ナタリー PowerPush - Aimer
聴く人の心に寄り添いたい 優しい願いを込めた初アルバム
ハッキリした言葉を選んで書いた「星屑ビーナス」
──次は「星屑ビーナス」。歌詞にストレートな表現が多くて、思いがダイレクトに伝わってくる感じがしましたし、言葉の強さを感じました。
「泣き顔なんか もう見たくないでしょ?」とか、今おっしゃっていただいたようにストレートな表現が多い曲です。これまではラブソングを書くときは何かに例えたりすることが多かったんですけど、この曲ではハッキリとした言葉を選んで書いてみようと思ったんです。大切な人と別れるときは泣き顔じゃなくて、最後には笑顔を見てもらいたいという健気な気持ちを表現しました。「見たくないでしょ?」とか、相手に語りかける言葉を使っていますので、目の前にいる相手に語りかけるような気持ちで歌っています。
──「雪の降る街」は海外ドラマ「ゴースト ~天国からのささやき シーズン3」のエンディングテーマにも起用された曲ですね。
はい。3枚目のシングルが“冬”をテーマにした1枚だったんですが、その中の1曲でした。個人的に冬という季節がすごく好きなんです。キレイな雪が降ったり、吐く息が白くなったりするのがいいなあって思うんですけど、どこか寂しさも感じるんです。そういう相対する思いを素直に表現しました。冬の寒さって情緒があるというか、寂しさもありますよね。寒いからこそ、温かさが恋しくなるというのもありますし。
受け取る人によって印象が違っていたらいい
──続く「冬のダイヤモンド」も「雪の降る街」と同じシングルに収録されていましたし、タイトルにも“冬”という言葉が使われていますから……。
はい、これも冬をテーマにした曲です。最初に冬の夜空の星をつなげた“冬のダイヤモンド”という言葉が浮かんで、そこから歌詞を書いていきました。“冬のダイヤモンド”ってすごく不格好な六角形なんです。でも、それをダイヤモンドと呼ぼうとする人間の心というのは、すごく悲しいというか、寂しいものだと思ったので、そこに人それぞれの存在意義や、そういうものを探そうとする気持ちをシンクロさせて書いてみました。
──いびつな六角形だけど、自分の中で修正を加えて“ダイヤモンド”に見立てるというのは、孤独感や寂しさを抱えている人間の習性なのかもしれないですね。
そう思います。いっぱい星がある中で、不格好なものをあえてダイヤモンドと呼ぼうと思ったのは、その形に何か意味があるということを、自分自身にも言い聞かせるような気持ちを持ちつつ、誰かに託したかったんじゃないでしょうか。
──考えてみれば、冬のダイヤモンドに限らず、たくさんの星座も昔の人が想像力を働かせて星同士を結びつけて名付けたわけですから。
そうなんですよね。おっしゃったように、人間は星座とか一見そうは見えないものを形づけたりしてきました。夜空に広がるたくさんの星に名前を付けたり、星座を作ったりするのは、地球上にたくさんの人間がいるけど、自分とは一体なんだろう?と心の中で思っていて、星と人間を重ね合わせて、星に名前を付けたりしたんじゃないのかなって思うんです。
──次の曲も星の歌です。
はい、「六等星の夜」です。“終わらない夜”と“輝く光”とか、意識的にたくさんの真逆の意味の言葉を歌詞に盛り込みました。ただ悲しいだけの曲だったり、逆に希望に満ちあふれている曲だったり、どちらかに偏った曲にしたくなかったんです。対照的な言葉を使うことで、聴いた人によって解釈が異なる曲であってほしいと思って作りました。ひとつの出来事も、どの角度から見るかによって、悲しいことだったり、喜ばしいことだったりするわけです。ですから、この曲も受け取る人によって印象が違っていたらいいなって思うんです。
──そしてラストは「TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR」ですね。
この曲は小さい頃から好きでした。最初は童謡として馴染みがあった曲なんですけど。
──「キラキラ星」ですね。
はい。原曲の歌詞に「How I wonder what you are」、訳すると「あなたは一体何者なの?」って問いかけているフレーズがあって、すごく奥深いなって思ったんです。それに、「冬のダイヤモンド」や「六等星の夜」、「星屑ビーナス」など、星にまつわる歌が多いですから、アルバムのテーマソングにこの曲がピッタリだなって思いました。アルバムのタイトルは「Sleepless Nights」ですけど、この曲を聴いて、みなさんが心地よく眠れたらいいなって。
ニューアルバム「Sleepless Nights」2012年10月3日発売 DefSTAR Records
- 「Sleepless Nights」
- 「Sleepless Nights」初回限定盤 [CD+DVD] 3500円 / DFCL-1930~1931
- 「Sleepless Nights」通常盤 [CD] 3059円 / DFCL-1932
収録曲
- TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR -prologue-
- 夜行列車~nothing to lose~
- あなたに出会わなければ~夏雪冬花~
- 笑顔
- Re:pray
- 悲しみはオーロラに(Restarred by Takagi Masakatsu)
- 寂しくて眠れない夜は
- AM02:00
- 星屑ビーナス
- 雪の降る街
- 冬のダイヤモンド(Re-echoed by Genki Rockets)
- 六等星の夜
- TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR
初回限定盤DVD収録内容
- Re:pray
- 雪の降る街
- あなたに出会わなければ~夏雪冬花~
- 六等星の夜~NO.6 SPECIAL EDIT~
Aimer(えめ)
女性シンガーソングライター。幼少期より両親の影響で音楽に親しみ、ピアノやギターでの作曲や英語での作詞を始める。15歳のとき、声が一切出なくなるアクシデントに見舞われるが、回復するとともに独特のハスキーで甘い歌声を得る。2011年から本格的に音楽活動を開始。幅広いジャンルのクリエイターとコラボレーションし、楽曲提供やゲストボーカリストとしての活動を通じてその才能が知られるようになる。2011年5月にはヒット曲をジャズアレンジでカバーしたコンセプトアルバム「Your favorite things」にボーカリストとして参加。収録曲であるLADY GAGA「Poker Face」のカバーは、iTunes Storeのジャズチャートで初登場1位を記録した。2011年9月シングル「六等星の夜 / 悲しみはオーロラに / TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR」でメジャーデビュー。今年8月に発売したシングルのタイトル曲「あなたに出会わなければ ~夏雪冬花~」はテレビアニメ「夏雪ランデブー」エンディングテーマに起用され、大きな注目を集めた。2012年10月には初のフルアルバム「Sleepless Nights」をリリースする。