ライブをやるようになって、リスナーの顔が見えてきた

──今回、全体を通して感じたことなのですが、楽曲たちが最終的に伝える希望の彩度がより明確に強まっている印象があります。歌詞やサウンドを作り上げていく中で、そこを意識はしていたのでしょうか？

意識してそうしたわけではないのですが、曲を並べて聴いてそう思いました。僕の今の気持ちが明るい方向へ向いているからだと思います。

──「君の番だよ」というラストのフレーズが胸を打つ「ナガルナガル」がその明るさを象徴していますが、歌詞に関しても外に開けた内容がこれまでより多い気がします。そうなった理由は？

ライブをやるようになって、リスナーの顔が見えてきたことが大きいと思います。あとamazarashiに関わる人も増えてきたので、それも関係あるのかもしれません。

──また、秋田さんの歌声もこれまで以上に力強く、無垢で、荒々しく……曲ごとに表情豊かに響いてきました。多彩なコーラスが散りばめられてもいます。本作に対し、ボーカリストとしてどう向き合いましたか？

僕は歌とか自分の声にコンプレックスが凄いあったんですけど、最近開き直れた感があって、楽しんで歌えるようになりました。コーラスワークはアレンジャーの出羽君がとてもうまいので、今回多めですね。印象が鮮やかになったと思います。

「祈り」はちゃんと完成させて発表したかった

──本作の中でご自身としても新たなトライができたと感じている楽曲はありますか？

「ハルルソラ」が割と今までにない曲調です。「ナモナキヒト」もフォークっぽい曲は今までもあったんですが、それで優しい感じを出せたのは自分でうまくできたと思います。

──疾走感が気持ちいい「ハルルソラ」からは、「変わらないものが変わらなければいい」という、些細だけど実は大きな真実に気付くことで日々を真っ直ぐ生きていける

──そんなメッセージを受け取りました。秋田さんがこの曲に込めた思いとは？

去年の震災があって、原発事故があって、原発とその関連施設が多い青森では、その怖さがより実感として身につまされる事が増えた気がします。むつ市の晴れた日なんかはとても気持ちよくて奇麗なんですけど、この自然とか風景をリスクとして差し出す程の恩恵が果たしてどれほどのものだ？と思ってこの曲を作りました。

──昨年の震災後に発表された詩に曲をつけた「祈り」も収録されています。当時、どのような気持ちでこの詩を書き、また、そこに曲を付けるという作業、そしてそれを今このタイミングで音源にすることに対してどう感じていますか？

曲自体ははじめから付いていたんですけど、どんなに急いでも世に出すまでにはタイムラグができてしまうので、それだったらちゃんと完成させて発表しようと思っていました。はじめは大切な人の無事を祈る歌だったんですが、後半の詩を加えることで大きな視点の祈りになればいいなと思って作りました。

──本作のリリース後には、東名阪に追加の福岡を加えた4公演のツアーがスタートします。そのタイトルに「アポロジー」からの一節「ごめんなさい ちゃんといえるかな」を引用したのはなぜですか？

今回のアルバムはリスナーを意識した曲が多いし、ライブもその方向に寄るだろうなと思ったので、リスナーへのメッセージ色が強い「アポロジー」から付けました。

──これまでに5本のライブを行ったことで見えてきたamazarashiのライブスタイルとはどのようなものだと思いますか？

楽曲のイメージの共有でしょうか。それだけにずっとこだわるつもりはないですけど、今はこの方向性を追求したいです。曲を楽しむ自由度は減りますけど、その分深さは増すと思います。

──では、ライブでもっとも大切にしていることはなんですか？

気負わないこと、ちゃんと歌うことです。

──最後に夏のツアーを楽しみにしているすべてのファンへメッセージをお願いします。

以前のアルバムの曲も含めて、amazarashiらしいラブソングが皆さんをゴールとして、綺麗に着地できたらと思っています。楽しんで下さい。