ナタリー PowerPush - Aimer

聴く人の心に寄り添いたい 優しい願いを込めた初アルバム

自作の歌詞と提供された歌詞との違い

──4曲目は「笑顔でいて」という歌詞が印象的な「笑顔」ですね。

ライブ写真

タイトルのとおり、離れてしまってもずっと笑顔でありたいという気持ちと、相手にも笑顔でいてほしいというひたむきな気持ちを歌っています。

──Aimerさんの曲やタイトルは、“寂しさ”や“星”、“夜”といった言葉やイメージが強いんですが、「笑顔」っていうタイトルはほかとは違うイメージに感じたんですが。

泣きたいと思う気持ちもあるんですけど、笑顔でいたいという気持ちもある。そんな2つの相対する気持ちがせめぎ合っているような感じです。この曲の主人公は「それでも笑顔でいるということを選びたい」と思っているわけですから、孤独や寂しさを歌っているほかの曲と比べると、ちょっと印象が違っているかもしれませんね。寂しい気持ちを隠して、笑顔でいたいという決意が表れている曲ですから。

──次の「Re:pray」は昨年、テレビアニメ「BLEACH」のエンディングテーマに起用された曲ですが、作詞はAimerさんではないんですね。

はい。この曲の歌詞は提供していただいたものです。最初に感じたのは、避けて通れない別れが書かれているということでした。そんな別れに直面したときの葛藤や、それでも前に進んでいこうとする力強さも感じました。

──提供してもらった歌詞と自分が作った歌詞では、歌うときの気持ちは違うものですか?

そうですね。ある種の責任みたいなものを感じます。私がどう表現するかで曲の伝わり方が変わってしまいますから、歌詞をいただいてから何度も何度も読みました。歌い方ひとつで同じ歌詞でも全然違って聴こえてしまう可能性があると思いますから、自分なりに解釈して歌に落とし込む作業は重要ですね。

──感覚としては、役者が台本を読んで演じるような感じなのかなって。

そうかもしれません。“演じる”という感覚はありますから。そして、そこが面白いところだと思いました。これまでにいろんな曲のカバーもさせてもらってるんですけど、カバー曲を歌うときも同じような気持ちですね。どうすれば自分らしさが出せるのか。それが難しいところですけど、楽しいところでもあります。

孤独を感じたときに言葉が出てくる

──そして次はデビューシングルに収録されていた「悲しみはオーロラに」。

タイトルにも“悲しみ”という言葉を使っていますが、「みんな孤独なんだろうな」「誰もが孤独を抱えて生きているんだろうな」っていう思いを表現しました。

──Aimerさんも普段、孤独を感じたりしますか?

頻繁にあります(笑)。孤独感というのは誰もが持っていると思うんです。普段は明るかったり、気丈な人だったりしても、そんな一面はやっぱりあるんじゃないかなって。ですから、孤独や寂しさを歌にすることは、多くの人に届くと思っています。私の場合、孤独を感じたときに言葉が出てきたりするので、思いを書きなぐって歌詞にすることもあります。出てきた言葉を見て、自分自身を落ち着けるという部分があったりもします。

──次の「寂しくて眠れない夜は」も、“寂しさ”を歌った曲ですね。

はい。冬に、暖かいベッドの中にいても外の寒さを寂しく感じる夜ってありますよね。そんなときに、「二度と戻らない温もり」とか、失ったとわかったものを探してしまうという不器用な心を書こうと思って作りました。

──次の「AM02:00」も夜の歌ですね。午前2時という時間はAimerさんにとってどういう時間ですか? もう寝てる時間だったり?

いえ、まだ寝てないですね(笑)。結構夜更かししています。午前2時ぐらいの程よく夜が更けた頃は、物思いにふけったりする時間ですね。

──そういう時間に歌詞を作ったりすることもありますか?

はい、夜中にも作ります。外の寒さを感じながら暖かい部屋のベッドの中で物思いにふけっているのが「寂しくて眠れない夜は」で、午前2時という時間帯に自分の弱音とかを独白しているけど外に出てしまったのが「AM02:00」なんです。深夜にモヤモヤした気持ちを抱えながら外に出ていく曲です。

──確かに、「AM02:00の誘う風に 少し 遠く ここまで来た」というフレーズがありますね。

はい。私、夜中に外へ出るのも好きなんです。みんなが寝静まっている感じがして、その分、自分の中にあるものが浮き彫りになってくるんです。そういうところも夜の良さじゃないかなって。

──同じ夜中でも、部屋の中と外では見える風景も違ってきますし。

そうなんです。私、「夜のピクニック」という小説が好きなんです。みんなで夜中に外を歩いているうちに、心の中を出していくという物語なんですけど、そのイメージを曲にしたのが、この「AM02:00」なんです。

ニューアルバム「Sleepless Nights」2012年10月3日発売 DefSTAR Records

収録曲
  1. TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR -prologue-
  2. 夜行列車~nothing to lose~
  3. あなたに出会わなければ~夏雪冬花~
  4. 笑顔
  5. Re:pray
  6. 悲しみはオーロラに(Restarred by Takagi Masakatsu)
  7. 寂しくて眠れない夜は
  8. AM02:00
  9. 星屑ビーナス
  10. 雪の降る街
  11. 冬のダイヤモンド(Re-echoed by Genki Rockets)
  12. 六等星の夜
  13. TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR
初回限定盤DVD収録内容
  1. Re:pray
  2. 雪の降る街
  3. あなたに出会わなければ~夏雪冬花~
  4. 六等星の夜~NO.6 SPECIAL EDIT~
Aimer(えめ)

女性シンガーソングライター。幼少期より両親の影響で音楽に親しみ、ピアノやギターでの作曲や英語での作詞を始める。15歳のとき、声が一切出なくなるアクシデントに見舞われるが、回復するとともに独特のハスキーで甘い歌声を得る。2011年から本格的に音楽活動を開始。幅広いジャンルのクリエイターとコラボレーションし、楽曲提供やゲストボーカリストとしての活動を通じてその才能が知られるようになる。2011年5月にはヒット曲をジャズアレンジでカバーしたコンセプトアルバム「Your favorite things」にボーカリストとして参加。収録曲であるLADY GAGA「Poker Face」のカバーは、iTunes Storeのジャズチャートで初登場1位を記録した。2011年9月シングル「六等星の夜 / 悲しみはオーロラに / TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR」でメジャーデビュー。今年8月に発売したシングルのタイトル曲「あなたに出会わなければ ~夏雪冬花~」はテレビアニメ「夏雪ランデブー」エンディングテーマに起用され、大きな注目を集めた。2012年10月には初のフルアルバム「Sleepless Nights」をリリースする。