ナタリー PowerPush - aiko

「君の隣」で歌うということ

aikoの通算31枚目のシングル「君の隣」が1月29日にリリースされる。aiko自身が「1人ひとり、皆さんの隣で歌いたいという気持ちがたっぷり詰まった1曲」と語るこの作品は、ロッテ「ガーナミルクチョコレート」のCMソングとしてもおなじみのナンバーだ。

今回のインタビューでは、彼女とファンとの関係性を探るべく“君の隣で歌う感覚”についてaiko本人に話を聞いた。さらに昨年、4つのツアーを同時期に行った15周年記念ツアーについて、10月のNHKホール公演が体調不良のため延期となった際の状況も含めてじっくりと語ってもらった。

取材・文 / 富樫奈緒子

 
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ライブのことを思って書いた「君の隣」

──新曲「君の隣」はaikoさんがライブのことを思って書いた曲だそうですね。aikoさんがライブのMCでお客さんにずっと伝えてきた「1人ひとりに届きますように」という言葉がついに形になったんだなと、この曲を聴いて思いました。

そうですね。1人ひとり皆さんの隣で歌いたいという気持ちを込めて書きました。これまでライブのMCで私は「1対1で届ける」って言ってきたし、もちろん本気でそう思ってやってきたんですけど、その気持ちは今まで歌にできてなくて。書いてる途中で照れくさくなっちゃって書けなかったんです。でもやっと言えました。

──具体的にライブ中のどんなシーンを思い浮かべて書きましたか?

ライブをしていると中盤ぐらいに、「ああ、もうすぐライブが終わってしまってみんな帰るんだな……」って毎回感じるんです。で、帰ってる間にどの瞬間でみんなのスイッチが切り替わってしまうんだろうと思って。私はいつも「おうちに帰ってお風呂に入るまでがライブやからね」ってライブ中に何度も言うんですけど、でもきっと、例えば帰りの電車が満員電車ですごくギュウギュウで「ああ、しんどいなあ。そういえば洗濯物干すの忘れてたなあ……。あ、猫の餌、残ってるかな……」とか思う瞬間がみんなそれぞれにあると思うんです。そうやって我に返るスイッチをいろんなところでみんなが押してるんだと思って。

──確かにライブでどんなに日常のことを忘れて楽しんでいても、どこかで現実に戻る瞬間はありますよね。

そう、歌いながらそのことを考えるときがあって。ライブが終わって客電がついたときに、みんなが荷物を持って後ろを向いて帰って行く瞬間のことが頭に浮かぶと、すごく寂しくなるんです。「ああ、終わっちゃうんだ……」って。

──aikoさんはいつも「ライブが終わっても、ライブのことをふとした瞬間に思い出してほしい」っておっしゃってますもんね。

そうなんです。だからそのときの気持ちを曲にしたくて書いたんです。その気持ちをちゃんと曲にできたから、これは自分の中でも大切な1曲になるなって。これまでのライブのときのうれしかったことや悲しかったこと、悔しかったことなんかも詰まった1曲になったと思います。

お客さんのことが愛おしくてしょうがない

──「隣で歌う」という感覚は、aikoさんのライブでのお客さんとの距離感を示しているような気がします。aikoさんのライブはどんな大きなアリーナ会場でもすごく近くに感じるというか。aikoさんとお客さんの気持ち的な距離がとても近いと思うんです。

昔はスタッフの人たちに「近すぎる!」って言われたりすることもあったんですけど、この15年かけて「これがaikoなんだな」っていうのがやっと浸透してきたんです(笑)。ずっとやって来れたからこそ、お客さんとの関係性が少しずつできあがってきたんだなっていう感じがありますね。

──ライブでお客さんと手をつなぐことも多いですよね。例えばスタンド席の女の子が必死に手を伸ばしてきたら、aikoさんも花道の一番端から一生懸命手を伸ばしてつなごうとしたり。手を伸ばしながらその子の目を見て歌うaikoさんを見ると、「ああ、この子はこの日のことを一生忘れないだろうなあ」って思います。

やっぱり自分もいろんな人のファンだったから、ライブを観に行ったときの気持ちがわかるというか。だからどうしてもつなぎたいんです。もう絶対に。例えば照明とか歌とか、いろんな演出以上のことを自分で届けようとすると、私に何ができるだろうって思うから。

──ライブでのお客さんとの密な会話もそういう気持ちから?

そうですね。わざわざ私のライブを観に来てくれたお客さんに、ただ、本当に覚えていてほしいんです。10代のときに来てくれた子が30代になったときに「昔、aikoとしゃべったことあるんだ」とか「そういえばあのときあんなこと話したなあ」とか、そういうことをふと思い出してくれたらうれしいなあって。そういうことって忘れないと思うから、手をつないだり話したりしたくなっちゃうんです。でも本当に来てくれるお客さんの熱量がすごいからこそ、めっちゃがんばりたくなるんですよね。もう、ほんまに愛おしくてしょうがない。

──ライブ中のaikoさんを観ていると、ファンの人たちとの強い絆のようなものを感じます。

本当にそうなんですよ。自分が高校生のときとか短大生のときとかに大好きだった歌手の人もこういう気持ちでいてくれたのかなあって思うぐらい、私はファンの人に依存してると思います。

──昔からのファンの人の顔とか本当によく覚えていますよね。ライブでも見つけたら、「あ、ひさしぶり」って話しかけたりとか。

覚えてますね。それぐらいみんなの力が強いんだと思います。友達みたいに話しかけてきてくれるし。15年やってると昔からのファンの人ともお互いに歳を重ねていろいろ変わっていったりもするんですけど、でもそれでもその子の人となりをずっと見てきたから、「ああ、一緒に時間を過ごしてきてうれしいなあ」とか「ああ、また観に来てくれたんやこの子」っていうふうにファンの人を見てホッとしたりとかもします。ライブのMCでたくさん話して密な時間を作っておしゃべりしてきたからこそ、この「君の隣」という曲ができたんだと思います。

aiko(あいこ)

1975年大阪出身の女性シンガーソングライター。1998年にシングル「あした」でメジャーデビュー。その後「花火」「桜の時」「ボーイフレンド」などのシングルがヒットを記録し、2000年に「NHK紅白歌合戦」初出場を果たすなど、トップアーティストとしての人気を不動のものとする。2011年には初のベストアルバム「まとめI」「まとめII」を2枚同時発売し、2012年6月に10thオリジナルアルバム「時のシルエット」をリリース。2013年春にはライブ映像作品集「15」、同年7月にシングル「Loveletter / 4月の雨」を発表し、2014年1月に通算31枚目となるシングル「君の隣」をリリース。女性の恋心を綴った歌詞とユニークかつポップなメロディで幅広いファンを獲得し続けている。