ナタリー PowerPush - aiko
歌い続ける覚悟、そのための進化
みんなで歌ったときにこの曲は完成する
明日の歌
──そんなアルバムの1曲目は「明日の歌」という曲で始まります。
この曲はできたときにすぐ「これは1曲目」って決まりました。ライブのセットリストもそうなんですけど、1曲目が決まることでやっとスタートラインが切れた感じがして、「抜けられた!」と思えるんです。この曲ができる前は違う曲が1曲目だったんですけどこの曲ができてそれが全部覆りました。本当に作れてよかったし、1曲目にしてよかったなと思える曲ですね。
──「誰かが鼻歌であの雲の向こうまで 笑い飛ばしてくれますように」というフレーズが印象的です。切なくて苦しい気持ちを聴いてくれる人たちに委ねているというか。
私は歌詞を書くときに「私はこう思うんだけど、誰かも同じように思ってるかな?」ってどこかで思いながら書くときがあるんです。だから聴いてくれるみんなが日常の中のいろんな瞬間に鼻歌で歌ったりして、この曲がみんなのものになったらいいなあって。この曲を書いてるときは本当にそうなってほしいって思いながら夢中で書きました。それでレコーディングで歌ってみたらその後の風景をちゃんと想像できて、ライブでみんなで歌ったときにこの曲は完成するのかなって思いましたね。
このアルバム、ちゃんと終われた
──そしてこのアルバムは「明日の歌」で始まり、さまざまな感情をリアルに表現した曲を経て「卒業式」という曲で終わります。なぜ今、卒業式の曲を書いたんですか?
私は昔から何かの記念日みたいな曲を書くのが苦手なんです。気負いすぎて書けなくて。でもようやく振り返ることができたんですよね。この曲はちょうど卒業式の季節に作ったんですけど、あの尊い時間を今の自分が曲にするならどんな曲になるだろうと思って、今の自分とその当時の自分を重ねて書きました。卒業式って一瞬の夢のような出来事だし、そこで全部が終わってしまうものでもあるじゃないですか。終わりを迎えるときって人それぞれ何度もあって、そこに向き合わなくちゃいけないけどどこかで逃げ出したい気持ちもあって。卒業式が終わってからもみんな卒業をどこかで認めたくないからかなかなか学校から帰らない感じとか(笑)。そういう感じを曲にしたくて書いた曲です。
──ここまでの曲と比べて、この曲はaikoさんのスタンダードナンバーといえるような楽曲だと思いました。この曲を最後に持ってきたのはなぜですか?
今回のアルバムはいろいろと冒険をしているので、いつも聴いてくれている皆さんが最後に「aikoだな」と思ってくれるような曲を入れようと思ったんです。それで最終的に決まった曲順で並べて聴いてみたときに、本当にしっくりきたんですよね。「ああ、このアルバム、ちゃんと終われた」ってすっごい思えて。いろんなところにジャンプしたり二段飛びしたりしたけど(笑)、「卒業式」で終わったことで本当にアルバムを終わらせることができたなと思いました。あとライブで歌ってる映像が自分の中で浮かぶ曲です。早くみんなに聴いてほしいですね。
──改めて、aikoさん自身がこのアルバムを一言で表すとするとどんなアルバムでしょう?
この作品は……やっぱり「生(ナマ)」ですかね。今までも思ったことを書いてきましたけど、今までの中でも特に生っぽいから。あからさまに書くことがすべていいというわけではないのでその塩梅は難しいですけど、でも今の自分が言いたいことが詰まったアルバムになったと思います。
- ニューアルバム「泡のような愛だった」/ 2014年5月28日発売 / [2CD]3146円 / ポニーキャニオン / PCCA-15011
- 初回限定仕様盤
- 通常仕様盤
- 初回限定仕様盤 特典ディスク「aiko's Radio side A」
- 通常仕様盤 特典ディスク「aiko's Radio side B」
- ※特典付き通常仕様盤は5月29日より数量限定で販売
収録曲
- 明日の歌
- 染まる夢
- Loveletter
- あなたを連れて
- 距離
- サイダー
- 4月の雨
- 遊園地
- 透明ドロップ
- 君の隣
- 大切な人
- キスの息
- 卒業式
初回限定仕様盤
カラートレイ&初回限定ブックレット
aiko(アイコ)
1975年大阪出身の女性シンガーソングライター。1998年にシングル「あした」でメジャーデビュー。その後「花火」「桜の時」「ボーイフレンド」などのシングルがヒットを記録し、2000年に「NHK紅白歌合戦」初出場を果たすなど、トップアーティストとしての人気を不動のものとする。2011年2月には初のベストアルバム「まとめI」「まとめII」を2枚同時発売。2013年にはデビュー15周年を記念し、ライブハウスからアリーナ会場までを回る大規模なライブツアーを敢行した。2014年5月28日には通算11枚目となるオリジナルアルバム「泡のような愛だった」をリリース。女性の恋心をつづったリアルな歌詞とポップなメロディ、熱いライブパフォーマンスで幅広いファンを獲得し続けている。