ハリソン・フォードが主演を務めるスペクタクル・アドベンチャー「野性の呼び声」が2月28日に公開される。
原作は、100年以上にわたって愛されてきたジャック・ロンドンによる伝説の冒険小説。秘境カナダのユーコンで地図にない地を目指し旅する男・ソーントンと名犬バックの友情が描かれる。メガホンを取ったのは「アラジン」「ライオン・キング」の原案を手がけたクリス・サンダース。「リロ・アンド・スティッチ」「ヒックとドラゴン」では監督として、人間と生物の“言葉を超えた友情”を生き生きと映し出した。
映画ナタリーでは、「銀牙」シリーズで知られるマンガ家・高橋よしひろにひと足早く本作を鑑賞してもらった。子供の頃に「野性の呼び声」の原作小説を読み、動物マンガを描くうえで影響を受けたという高橋。何回も「ウルっときた」という男と犬の熱いドラマとは? 本作のために高橋が描き下ろした入魂のイラストと、そのメイキング動画も必見!
取材・文 / 山里夏生 撮影・動画編集 / 後藤壮太郎
ウルっときたシーンが何回もあった
──映画をご覧になったばかりですが、まずは率直な感想を聞かせてください。
面白かった! 自分は今テレビのオンデマンドでいろいろ観るんだけど、なかなかこういう映画はない。今日は楽しみにして来たら、やっぱり面白かったね。途中ウルっときたシーンが何回もあって、あの泣かせ方というのはボクも教えてほしいなと思いました。
──ハリソン・フォード演じる冒険家ソーントンと名犬バックのシーンでは、どこにウルっときましたか?
ソーントンが持っているハーモニカがのちのちつながっていくところがよかったです。最初はソーントンがあまり登場しないから、これはどうなるのかなと思っていたら、あとからその意味がわかってハッとした。あと、この映画は子供でもストーリーがわかるのがいい。昔、うちの子供が小さな頃に映画に連れて行ったら、字幕が読めなくて「全然つまらなかった」と言われちゃって。でもこの映画は子供でも全部わかるようになってるよね。
──確かにそうですね。長年「銀牙」シリーズで犬たちを描いてきた高橋先生からご覧になって、本作での犬の表情や動作はどうでしたか。
まばたきの描写が昔からのディズニーアニメと一緒だったから、あれは独特だなと思いました。犬の目って人間のように笑わないから絵を描くときに表情が難しいの。でも映画ではバックが人を見る表情が豊かで、「こうやってうれしいときの目を表現するんだ」と思いながら観ていました。あんなに自由自在に表現できれば、ボクのマンガももっと売れるかな(笑)。
また犬が飼いたくなった
──「銀牙」シリーズの主な舞台は東北(奥羽)ですが、本作でもカナダの壮大な大自然が描かれていました。
映画でしか味わえないすごい映像だったね。自分はカナダにも行ったことがあるんだけど、ああいう大自然の中でソーントンみたいに犬とひっそりと暮らすのもいいかなって思いました。あとボクは秋田出身で、子供の頃にダムに落ちたことがあって。映画のような自然の厳しさは身をもって知ってます。よくマンガに滝とかを出すのはそのせいかもしれません。
──バックが徐々に野性に目覚めていく様子は、先生から観ても説得力がありましたか?
ありました。例えばバックが狼を助けるシーンには、彼の犬ぞりの経験も生かされているし、ちゃんとドラマがあった。そういう展開はやっぱりマンガにも欲しいんだけど、まねするわけにはいかないから別のやり方をしないといけないなと思いながら観ていました。
──ソーントンとバックの関係性はどう観ましたか?
いい距離感だなと思いましたよ。バックが表情豊かでソーントンのことをすべてお見通しのような感じが出ていました。それを観ているとこちらも気持ちがいい。あんなにこっちのことをわかってくれる犬がいたら、かわいくて大変ですよ(笑)。
──先生も犬を飼っていたそうですね。
映画を観てまた犬が飼いたくなっちゃった。今までずっと家には犬がいたんだけど、この間ついに死んじゃって。確かに飼うのは大変ですが、やっぱり犬が家にいると寂しいことがない。夫婦の会話のきっかけにもなるし。ボクが飼っていたラブラドールレトリバーは、最初のバックと同じように家の中をわーって暴れまわってた。
──そうだったんですね。先生が犬と絆を感じたエピソードはありますか?
「メル」という名前の犬を飼っているとき、まだ生後6カ月くらいのときかな。病院に1泊2日で預けていて迎えに行ったら、向こうからしょんぼりして歩いて来るんだよ。それでボクが「メル!」って名前を呼んだら、ハッと気付いて夢中になって走ってきてさ。病院のお姉さんが「この子こんなに元気だったんですね!」って言ってて、あれはかわいかったなあ。
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「銀牙」ファンは観ると思う