にインディーズ時代の「あまざらし」名義でライブ「あまざらし プレミアムライブ 千分の一夜物語『スターライト』」を開催し、秋田ひろむの書き下ろし小説の朗読とストリングスを加えた編成でのライブを行った。10月にリリースした約3年ぶりのフルアルバム「夕日信仰ヒガシズム」を携えて、翌11月より全国ツアーを行い各地盛況に収めた。2015年2月に発表した1stシングル「季節は次々死んでいく」の表題曲がアニメ「東京喰種トーキョーグール√A(ルートエー)」の主題歌となり、3月には台湾にて初の海外ライブを実施。8月には東京・豊洲PITにて3D映像を駆使したアニバーサリーライブを行い、12月末にロックフェス「COUNTDOWN JAPAN 15/16」に出演した。2016年1月に全国ツアー「amazarashi 5th anniversary Live Tour 2016『世界分岐二〇一六』」をスタートさせ、2月にニューアルバム「世界収束二一一六」をリリース。10月には千葉・幕張イベントホールにて360°全方位から映像を投影するという自身初の試みとなるワンマンライブ「amazarashi LIVE 360°」を開催する。