音楽ナタリー PowerPush - 阿部真央
5年の歩みを振り返りつつ対峙する「最新の私」と「5年後の私」
いいことも悪いことも全部、自分の責任にしたい
──ならば、徹底的に自分のことを歌にするしかないって思い続けた5年間だった。
そうそう。
──中途半端は嫌いだし。
大嫌いです! それはもう曲作りだけじゃなく、活動全般に言えることですね。阿部真央の現場なら、誰かどこでミスをしても私のミスになるし、私自身がそうしたいんですよ。いいことも悪いことも全部、自分の責任にしたいんです。
──真央さんはそういう人ですよね。今はもう人に曲を書いてもらいたいという気持ちはないですか?
もうないですね。そうなったらつまらないだろうなって。「ポっぷ」という2枚目のアルバムを作ってからは、そうじゃないと自分も満足できないようになったんですよ(参照:阿部真央「いつの日も」「ポっぷ」インタビュー )。さっきも言ったように、いいことも悪いことも全部、責任を持って自分の結果にしたいから。誰かが作った曲を歌って、その結果が悪かったら作曲者のせいにしちゃいそうで。そう思うんです、私という人間は。最初はファンの存在を感じることなんてできなかっただけど、だんだんファンのニーズを理解しつつ、自分が書きたいと思うことと統合していくという作業をしはじめて。そこで自分のシンガーソングライターとはなんたるかという考えも固まってきて。一番大きく考え方が変わったのは、「戦いは終わらない」でセルフプロデュースをするようになってからですね。だから、2012年。そこから自分がどういう立ち位置でふるまうべきかすごく考えるようになりました。
──ソングライターとしての才能があったからこの5年間もあったという言い方もできると思うんですけどね。
あ、そういうのは言われても信じないですよ。
──そう言うと思った(笑)。
5年間やってこれたのは、私が書いた曲に共鳴してくれた人がそれだけたくさんいたからだとは思います。でも、自分に才能があるなんて思わないし、思ったこともない。曲ができても不安だし、リリースしても不安だし、ツアーでその曲が受け入れられたころには次のアルバムのことを考えて不安になる。ずっと不安なんです。でもね、この前、初めてほかのアーティストに楽曲提供させていただいたんですよ。Aimerさんというシンガーの方に(アルバム「After Dark」の収録曲「words」 / 参照:Aimer「After Dark」インタビュー)。その曲は自信がありました。私が誰よりもこの歌でAimerさんを輝かせるっていう愛があったから。
──その曲はどういうふうに書いたんですか?
そもそも楽曲提供のお話をいただく前に「これはAimerさんが歌ったほうがきれい」って思った旋律があったんです。ストックとして取っておいたんだけど、運よくお話をいただいて。
──なるほど。つまり、そこまで思い入れのあるアーティストだったら今後も楽曲提供できるということですよね。
うん、ホントに好きな人なら。あ、でもそこまで思い入れがなくてもできるようになるかもしれない。
──さっき言ってた新しい曲の書き方ができるようになれば。
そうそうそう。どなたか私に曲を書いてほしい人、お話ください(笑)。
この5年間、人間的にはほとんど変わってない
──最新の阿部真央はどんなモードなんですか?
今はフラットですね。「戦いは終わらない」の頃はセルフプロデュースということもあって、異様にテンションが高かったと思うんですよね。で、去年の8月に「貴方を好きな私」というアルバムをリリースしたときはリラックスしていて、悪い意味ではなく作品に対する自分の感想が何もないみたいな。「戦いは終わらない」のように気負うでもなく、でもそのときにやりたかったことは全部やれたから、これまでで一番充実感があったんです。去年は幸せな1年だったなって。リスナーの皆さんに「どうぞ好きに聴いてください」っていうモードでリリースできたんです。でも今年になってだんだんテンション的にユルいなと思いはじめて、これじゃいけないと思ってます(笑)。
──「貴方を好きな私」は真央さんの成熟した表現性を示したアルバムだったと思うんですよね。
うん、落ち着いてますよね。
──ボーカルのアプローチも変わったと思う。
変わりましたね。今、さらに変わってると思う。声を張らないよさを理解するようになって。今年、「Believe in yourself」というシングルをリリースして、あれも声は張ってるけどマイルドに歌っていて。
──そういう意味でも「最後の私」という重めのバラードがターニングポイントだったと思うんです。あの曲から真央さんの歌が成熟味を帯びてきたと思う。
あ、うれしい。あの曲では弦楽器みたいな声の出し方をして。初めてでしたよね。ああいう重みのあるバラードって。アレンジの影響もあるけど、「側にいて」はもうちょっと壮大で光が射してる感じがあったし。
──では、19歳のときから一貫して変わってないないのはどんなところだと思いますか?
人間的にはほとんど変わってないと思うんですよ。わがままで、ネガティブで、自信がない。プライベートの感情の起伏が大きいところも変わってないし。考えすぎちゃうところも。
──ただ、そういう自分に対する対処の仕方を覚えたっていう。
そう、それそれ。そういう自分からの逃げ方も知ってるというか。それも経験ですよね。そういう5年間だった。悔いもないし、よかったなって思うことも、つらかったなって思うことも、ちゃんと等しくあった5年間だった。それは、ちゃんと仕事をしてきた証拠だと思うし。結果的にいい5年間だったと思います。
私はファンのために音楽を続けてるんですよ
──ベタなことを訊きますが、5年後の自分を想像できますか?
5年後の自分……29歳か。人間的には全然変わってないと思います。曲のあり方は変わってるかもしれないけど。じゃあ、今、何か質問してもらって、5年後に「あのときなんて答えましたか?」っていうのをやりましょうよ。
──いいですね。せっかくなんで究極の質問みたいなことを聞かせてください。
究極かあ(笑)。いいですよ!
──「阿部真央は“阿部真央の歌”をどう思ってますか?」っていう。
えーっ! 全然わかんない(笑)。そんな質問がくるとは思ってなかった。うーん……。「阿部真央というプロジェクトをどう思いますか?」って聞かれたら「自分を一番成長させてくれるもの」ってすぐに答えられるんですけど、“阿部真央の歌”についてですよね? うーん……でも、やっぱりファンの人のためにあるものですね。そうじゃないと曲が書けないかも。自分ためにやってたらもう音楽はできない。そういうところまできましたね。
──例えばですけど、結婚して引退するようなことになったら、一切曲は書かないと思いますか?
うん、書かないと思う。またこの話になるけど、もともと曲を書きたかったわけじゃないから。ホントはギターも触りたくないし(笑)。触るのは曲を作るときとライブ前だけで。だから、私はファンのために音楽を続けてるんですよ。それが、阿部真央の歌ですね。
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- シングルコレクションアルバム「シングルコレクション19-24」/ 2014年8月20日発売 / ポニーキャニオン
- 予約限定生産盤 [CD+DVD+Tシャツ] 6480円 / PCCA-04075
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3996円 / PCCA-04076
- 通常盤 [CD] 2700円 / PCCA-04077
CD収録曲
- 伝えたいこと
- I wanna see you
- 貴方の恋人になりたいのです
- いつの日も
- ロンリー
- 19歳の唄
- モットー。
- 光
- 側にいて
- 世界はまだ君を知らない
- 最後の私
- 貴方が好きな私
- boyfriend
- Believe in yourself
予約限定生産盤、初回限定盤DVD収録内容
<music clip>
- ふりぃ
- 伝えたいこと
- 貴方の恋人になりたいのです
- いつの日も
- ロンリー
- 19歳の唄
- モットー。
- 側にいて
- 世界はまだ君を知らない
- 最後の私
- 貴方が好きな私
- Believe in yourself
- always
- 「シングルコレクション 19-24」マスタリングドキュメント
- 「シングルコレクション 19-24」ジャケットメイキング
- 「Believe in yourself」music clip メイキング
- 「always」music clip メイキング
阿部真央(アベマオ)
1990年1月24日生まれ。大分県出身のシンガーソングライター。2009年1月にアルバム「ふりぃ」でポニーキャニオンからメジャーデビュー。等身大の歌詞とポップなメロディ、表現力豊かなボーカルが、同世代 を中心に支持を集める。「ROCK IN'JAPAN FES.2009」「MEET THE WORLD BEAT 2009」などデビュー年より大型フェスに出演し、翌2010年1月に2ndアルバム「ポっぷ」、2011年6月に3rdアルバム「素。」をリリース。全国ツアーやアヴリル・ラヴィーンのサポートアクト起用など精力的なライブ活動を展開する。2012年6月に4thアルバム「戦いは終わらない」を発表し、自身初の全国ホールツアー「阿部真央らいぶNo.4」を開催。2013年には「最後の私」「貴方が好きな私 / boyfriend」という2枚のシングルと、5thアルバム「貴方を好きな私」をリリースしたそしてCDデビュー5周年を迎えた2014年8月、初のシングルコレクションアルバム「シングルコレクション 19-24」を発売。同年10月には初の日本武道館単独公演が控えている。