3分のMVを作るために作った曲
──続いて、最初に完成したという「3min」はニューウェイブファンク的なテイストが感じられます。
「Sun Dance」を作るにあたって、プロデューサーの玉井(健二)さんと「80年代あたりのサウンドを、今のポップスに昇華したようなダンスナンバーを作りたい」という話をしていて。特にこの「3min」や「Monochrome Syndrome」はその色が濃いかもしれません。あと、先ほど「3min」は8月のファンクラブツアーで初披露したというお話をしましたけれど、これにはそのファンクラブツアーで披露するアップテンポな曲が足りないから「先回りして1曲作っちゃおう」という事情が(笑)。
──実用優先で(笑)。
ついでに言うと「Monochrome Syndrome」も、やっぱり「soleil et pluie」のツアーでアップテンポの曲が足りないから先に作ったんです。もちろん、どちらも“太陽”のアルバムに入れる前提で。
──「soleil et pluie」のツアーではどちらの曲も序盤で披露されましたよね。のっけからびっくりしましたし、会場のボルテージも上がっていました。
よかったです。で、「3min」はそもそも「3分間で世界一周」というテーマでミュージックビデオを作りたいというアイデアが起点になっていて。2018年はアジアツアーやイベント、あるいは撮影で海外に行く機会が多くなりそうな年だったので、海外に行くたびに当地の街並みとそこを歩く私の後ろ姿を撮って、それらをつなげて3分のMVにしたら面白いんじゃないかって。だから、MVを作るために作った曲です(笑)。
──言い切りましたね(笑)。
実際、まだ曲もないのに映像だけは撮ったりしていて。だから「Sun Dance」は、Aimerチームみんながわりと楽しみながら作った印象が強いですね。ただ、ちょっとだけ残念なのが、「3min」は曲自体は3分ぴったりで終わるんですけど、例えばiPhoneで再生すると曲間もカウントしてしまうので数秒オーバーしちゃうんです。
──あ、僕の家のCDプレーヤーも3分3秒でした。でも3分でサクッと終わるシンプルな曲って、Aimerさんのディスコグラフィにはなかったものですよね。
そうですね。私の曲には5分を超えるものもざらにあるし、その中で3分で終わるアッパーなナンバーというのはライブで歌うのにもぴったりだなって。レコーディングでも、この曲はそんなに悩まなかったかな。さっきの「We Two」とは逆に、「3min」はさらっと歌っても私の中ではハマるというか。言葉で説明するのが難しいんですけど、リズムにしてもそうだし、例えば語尾をちょっとブルージーに処理しても嫌味にならないというか、曲にぴったり合うので歌いやすかったですね。
──ブラックミュージックと相性がよかった?
ああ、そうかも。だから歌いやすかったのかもしれない。昔はよくブルースとかも聴いてましたし。
続「カタオモイ」的な恋愛ギターポップ
──次の「コイワズライ」から、雰囲気が変わりますね。
「コイワズライ」は、恋愛リアリティ番組「白雪とオオカミくんには騙されない♥」の主題歌のタイアップが決まってから書き下ろしました。この曲は、タイトルから察せられるかもしれませんけど、「カタオモイ」(アルバム「daydream」の収録曲)を意識して作ったんです。というより、実はタイアップが決まる以前から「カタオモイ」に続くギターポップ的な曲を作ろうという思惑が水面下であって。ただ、いくつかデモを作ってみたもののいまいちしっくりこなくて、宙ぶらりんになっていたんです。そこに「オオカミくん」のタイアップのお話をいただいて、これはぴったりだと思ったんです。
──と言いますと?
「カタオモイ」はアルバム曲にも関わらず、いろんな人に聴いてもらったりコピーしてもらったりしているんですけど、特にティーンの子たちからの支持が厚いような印象があって。それがまさに「オオカミくん」の視聴者層と被るんじゃないかなと。だから歌詞の内容も、恋愛というテーマを前面に出して、振り切ってますね。
──もともとAimerさんの作詞曲にラブソングは少ないですよね。
そうなんです。でも「コイワズライ」は振り切りやすかったですね。なにしろ曲がいいので。
──作曲はAimerさん楽曲ではおなじみの飛内将大さん。ちなみに先の「3min」も飛内さんの曲でした。
「コイワズライ」はもう、飛内さんの本領発揮みたいな。曲の構造も面白くて、例えばサビのあとに同じフレーズを繰り返すブロックでは、その構成だからこそ伝えたい言葉が浮かびやすかったですし。歌詞を書き上げたときは、「うん、なかなかいいものができたんじゃないか」という手応えはありましたね。一方、歌はちょっと悩んだんですけど、玉井さんと相談して「恋愛に振り切っているからこそ、Aimerは一歩引いて、少し客観的に歌おう」と。つまり歌詞に寄り添ってエモーショナルに歌うと重くなりすぎちゃうから、あえてフラットに歌いました。
──この「コイワズライ」から、「花びらたちのマーチ」(2019年1月発売の16thシングルに収録)、そして「思い出は綺麗で」(2018年9月発売の15thシングルに収録)までの流れも美しいですね。
ありがとうございます。ここに持ってきた3曲は、制作した時期はバラバラだけど、全部「太陽」のアルバムに入れることを念頭に置いて作っていたので、歌詞の着地の仕方にしても足並みがそろったかなと。要は、今までだったら悲しいほうに着地しがちだったんですけど、そうじゃなくて。別れを歌うにしても前向きな別れだったり、あるいは別れに対して悲しみよりも感謝が上回るような気持ちだったり、そういうポジティブなメッセージ性を意識して書いてたんです。
──「花びらたちのマーチ」のインタビューではそんなことおくびにも出さなかったのに(参照:Aimer「I beg you / 花びらたちのマーチ / Sailing」インタビュー)。
アルバムができるまで、ずっと隠してたんです(笑)。
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モノクロの世界から抜け出して
- Aimer「Sun Dance & Penny Rain」
- 2019年4月10日発売 / SME Records
-
完全生産限定盤
[CD2枚組+Blu-ray2枚組]
9720円 / SECL-2409~13 -
初回限定盤A
[CD2枚組+Blu-ray]
5184円 / SECL-2414~6 -
初回限定盤B
[CD2枚組+DVD]
4752円 / SECL-2417~9 -
配信
- 「Sun Dance」収録曲
-
- soleil
- ONE
- We Two
- 3min
- コイワズライ
- 花びらたちのマーチ
- 思い出は奇麗で
- Monochrome Syndrome
- SUN DANCE
- One -epilogue-
- 「Penny Rain」収録曲
-
- pluie
- I beg you
- Black Bird
- Sailing
- 眩いばかり
- Stand By You
- Ref:rain
- i-mage <in/AR>
- 花の唄
- April Showers
- 完全生産限定盤 Blu-ray 収録内容
-
DISC 1
- I beg you
- Black Bird(Movie ver.)
- zero
- ONE
- 眩いばかり
- 思い出は奇麗で(Father's day edit)
- Ref:rain
- 花びらたちのマーチ
- 歌鳥風月
- 花の唄
DISC 2
- soleil(soleil et pluie)
- ONE(soleil et pluie)
- Monochrome Syndrome(soleil et pluie)
- Believe Be:leave(soleil et pluie)
- 3min(soleil et pluie)
- あなたに出会わなければ~夏雪冬花~(soleil et pluie)
- 今日から思い出 Evergreen ver.(soleil et pluie)
- カタオモイ(soleil et pluie)
- 思い出は奇麗で(soleil et pluie)
- Ref:rain(soleil et pluie)
- 眩いばかり(soleil et pluie)
- 花の唄(soleil et pluie)
- Black Bird(soleil et pluie)
- After Rain -Scarlet ver.-(soleil et pluie)
- Hz(soleil et pluie)
- 蝶々結び(soleil et pluie)
- 初回限定盤A Blu-ray / 初回限定盤B DVD 収録内容
-
- I beg you
- Black Bird(Movie ver.)
- zero
- ONE
- 眩いばかり
- 思い出は奇麗で(Father's day edit)
- Ref:rain
- 花びらたちのマーチ
- 歌鳥風月
- 花の唄
- Aimer「Sun Dance」
- 2019年4月10日発売 / SME Records
-
通常盤 [CD]
2160円 / SECL-2420
- 収録曲
-
- soleil
- ONE
- We Two
- 3min
- コイワズライ
- 花びらたちのマーチ
- 思い出は奇麗で
- Monochrome Syndrome
- SUN DANCE
- One -epilogue-
- Aimer「Penny Rain」
- 2019年4月10日発売 / SME Records
-
通常盤 [CD]
2160円 / SECL-2421
- 収録曲
-
- pluie
- I beg you
- Black Bird
- Sailing
- 眩いばかり
- Stand By You
- Ref:rain
- i-mage
- 花の唄
- April Showers
- Aimer(エメ)
- 女性シンガーソングライター。幼少期よりピアノやギターでの作曲や英語での作詞を始め、15歳のとき声が一切出なくなるというアクシデントを経験し、それがきっかけとなり独特の歌声を獲得する。2011年から音楽活動を本格化させ、同年9月にシングル「六等星の夜 / 悲しみはオーロラに / TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR」でメジャーデビューを果たした。2014年6月に2ndアルバム「Midnight Sun」と、澤野弘之とのコラボレーションアルバム「UnChild」を同時発売し、同年9月には菅野よう子、青葉市子らが参加する新作「誰か、海を。」を発表した。2016年7月にONE OK ROCKのTaka(Vo)と凛として時雨のTK(Vo, G)が提供およびプロデュースした楽曲を収めた両A面シングル「insane dream / us」、8月にRADWIMPSの野田洋次郎(Vo, G)制作の「蝶々結び」を収めたシングルをリリース。9月にTaka、野田のほか、andropの内澤崇仁(Vo, G)、スキマスイッチが楽曲提供およびプロデュースをした新曲を含むアルバム「daydream」を発表し話題を集める。2017年5月にベストアルバム「BEST SELECTION "blanc"」と「BEST SELECTION "noir"」を同時リリース。8月に初の東京・日本武道館単独公演を行い、13000人を動員した。2018年2月にCocco提供の「眩いばかり」を含むニューシングル「Ref:rain / 眩いばかり」を、9月に映画「累-かさね-」の主題歌「Black Bird」を収録したシングルをリリース。2019年1月に劇場版「『Fate/stay night[Heaven's Feel]』II.lost butterfly」の主題歌「I beg you」を収めたトリプルA面シングルを発表した。4月に2年半ぶりとなるオリジナルアルバム「Sun Dance」「Penny Rain」を2枚同時リリース。
2019年4月10日更新