ナタリー PowerPush - aiko
歌い続ける覚悟、そのための進化
変化と進化をやめたら終わっちゃうなと思った
──前作の「時のシルエット」のときは「そのまんまの自分がリアルに出た」ということをおっしゃってましたけど(参照:aiko「時のシルエット」インタビュー )、そのときが「出ちゃった」という感じだったとしたら、今回は「出します」という強い意志が作品に表れている気がしたんです。
そうですね。前のアルバムの頃から日常的に自分を変えていったところがあって、それが曲にも影響したのかもしれません。
──どういうことを変えていったんですか?
普段から会話をするときに「◯◯したい」じゃなくて「◯◯します」って言おうって意識するようになったんです。「◯◯したい」っていうと、それは誰かと共有しているから結局人に任せちゃうし、もしも間違ったときに誰かのせいにしちゃうんですよね。そういうところでこれまで自分は逃げてたと思うことがあって、だから「◯◯します」って言って自分がちゃんと責任を持とうって。そういう意識が曲にも出ているかもしれないです。
──なるほど。日常的な意識の変化を受けて、詞の書き方が変わって、その結果として曲も変わっていったと。このアルバムはいわゆる“aikoっぽいイメージ”を残しながらもこれまでとは違う印象で、さらに進化を遂げた感じがしました。
そう感じてもらえたならすごくうれしいです。変化と進化をやめてしまったら終わっちゃうなと思うから、たとえ小さな変化だとしてもずっと変わり続けていきたくて。15年もやっていると、これまでのことを続けたいという気持ちと、新しいことをやってみたいっていう気持ちが両方あるんですけど、同じことを続けているだけでは自分の甘えが出てくる気がしたんです。甘えたくないし、自分で納得のいくものを作りたいって思ったら、もっと新しいことをやりたくなって。あと、そもそも自分自身がドキドキする曲を書けなかったらもう終わっちゃうなと思うので。
様子を見ている暇なんてない
──そう思うようになったのは、何か「このままではいけない」というような危機感を感じたから?
そうですね。この何年かで音楽を一生続けることって難しいんじゃないか、いつかは終わりも来るんじゃないかということをどこかで考えるようになったんです。でも私は音楽を続けていきたい。そういうことを考えているうちに、こうして音楽を続けられている今この一瞬一瞬を大切にして、自分の心も聴いてくれた人の心も今まで以上に揺さぶるような曲を書きたいって改めて思うようになりました。0から1を作るのは自分だし、何かを変えようと思うんだったら、最終的には自分が変わるしかないんですよね。どうなるかわからない未来のことを不安に思って様子を見ている暇なんてないなと思って。変な言い方かもしれないですけど、そういうふうに思えたことで、やっと自立をしたみたいな気持ちなんです。意識的に「したい」を「する」に変えたことは本当に大きかったと思いますね。
──そういう危機感や不安を感じながらのアルバム制作はつらくなかったですか?
今回は時間もあんまりなかったりして本当に大変でしたけど、でもレコーディングで歌を歌えていることとか、家に帰って歌詞を考えてることが楽しくて。どんどん曲ができあがっていくことがうれしくて、すごく幸せに思えました。今回のレコーディングは特にそうでしたね。生活していく中でいろんなことがあって、自分がダメになってるときでも、制作に入ると自分が生きてると思う瞬間を感じられた。それで自分にとってこんなに大切なアルバムができるんだったら、ダメになることもひとつの道なんだろうって思います。
- ニューアルバム「泡のような愛だった」/ 2014年5月28日発売 / [2CD]3146円 / ポニーキャニオン / PCCA-15011
- 初回限定仕様盤
- 通常仕様盤
- 初回限定仕様盤 特典ディスク「aiko's Radio side A」
- 通常仕様盤 特典ディスク「aiko's Radio side B」
- ※特典付き通常仕様盤は5月29日より数量限定で販売
収録曲
- 明日の歌
- 染まる夢
- Loveletter
- あなたを連れて
- 距離
- サイダー
- 4月の雨
- 遊園地
- 透明ドロップ
- 君の隣
- 大切な人
- キスの息
- 卒業式
初回限定仕様盤
カラートレイ&初回限定ブックレット
aiko(アイコ)
1975年大阪出身の女性シンガーソングライター。1998年にシングル「あした」でメジャーデビュー。その後「花火」「桜の時」「ボーイフレンド」などのシングルがヒットを記録し、2000年に「NHK紅白歌合戦」初出場を果たすなど、トップアーティストとしての人気を不動のものとする。2011年2月には初のベストアルバム「まとめI」「まとめII」を2枚同時発売。2013年にはデビュー15周年を記念し、ライブハウスからアリーナ会場までを回る大規模なライブツアーを敢行した。2014年5月28日には通算11枚目となるオリジナルアルバム「泡のような愛だった」をリリース。女性の恋心をつづったリアルな歌詞とポップなメロディ、熱いライブパフォーマンスで幅広いファンを獲得し続けている。