音楽ナタリー PowerPush - 阿部真央
5年の歩みを振り返りつつ対峙する「最新の私」と「5年後の私」
今年デビュー5周年を迎えた阿部真央がこれまでのシングル曲を網羅したアルバム「シングルコレクション19-24」をリリースした。この5年間、シンガーソングライターとして彼女はどのような思いで音楽と向き合ってきたのか。今回のインタビューで彼女はその道筋を振り返るだけでなく、最新のモードや将来的な展望についても忌憚なく語ってくれた。
また今回の特集にはあ~ちゃん(Perfume)、Aimer、KREVA、剛力彩芽、高橋優、矢作兼(おぎやはぎ)といった阿部とゆかりの深いアーティストや彼女の音楽を愛する著名人からのメッセージも掲載。それぞれデビュー5周年に対するお祝いコメントだけでなく、お気に入りのシングル曲を挙げているので、こちらにも注目だ。
取材・文 / 三宅正一(ONBU) インタビュー撮影 / 佐藤類
今はちゃんと曲作りする時間が欲しい
──これまでのシングルが時系列に沿って並んでいるアルバムの曲順を見て率直にどう思いますか?
デビューしてから5年間で14曲もシングルをリリースできたということは単純にありがたいなって。でも今まで応援してくださってるファンのことを考えると、このタイミングでオリジナルアルバムをリリースするほうがよかったなとは個人的に思っているんです。とはいえこの5年間、1年に1枚のペースでアルバムをリリースしてきた中で、ちょっとインプットする時間が欲しいなと思ってるのも正直な気持ちなんですよね。そういうこともあって、「じゃあ5周年だし、このタイミングで今までの総括するのもいいのかな」って。だから、このシングルコレクションはどちらかというと、今まで私の曲をそこまで聴いたことがなかった人にとって“阿部真央・入門編”みたいな作品になればいいなと思ってます。ずっと応援してくれてるファンの人たちに対してはちょっと申し訳ない気持ちもありつつ。
──それを素直に言うのが真央さんらしいというか。ファンに対してはとことん誠実でありたいっていう。
やっぱり一番大切な存在ですからね。
──ただ、やっぱりインプットする時間はもっと欲しいと。
欲しいですよ。毎年アルバムを出して、ツアーをやって、ツアー中に曲を書いて、ツアーが終わったらすぐ新曲のレコーディングっていうサイクルでずっとやってきたから。アルバムができたらこういう取材もしていただけるんですけど、ずっとそういうサイクルで活動していると、今自分はどういう曲を書きたいと思ってるのか、それを考える時間……自分自身と向き合う時間が削られていくんです。デビュー当初は曲のストックもあったし、次のアルバムに向けてゆっくり曲を書く時間もあったんですけどね。でも、だんだんストックも尽きてきて。今もストックがゼロではないんですけど、正直十分ではないなと感じてるんです。だからちゃんと曲作りする時間が欲しいなって。
──この5年間、まとまった休みってなかったんですか?
うーん、声帯治療したときくらいですかね(参照:阿部真央復活シングル&アルバムを2カ月連続リリース )。
──ああ。でも、あれは望まざる休みだったしね。
そうなんですよ(笑)。1カ月くらいの休みをもらえるときは2回くらいあったかな? でもね、休みのときもいろいろ気にしなきゃいけないから。休み明けで人前に立つときにそれ相応の準備が必要じゃないですか。それこそ食事の量を減らしたりね(笑)。
──外見のコンディションも休み明けにピークにもっていかなきゃいけない。
そうそう。もともとはただ歌が歌いたいだけで、積極的に人前に出たいと思っていた人間ではないから、そういうのもストレスに感じちゃったりするんですよね。だから、5周年を機に上手な時間の使い方というのも見つめ直したいなと思っていて。
──真央さんがデビュー当初に感じていた恐怖心みたいなものは軽減されていますか?
そうですね。前よりは、今自分がどんな状況にいるのか捉えられるようになりましたね。19歳でデビューして24歳になって、このシングルコレクションのタイトルにもそのまま「19-24」って付けたんですけど、女性としての内面的な変化は26、7くらいまで絶え間なくあるのかなと思っていて。
私に求められている3つの柱
──今後、どういう変化があると思いますか?
どうだろう? 例えば作風が丸くなっていくのかもしれないし。
──それは成熟とも言えると思うけど。事実、近年の楽曲には成熟した表現性を感じるし。
ありがとうございます。今まで支えてくれたファンの方たちのニーズも頭に入れつつ、それを満たしながら変わっていければいいなって。変わっていく人生を曲に反映することがシンガーソングライターの醍醐味なんだなって最近改めて強く思うんですよ。たぶん、ここから変化していく私の曲を聴いてファンの人が離れていくこともあると思うし、逆に新しく好きになってくれる人もいると思うんです。そのどちらの数も多くなる数年間になるのかなって。
──大きな過渡期というか。
そうそう。そうなったときに自分の変化も周りの変化も怖がらないようにしないといけないなって。そういう心構えをしてるところですね。
──ファンのニーズという言葉が出ましたが、この5年間はどういうニーズを感じてましたか?
3種類あると思っていて。1つはアッパーな曲。「ふりぃ」とか、聴いてくれる人が「背中を押されます」って言ってくれるタイプの曲。2つ目は「貴方の恋人になりたいのです」みたいな、初期に多かった片思いを描いた曲。そういう曲を好きでいてくれる人はいまだに多いし、今もそこを入口にファンになってくる人がいて。3つ目は「I Wanna see you」とか「ロンリー」のようにポップで跳べる曲。その3つが私に求められている柱だと思うんですよね。
──まさに。見事な自己分析だと思います。ただ、もう1つ挙げるとすれば、真央さんのアイデンティティをめぐる自己対峙、自問自答が描かれている曲ですよね。「19歳の唄」のように。
うんうん。それがときにリスナーを鼓舞する曲にもなったり、ならなかったりするんだけど。そこから派生して、ライブでよくやるミディアムテンポだけど切ない「じゃあ、何故」だったり、ちょっとユーモアを取り入れた「ストーカーの唄」だったり、そこまで楽しんでもらえるとホントに深く私の歌を求めてくれてるんだなって感じるんですけど。
──今、挙げてくれた柱の向こう側にあるものをね。これからは新たな柱を作らなければいけないだろうし。
そうですね。今の本音を言えば、いつまでも片思いばかりしてたくないし、失恋も繰り返したくないですから。そうなると作風は変わっていくと思うんですよ。
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- シングルコレクションアルバム「シングルコレクション19-24」/ 2014年8月20日発売 / ポニーキャニオン
- 予約限定生産盤 [CD+DVD+Tシャツ] 6480円 / PCCA-04075
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3996円 / PCCA-04076
- 通常盤 [CD] 2700円 / PCCA-04077
CD収録曲
- 伝えたいこと
- I wanna see you
- 貴方の恋人になりたいのです
- いつの日も
- ロンリー
- 19歳の唄
- モットー。
- 光
- 側にいて
- 世界はまだ君を知らない
- 最後の私
- 貴方が好きな私
- boyfriend
- Believe in yourself
予約限定生産盤、初回限定盤DVD収録内容
<music clip>
- ふりぃ
- 伝えたいこと
- 貴方の恋人になりたいのです
- いつの日も
- ロンリー
- 19歳の唄
- モットー。
- 側にいて
- 世界はまだ君を知らない
- 最後の私
- 貴方が好きな私
- Believe in yourself
- always
- 「シングルコレクション 19-24」マスタリングドキュメント
- 「シングルコレクション 19-24」ジャケットメイキング
- 「Believe in yourself」music clip メイキング
- 「always」music clip メイキング
阿部真央(アベマオ)
1990年1月24日生まれ。大分県出身のシンガーソングライター。2009年1月にアルバム「ふりぃ」でポニーキャニオンからメジャーデビュー。等身大の歌詞とポップなメロディ、表現力豊かなボーカルが、同世代 を中心に支持を集める。「ROCK IN'JAPAN FES.2009」「MEET THE WORLD BEAT 2009」などデビュー年より大型フェスに出演し、翌2010年1月に2ndアルバム「ポっぷ」、2011年6月に3rdアルバム「素。」をリリース。全国ツアーやアヴリル・ラヴィーンのサポートアクト起用など精力的なライブ活動を展開する。2012年6月に4thアルバム「戦いは終わらない」を発表し、自身初の全国ホールツアー「阿部真央らいぶNo.4」を開催。2013年には「最後の私」「貴方が好きな私 / boyfriend」という2枚のシングルと、5thアルバム「貴方を好きな私」をリリースしたそしてCDデビュー5周年を迎えた2014年8月、初のシングルコレクションアルバム「シングルコレクション 19-24」を発売。同年10月には初の日本武道館単独公演が控えている。