ナタリー PowerPush - amazarashi

進化と希望を提示した最新作「ラブソング」

前作「千年幸福論」からわずか7カ月で完成したニューアルバム「ラブソング」。そこでamazarashiはこれまで同様、混沌とした日常に散らばる絶望の中からわずかなの望みを見出そうと激情をかき鳴らしている。だが、本作に収められた楽曲が描き出す希望の光は、過去の作品群に比べて圧倒的に彩度を増した。自らの内に閉じ込めようとしていたさまざまな思いが外に向けて大きく放たれてもいる。つぶやくように吐き出していた秋田ひろむの歌声は格段に表現力を増し、多彩な感情を響かせる。そう。本作はあらゆる点においてamazarashiというバンドの進化を告げているのだ。

秋田ひろむへの3度目のメールインタビューとなる今回は、本作に満ちているバンドとしての変化の理由を中心に、アルバムの全体像について回答してもらった。

取材・文 / もりひでゆき

“多すぎるラブソング”への皮肉

──あまりにも短いスパンでニューアルバムが到着したことに驚きました。まずはamazarashiの制作ペースについて教えてください。曲ができなくて悶々としてしまうことはありませんか?

曲を作るペースは遅いほうだと思いますが、定期的に作るようにしています。曲ができないときはあります。そういうときは諦めるか、詩だけちょこちょこ書き溜めたりしています。

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──制作現場はどのような空気感なのでしょうか?

割と和やかです。ピリピリした雰囲気は嫌いです。

──アルバム「ラブソング」で伝えたかったテーマや全体像に関して、どのようなビジョンを思い描いていましたか?

最初はアルバムを出すつもりもなく曲作りしていて、「ラブソング」ができてから、それまで作ってきた曲が、一つの大きなテーマに括れるなと気付きました。

──アルバムの方向性を決定づけた楽曲と、その曲の役割を教えてください。

「ラブソング」と「ナモナキヒト」です。「ラブソング」は強い曲ですし、普段無意識に考えていたことを歌にできたので、アルバムタイトル曲やリード曲とか、次のリリースの中心になるだろうと思っていました。「ナモナキヒト」は渋公ライブが終わってからできた曲で、自分でとても好きな曲になったので早めに出したいと思っていました。世界に対しての皮肉と感謝、裏表が見えて今回のアルバムが作品らしくなった気がします。

──アルバムのオープニングを飾る「ラブソング」は、世にあふれる“ラブソング”とは一線を画す内容が実にamazarashiらしい楽曲だと思います。これはどんな思いから生まれたのでしょうか?

街中とかテレビとかで耳にする曲のほとんどがラブソングですよね。なんか多すぎて、ありがたみがなくなってきている気がして、それに対しての皮肉です。

──では、「ラブソング」をアルバムタイトルにした理由も教えてください。

「ラブソング」という曲は皮肉ですが、本来の意味での愛とか、それに付随する感謝とか、そういう曲が多かったのでタイトルにしました。

復讐心で歌っていても気持ちが晴れるわけじゃない

──前作に引き続き、「セビロニハナ」「アイスクリーム」「カラス」というポエトリーリーディング楽曲が収録されています。前回のメールインタビューでは、ポエトリー曲はアルバムの流れを整えるため最後にまとめて作ったとおっしゃっていましたが、今回は?

今回も最後に作りました。全体の流れと、それぞれのポエトリーリーディングから次の曲への流れを意識して作りました。良くできてると思います。

──歌ものとポエトリー楽曲、制作する上での気持ちの違いで一番大きいのはどのようなところでしょうか? また、それぞれで言葉選びなど、テクニック的に意識するところはありますか?

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amazarashiの曲は字数が多いですけど、それでも楽曲の限界があるので、言葉の取捨選択はある程度の制限の中でやっています。ポエトリーリーディングの場合は、それがよりピッタリくる言葉探しにベクトルが向くので、自由度はあると思います。どちらもそれぞれの面白さがあると思います。

──「ごめんなさい、ちゃんといえるかな?」というフレーズが強烈なインパクトを放つ「アポロジー」。この曲が生まれた背景を教えてください。

今までのamazarashiの歌の原動力は恨みつらみが多かったんですけど、僕自身そういう気持ちが薄れてきた感じがあって、でも日々もやもやしながら生きているのは以前と同じで、復讐心で歌っていても気持ちが晴れるわけじゃないと気付いたんです。そこから一歩踏み出すための歌だと思います。

ニューアルバム「ラブソング」/ 2012年6月13日発売 / Sony Music Associated Records

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  • 初回限定盤[CD] / 2800円 / AICL-2380 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤[CD] / 2500円 / AICL-2381 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. ラブソング
  2. ナガルナガル
  3. セビロニハナ
  4. ナモナキヒト
  5. ハレルヤ
  6. アイスクリーム
  7. アポロジー
  8. カラス
  9. ハルルソラ
  10. 祈り
初回限定盤仕様
  • スリーブ仕様
  • CDエクストラ仕様(祈りフラッシュコンテンツ)
  • エクスクルーシブID封入(amazarashi TOUR 2012「ごめんなさい ちゃんといえるかな」7月8日Zepp DiverCity TOKYO Ustream生中継観覧ID)
amazarashi LIVE TOUR 2012
「ごめんなさい ちゃんといえるかな」
  • 2012年6月30日(土)大阪府 大阪BIG CAT
    OPEN 17:00 / START 18:00
  • 2012年7月1日(日)愛知県 名古屋E.L.L.
    OPEN 17:00 / START 18:00
  • 2012年7月8日(日)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
    OPEN 17:00 / START 18:00
  • 2012年8月10日(金)福岡県 福岡イムズホール
    OPEN 18:30 / START 19:00
amazarashi(あまざらし)

青森県むつ市在住の秋田ひろむを中心としたバンド。青森県内500枚限定の詩集付きミニアルバム「0.」を2009年12月に発表し、翌2010年2月にその全国盤「0.6」をリリース。その後ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズへ移籍し、2010年6月に「爆弾の作り方」を発表。アーティスト本人の露出がないまま、口コミを中心に話題を集めていく。2011年11月には初のフルアルバム「千年幸福論」をリリースした。2012年1月に渋谷公会堂で開催した、アルバム発売記念のワンマンライブのチケットはソールドアウト。同年6月、最新作となるニューアルバム「ラブソング」を発表した。