当時の気持ちをどう歌うのか
──今回のセルフカバーでは、2003年リリースの「LIFE」がもっとも古い時期の曲になります。初回盤に付く特典ディスクにオリジナルバージョンも収録されているので聴き比べてみましたけど、その歌声、表現は大きく変化していますよね。
声も若いし、ちょっと恥ずかしい感じはありますよね、昔の音源を今聴くと(笑)。あの頃はね、ペッペッて歌って、「もう大丈夫っしょ」みたいな感じのレコーディングをしてたんですよ。いつからか「絶対しゃばい歌は世に出さない」っていう気持ちで徹底的にこだわるようになったんですけど。
──当時の歌もそんな適当なものではもちろんなく、あの時期ならではのよさがありますけどね。
まあ、そうですね。サクッと歌っていたときの歌にも、そのときにしか出せない感情はしっかり込められていると思うから。たとえピッチがズレていたとしても、そのよさはある。ただ、今改めて歌うとなると、当然そのときの歌い方にはならないわけだし、それを真似するのも違うじゃないですか。だから今回セルフカバーするにあたっては難しさもありました。「LIFE」は当時の自分としては重く感じた出来事をもとにして書いたんだけど、今の自分にとってその出来事っていうのはそこまで大変なことでもないんですよ。「もっと大変な人はいっぱいいるでしょ」みたいな感覚があるというか。その感情の違いは絶対に歌声に出てしまうものだから、あの当時の自分の気持ちを今の自分としてどう感じ取るのかという部分がすごく大変だったんですよね。
──スキル的には今のAIさんとして向き合えばいいけど、感情的には当時の自分を引き戻す必要があったわけですね。
うん。逆に「Story」なんかは、当時と同じように感情をしっかり込めることはできるんだけど、たくさん歌いすぎてきたことで、ついキレイに歌おうとしちゃう自分がいたりして。今回セルフカバーをやってみたことで、そういういろんな発見はありましたね。最終的には自分の今できることをすべて詰め込むことができたので、すごく満足しています。
──先ほどレコーディングに対するこだわりが活動の中で強まっていったとお話されていましたが、そういう変化が訪れたきっかけって何かあったんですか?
10代の頃はもちろん、22歳くらいまでは「適当、適当!」みたいな感じで常に動いてたんですよ。まあそれは悪い意味での“適当”ではないんだけど、面白いノリを出すためにそういう言い方をしてたところがあって。でも、そうやって適当なノリで生きてたら、いろいろ大変な思いをすることになったという。一番大きかったのは声のこと。デビュー当初はクラブツアーが多くて、お客さんはもちろん、私もお酒飲みながらライブをすることもあったんですよ。タバコを吸ってた時期もありましたし。そうしたら2004年くらいに声帯結節ができて。そこで「ホントにもうちゃんとしなきゃな」と思ったんです。
──適当じゃダメなんだと。
そう(笑)。「明日は明日でなんとかなる」と思ってたけど、そんなこと言っていられない時期もあったから。そこからいろんな面でちょっとずつ変化していったんだと思います。人間は一気に大きく変わることはできないから、ホントにちょっとずつですけどね。周囲の人からの言葉とかも影響してるところはあると思います。誰かに何か指摘されたときに、昔はすぐ「うるさいな」って言っちゃったりしてたんですよ(笑)。若かったから変なプライドもあったし。でも、その言葉を次の日とか1カ月後とかに自分なりに考えてみるんですよね。どうしてそう言ってくれたのかなって。それによって自分が変わっていけた部分もあったんだと思うんですよね。
──その場では突っ張るけど完全に排除しないのがいいところですね。
たぶん性格なんでしょうね。家族もそうですけど、何か揉め事があったとしたら、そのままにしておくことができなかったりするし。「なんでそんなこと言われなきゃいけないんだよ」と思ったりはするけど、その意味をしっかり考えて、自分が悪いと思えばすぐに謝ります。それは、ちゃんと解決しないと次へ進めないタイプだし、何かあったときに「ちゃんと謝っておけばよかったな」って後悔するのが嫌だからなんだと思います。そんな自分だから徐々にでもいい方向に変化してこれたんじゃないかな。音楽的にもそうだし、こうやってちゃんと敬語も使えるようになりましたしね。昔は会った瞬間、「誰だ、お前? 名前なんてーの?」って感じでしたから。やっと普通に人としゃべれるようになった(笑)。
みんなで楽しいことができたらいいな
──そんな今のAIさんを生で感じられる場がライブです。現在、ゴスペルクワイアを率いた20周年記念プレミアライブツアーを開催中ですね。
私以外に18人のシンガーがいるんですけど、皆さんプロで活躍されている方々ばかりなのでとにかく歌声がすごいです。私が一番下手だからどうしようって感じ(笑)。みんなが一斉に歌ったときの体がゾワッとするくらいの衝撃を楽しんでもらえたらいいなと思います。
──20周年イヤーはここからさらに盛り上がっていく感じですかね?
そうですね。まだ言っちゃいけないこともいろいろとありますので。どんどん盛り上げていって、いろんな場所で出会った人たちと楽しいコミュニケーションが取れたらいいですよね。「お前、誰? 名前なんてーの?」って(笑)。
──20年を機にまた以前のAIさんに逆戻り(笑)。
あははは(笑)。それは冗談ですけど、ホントにみんなで楽しいことができたらいいなって思ってます。みんなで笑顔になれるように。
ライブ情報
- AI 20周年記念“クリスマスディナーショー with ゴスペル聖歌隊”
-
- 2019年12月9日(月)大阪府 帝国ホテル 大阪 孔雀の間
- 2019年12月11日(水)石川県 ANAクラウンプラザホテル金沢 大宴会場「鳳」
- 2019年12月15日(日)鹿児島県 SHIROYAMA HOTEL kagoshima コンベンションホール エメラルド 4F
- 2019年12月19日(木)東京都 グランドプリンスホテル新高輪 飛天
- 2019年12月22日(日)高知県 ホテル日航高知 旭ロイヤル 3F ゴールデンパシフィック
- 2019年12月24日(火)栃木県 ホテル東日本宇都宮 3F 大和