“かわいい深川麻衣”に前田敦子が安心?アイドルから女優に転身した2人が映画「つんドル」を語る (2/2)

「あ、ああ……」という微妙な空気が流れて(深川)

──劇中では安希子が、アイドル時代の衣装のスカートをはこうとしてファスナーが閉まらないというコミカルなシーンがあります。卒業後、そんなふうにアイドル時代をなぞってみた経験はあったりしますか?

深川 衣装は持ち帰ってなくて、事務所に保管されてるんですよ。だから着てみたことはないですけど、入らなさそうだなと思います(笑)。

アイドル時代に着ていた衣装のファスナーが閉まらず、ぼうぜんとする安希子。

アイドル時代に着ていた衣装のファスナーが閉まらず、ぼうぜんとする安希子。

前田 絶対入らない!(笑) この間ね、AKBの衣装展(「AKB48 大衣装展~オサレカンパニーの世界~」)に遊びに行ったの。そしたら自分が着てた衣装のウエストがすごく細くて。「本当に私、これ着てたの!?」ってびっくりした。

深川 ホント? あっちゃん入りそうだけどな。

前田 絶対無理だと思う(笑)。しかもミニスカートだしね。乃木坂のみんなは衣装がロングスカートだったから、うらやましかったなあ。

深川 でもおへそ出てるのとかもあったよ……。

前田 それはもう無理だねー(笑)。

深川 うん、無理(笑)。

深川麻衣

深川麻衣

──「つんドル」では安希子のアイドル時代の描写は出てこないですが、その後の彼女を見ていて、同じ元アイドルとして共感できるシーンはありましたか?

深川 仕事中の安希子が取引先の人と話してるときに、話を円滑にするために自分から「実は私、元アイドルなんです」って話すシーンがあるんです。でも、相手の人はそのグループのことをよく知らないから微妙な反応で。私はあえて自分から言うことはないんですが、同じような状況になって話を振られたときに、気まずかった経験があります。相手の方がアイドルに全然詳しくなくて「あ、ああ……」という微妙な空気が流れて、それがすごく申し訳なかったです(笑)。

前田 ああ、わかるな。私は安希子を見ていて、元アイドルということに対して執着というか、自分から切り離せない感覚があるように感じて。そこにちょっと共感しました。私はもう卒業から10年以上経つので、小さい頃にファンでいてくださった方が大人になって、現場で会うことも増えてきたんです。「昔大好きでよく聴いてました」と言ってくださったりするんですけど、当時の私はもういないわけで、「こんな感じで会っちゃってすみません」と思ったりします。「幻滅させてないかな」と心配になったり。これは今後もずっと続くんだろうな、元アイドルの宿命かもって。

前田敦子

前田敦子

井浦新さんが妖精みたい(前田)

──特撮ヒーロー作品でヒーロー役を演じていた方はずっと品行方正に生きることを求められる、という話を聞いたことがありますが、それに近いのかもしれないですね。「つんドル」では凝り固まった価値観にとらわれていた安希子が、ササポンとの同居生活で変わっていくさまが描かれています。

井浦新演じるササポン。

井浦新演じるササポン。

前田 ササポン、最高ですよね。こんなに優しい人がこの世に存在することをうれしく思いました。演じる井浦新さんは麻衣ちゃんとの相性がすごくピッタリだったし、今までの役と全然違って、妖精みたいだった。

深川 確かに妖精みたいだったな。「つんドル」って、実話だからすごいですよね。これが完全なるフィクションだったら、ササポンの存在はこんなに響かないかもしれないんですけど。原作者の大木さんにも、本物のササポンさんにもお会いしたんです。

前田 会ったんだ! 実際はどんな方なの?

深川 清潔感があって、すごく紳士的で。映画に出てくるセリフは、実際にササポンさんが掛けてくれた言葉なんだそうです。あのやりとりが本当にあったことなんだと思ったら、感動しちゃいました。

前田 私も会ってみたいなあ。私、安希子の誕生日に友達が家に来たときのササポンの対応が神すぎると思ったんです。食べ物を出してくれたと思ったら、「ごゆっくり」ってサッと自分の部屋に行っちゃうとか。あんなおもてなしされたら、ずっと居座りたくなっちゃいますよ。

深川 (笑)。距離感が絶妙だよね。

前田 しぐさに人柄が全部出てる。性別とかを超えて、人としての優しさをすんなり出せる素敵な人なんだなと思います。淡々としていて、そっけないくらいに「じゃあ」っていなくなるところとか、ちょっと好きになっちゃいそう。

左から深川麻衣、井浦新。

左から深川麻衣、井浦新。

アイドルはたくましい(深川)

──ササポンと安希子の間の、恋愛感情が生まれない距離感にはとても説得力がありましたが、確かにあれだけ優しく包み込まれたら、安希子がササポンを異性として好きになってもおかしくないよな、とも思いますよね。深川さんは演じていて、安希子の心の動きをどう捉えましたか。

深川 そうですね。ササポンは安希子に関心がないわけではないけど、一線を引いてくれたから、安希子は本音を言えたんだと思います。もし「今日は何してたの?」とか逐一質問攻めにされていたら、殻を被れなかっただろうなって。いい距離感だからこそ、ササポンの言葉がより沁みてきたんですよね。

──恋愛面で言うと、安希子は婚約者がいる浩介に振り回されてしまいます。「元アイドルはモテるだろうし、もっといい男性がいるのでは」と思ってしまいましたが、お二人はどう受け止めましたか。

猪塚健太演じる浩介(左)、深川麻衣演じる安希子(右)。

猪塚健太演じる浩介(左)、深川麻衣演じる安希子(右)。

深川 浩介は不思議な人ですよね。ピュアそうに見えて、婚約者がいるにもかかわらず安希子と2人で旅行に行っちゃうなんて。浩介自身も安希子を悲しませたくはないんだと思うんですけど、だからこそ安希子が振り回されてしまう。

前田 やだよね。たとえ仕事って言われても旅行は納得できない(笑)。でも誰にでも言えることですけど、恋は盲目ですからね。そして、「アイドルだからモテる」は全然ないです! 「1人で生きていけそう」って思われて、むしろモテない。

深川 あははは(笑)。アイドルって、歌って踊って「女の子」という印象に見られがちですが、基本的にはみんないろいろなお仕事で鍛えられてメンタルも強いし、たくましい。内面が強い子が多い気がします。

左から深川麻衣、前田敦子。

左から深川麻衣、前田敦子。

──安希子は序盤では「私、結婚相手を見つけて(ササポンの家を)すぐ出ていくんで」と話したりもしていますけど、本当はみんな恋愛や結婚に頼らずとも、自分の足でしっかり立てると。

前田 そうですね。若い頃は相手がいないと寂しく感じる瞬間もありましたけど、今は年齢的にも寂しいとか言ってる場合じゃなくなってきて、「あ、ちょっと最強になれた気がする」って思ったりします。

深川 かっこいい!

前田 でも映画のラストシーンの安希子もそんな感じだよね。

深川 うん。すがすがしいシーンだった。

前田 アラサー女子ならではの、“次”に行けた感じ。そこにすごく共感しました。

かわいいし、癒やされながら、最後にはスッキリできる(前田)

──幅広い年代の方が楽しめる作品ですが、お二人のように安希子と同世代の女性たちは、特に共感して観られそうですよね。

前田 バリバリ働いている同世代の女性は特に共感しやすいと思います。でも年齢や性別にかかわらず、何かにとらわれて苦しくなっているタイミングの人にはお薦めしたいですね。誰しも行き詰まる瞬間ってありますから。とにかく安希子とササポンの2人がかわいいし、癒やされながら、最後には一緒にスッキリできる作品です。

深川 最初の安希子は、元アイドルという栄光を大事に持ちながら、仕事での成功や結婚とか、幸せのイメージが狭かったと思うんです。それがササポンに出会って、衣食住をちゃんと整えて、“幸せの間口”が広がったんだなって。世間の価値観に流されなくなり、仕事も少しずつできるようになっていく。そんな安希子を見守りながら、デトックス映画として楽しんでもらえたらうれしいです。

左から深川麻衣、前田敦子。

左から深川麻衣、前田敦子。

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対象劇場:全国のTOHOシネマズ、ユナイテッド・シネマ / シネプレックス、コロナシネマワールドなど
料金:一般・大学生1100円、高校生以下900円
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プロフィール

深川麻衣(フカガワマイ)

1991年3月29日生まれ、静岡県出身。2011年に乃木坂46の1期生として活動をスタートし、2016年にグループを卒業。2018年に初主演映画「パンとバスと2度目のハツコイ」で第10回TAMA映画賞最優秀新進女優賞を受賞した。主な出演作は、映画「愛がなんだ」「おもいで写眞」「僕と彼女とラリーと」、ドラマ「まんぷく」「日本ボロ宿紀行」「青天を衝け」「特捜9」「完全に詰んだイチ子はもうカリスマになるしかないの」「連続ドラマW ギバーテイカー」「彼女たちの犯罪」など。

ヘアメイク / 村上綾
スタイリング / 原未來
衣装協力 / kate spade new york
シャツ 56100円 / パンツ 48400円
※すべて税込
<問い合わせ先>
ケイト・スペード カスタマーサービス / 050-5578-9152

前田敦子(マエダアツコ)

1991年7月10日生まれ、千葉県出身。2005年、AKB48に1期生として加入し、2012年に卒業。主な出演作に映画「クロユリ団地」「もらとりあむタマ子」「さよなら歌舞伎町」「旅のおわり世界のはじまり」、ドラマ「毒島ゆり子のせきらら日記」「伝説のお母さん」「連続ドラマW-30『ウツボラ』」「彼女たちの犯罪」などがある。2023年11月12日に放送・配信がスタートする「連続ドラマW OZU ~小津安二郎が描いた物語~」の第3話「非常線の女」で主演。2024年2月9日には、映画「一月の声に歓びを刻め」が公開される。

ヘアメイク / 高橋里帆(HappyStar)
スタイリング / 清水恵子(アレンジメントK)
衣装協力 / G.V.G.V.(ジーヴィージーヴィー)