ナタリー PowerPush - aiko
歌い続ける覚悟、そのための進化
aikoの11枚目となるオリジナルアルバムが完成した。「泡のような愛だった」と名付けられたこの作品には、シングルとしてリリースされた「Loveletter」「4月の雨」「君の隣」を含む全13曲を収録。どの曲にも今の彼女のリアルな思いがたっぷりと詰め込まれている。
aiko史上もっとも歌詞の文字数が多いアルバムとなったこの作品で彼女は何を伝えたかったのか。ナタリーではaiko本人にインタビューを行い、じっくりと本音を語ってもらった。
取材・文 / 富樫奈緒子
今伝えたいことを全部出しきろうと思った
──11枚目のアルバム「泡のような愛だった」が完成しました。タイトルを聞いたとき「とても切ないタイトルだな」と思いましたが、聴いてみたら「ああ、確かにこのタイトルしかないな」と思えるような曲がたっぷり詰まっていました。
よかった。10曲ぐらいレコーディングしてアルバムの全体像が見えてきた頃にふと浮かんだのがこの言葉だったんです。切ない曲が多いこともそうだし、あと「サイダー」というタイトルの曲が入っていたり、「炭酸水」っていう言葉が歌詞に出てきたりもして。そうやってアルバムに入っている曲のことを考えていたら「泡の形って柔らかかったり儚かったり包んだり……いろんな形があって、これは愛みたいだな」ということに気付いて、「泡のような愛だった」というタイトルにしました。
──今回収録されるこの13曲はどのようにして選んだんですか?
この1、2年ぐらいに作った曲の中から「今歌いたい」って思う曲を選びましたね。去年作った曲が多いけど「明日の歌」や「透明ドロップ」は今年に入ってから作りました。
──全曲聴かせてもらって、特に歌詞の内容に衝撃を受けました。これまでにないほどリアルな感情をさらけ出している、と感じたんですが。
歳を重ねるということはこういうことかって思います(笑)。ずっと曲を書いているからこそ、昔よりも言葉の大事さというものをすごく感じて表現の仕方が変わってきたんです。20代の頃に「これを言ったらちょっと恥ずかしいな」と思っていたことが今は恥ずかしくなかったりとか、感情がどんなに露骨に出ていても「これが自分なんだ」と思えるようになって。もしかしたら、こうやって感情を出すことで「年甲斐もなく恋愛の歌なんて歌って」って言う人がいるかもしれない。でも「仕方ないやん、私が今言いたいことはこれなんやもん」って思うんです。だから今感じていることを書こうと思って書きました。
──感情をストレートに出すことに対して不安はなかったですか?
「これを聴いた人はどう思うだろう?」っていう気持ちはちょっとありました。でも言いたいことはこれだったから。去年、ツアーの最終日のライブをZepp Nagoyaでやったんですけど、もう本当にボロボロになるくらい出しきったライブだったんです(参照:aiko、内容異なる15周年同時多発ツアー3本を完遂)。そのときに「こういうライブを毎日できたらいいのにな」ってすごく思って。だから曲を作るときも、私が今伝えたいことを全部出しきろうと思ったんです。
これまでで一番歌詞が多いアルバム
──そして伝えたいことを全部出しきった結果、歌詞の文字数がずいぶん増えましたね。
そうなんです(笑)。曲を作っていくときって、歌詞を書いている段階で頭の中でなんとなく譜割りというかリズムみたいなものができるんです。それを頭の中に思い浮かべながら歌詞を書くと、自然とAメロ、Bメロ、サビっていう感じで歌詞ができていくんですけど、今回はそういう作り方をやめたいなと思って。
──じゃあ今回はどのようにして?
歌詞にならなくてもいいから、いいことも悪いこともなんでも文章に残そうと思って書いてみたんです。そしたら頭の中の譜割りがなくなって、思ったことを書いてたらどんどん長くなっていって。その結果、今回はこれまでで一番歌詞が多いアルバムになりました(笑)。
──aikoさんは詞先で曲を作りますよね。文字数が増えたことによって音の乗せ方もこれまでと変わりましたか?
変わったと思います。言葉のイントネーションで出てくるメロディも違うから、変わっていきましたね。レコーディングのときも早口だし、滑舌とか大変でした(笑)。でも、言葉が多いけどこれを全部伝えたくて。
──ロックテイストの曲も多いですよね。
プロデューサー曰く、私は作る時期によって曲のジャンルが違うみたいなんですけど、今はバンドサウンドだったり、言葉が多くて畳みこむみたいな曲が多かったんです。あと、これは勝手なイメージですけど、例えばこの先、歳を重ねていくにつれて、だんだん静かなバラードの曲が多くなっていくのかなあとか想像することがあるんです。でも私はまだそれは嫌だなと思ったんですよね。もうちょっと、違う角度からみんなに驚いてもらえるような曲を書きたくって。歳はとっていくものだし、そのときにはまた違うことをやりたくなるんだろうし、できなくなることだってあるかもしれない。だから、今できることをやりたいと思いました。
- ニューアルバム「泡のような愛だった」/ 2014年5月28日発売 / [2CD]3146円 / ポニーキャニオン / PCCA-15011
- 初回限定仕様盤
- 通常仕様盤
- 初回限定仕様盤 特典ディスク「aiko's Radio side A」
- 通常仕様盤 特典ディスク「aiko's Radio side B」
- ※特典付き通常仕様盤は5月29日より数量限定で販売
収録曲
- 明日の歌
- 染まる夢
- Loveletter
- あなたを連れて
- 距離
- サイダー
- 4月の雨
- 遊園地
- 透明ドロップ
- 君の隣
- 大切な人
- キスの息
- 卒業式
初回限定仕様盤
カラートレイ&初回限定ブックレット
aiko(アイコ)
1975年大阪出身の女性シンガーソングライター。1998年にシングル「あした」でメジャーデビュー。その後「花火」「桜の時」「ボーイフレンド」などのシングルがヒットを記録し、2000年に「NHK紅白歌合戦」初出場を果たすなど、トップアーティストとしての人気を不動のものとする。2011年2月には初のベストアルバム「まとめI」「まとめII」を2枚同時発売。2013年にはデビュー15周年を記念し、ライブハウスからアリーナ会場までを回る大規模なライブツアーを敢行した。2014年5月28日には通算11枚目となるオリジナルアルバム「泡のような愛だった」をリリース。女性の恋心をつづったリアルな歌詞とポップなメロディ、熱いライブパフォーマンスで幅広いファンを獲得し続けている。