ホラー映画「トゥギャザー」特集 | 地球のお魚ぽんちゃんのインタビュー&イラストで紐解く“倦怠期カップルの身体変異と共依存” (2/2)

あんなに美しい“最悪のハッピーエンド”はない

──ティムとミリーにおける“共依存”の在り方については、どのように感じましたか?

最近ちょうど関心を持っていたテーマが“共依存”だったので、そういった点でもすごく今の自分に刺さる映画だったんですよ。ティムたちと同世代ということもあって。

──ティムは35歳で芽の出ていないミュージシャンという役どころですね。すでに芽が出ているマンガ家さんとはちょっと立場は違いますけども。

「トゥギャザー」より、デイヴ・フランコ演じるティム

「トゥギャザー」より、デイヴ・フランコ演じるティム

いえいえ、とんでもないです。私も同じ夢追い人として、ティムにはすごく共感しました。と同時に、ミリーの気持ちも理解できるんですよ。私は一昨年まで会社員をやっていて、働きながらマンガを描いていたんです。安定した仕事に就きながら、過去にはティムみたいな人とお付き合いしていたこともあったので、どちらの立場にも感情移入できてしまうという(笑)。

──最高のお客さんですね(笑)。

また私がこの映画を好きになれた大きな理由の1つが、ラストで2人が下す決断なんです。「2人は離ればなれにならないと破綻する。でも離れられない」という場面をさんざんやってきて、最終的にはあの決断をするわけじゃないですか。あんなに美しい“最悪のハッピーエンド”はないですよ。

──素晴らしい表現ですね……! まさにあれは“最悪のハッピーエンド”だと思います。

私はとても勇気付けられましたし、希望に満ちた素晴らしいラストだと感じました。だから、すべての倦怠期カップルにこの映画を観てほしいです。「もう、行くところまで行ったろうや!」という、無責任な希望を抱いてほしい。

──なんとなくわかる気がします。ある種「この最悪の状況を極限まで突き詰めたらどうなる?」という“実験結果”を見せてくれるものになっていて。

その“実験結果”を踏まえて自分たちはどうするべきか、というのを考えるきっかけになると思うんですよね。視覚的に極端な見せ方をしてくれているところにフィクションならではの“無責任さ”があって、本当に痛快でした。なので「別れるべきなんだろうけど、別れたくない」みたいに悩んでいるカップルにとっては、いい刺激になると思います。

「トゥギャザー」より、アリソン・ブリー演じるミリー

「トゥギャザー」より、アリソン・ブリー演じるミリー

──形が大事なのではなくて、その形を“選ぶ”ことこそが大事なんだという点に気付かせてくれますよね。

おっしゃる通りで、“選んだ”ということ自体が尊重されるべきだと私も思います。形としては最悪かもしれないけど、2人が同じ結論を選んだ時点で「それは最高到達点だろ」と思うんですよ。だからこの映画を観終わったときに……作風は全然違うんですが、「ラ・ラ・ランド」を思い出したんです。

──おお、意外なタイトルが出ましたね。

あの映画は夢追い人カップルがうまくいかなくなって別れたあと、それぞれが望んだ人生を健やかに歩んでいく、というラストでしたよね。ラブストーリーとしてはバッドエンドなのかもしれないけど、私はすごく素敵なハッピーエンドだと感じたんです。「トゥギャザー」は形の上ではそれとは逆ですが、同じ意味で“ハッピーエンド”と言えるのではないかなって。

──“逆「ラ・ラ・ランド」”みたいな。

そうそう(笑)。普通に考えたら、同じボディホラーである「サブスタンス」と比較すべきなのかもしれないですけど。“ひとりがふたりに”の「サブスタンス」とは対になる作品かと思いますし。でも私は「ラ・ラ・ランド」を連想しちゃいましたね。

2026年のホラー界は幸先がいいですよ

──ほかにも気になる要素はありましたか?

ジェイミー先生の存在ですね。最初はティムとミリーの倦怠感を表現するための“噛ませ犬”的なキャラクターとして置かれているのかなと思ったんですけど、のちのちまさかの存在感を発揮し始めるという(笑)。この映画のビジュアル、人間模様、ストーリー展開という3本柱からなる完璧さを、ジェイミー先生が強力に下支えしていた感じがします。まんまとやられたなって。

「トゥギャザー」より、デイモン・ヘリマン演じるジェイミー

「トゥギャザー」より、デイモン・ヘリマン演じるジェイミー

──その「やられた」という言葉は、作り手にとっては一番の称賛ですよね。

本当にそうで、特にホラーやギャグというジャンルにおいては、それが命といってもいいくらいなんです。私がギャグマンガ家としてデビューした頃に担当編集から言われた「ギャグマンガというのは読者が『笑ってやらないぞ』という姿勢で読むようなものだから、想定を常に超えなければいけない」という言葉があって。まさに毎回「やられた!」と思わせ続けなければいけない、過酷なジャンルなんですよ。

──新人の頃にそれを言われて、今まで続けてこられた先生もすごいですけど。

いやいや、私は楽しく描いてきちゃっただけなんで(笑)。その言葉の影響もあって、自分がホラーやギャグ作品に触れる際にもそういう見方をするようになっちゃったんです。でも、その斜めからの見方を軽々と超えてきた「トゥギャザー」は、やっぱり本当に素晴らしかった。これが2月に公開されるわけですから、2026年のホラー映画界は幸先いいですよ。

──もう1つ「トゥギャザー」と先生の共通点を挙げると、「作家が作りたいものをまず作って、それを大手の組織(配給会社 / 出版社)に広めてもらう」という構図がありますよね。

※編集部注:地球のお魚ぽんちゃんは、2016年にSNSでマンガ「男子高校生とふれあう方法」を発表し、話題となったことで単行本化。商業デビューに結び付いた経緯がある。

ありがとうございます。いやもう、こんなに素晴らしい作品と並べていただくのはおこがましいんですけども……確かに、作り手がやりたいことを100%詰め込んだうえで「あとは誰か頼む!」みたいなやり方が、この映画では大成功していますよね。すごく希望になるというか。

「トゥギャザー」より、アリソン・ブリー演じるミリー(左)とデイヴ・フランコ演じるティム(右)。ブリーとフランコは本作にプロデューサーとしても参加した

「トゥギャザー」より、アリソン・ブリー演じるミリー(左)とデイヴ・フランコ演じるティム(右)。ブリーとフランコは本作にプロデューサーとしても参加した

──そういう意味では、作り手にも観てほしい作品ですよね。

そうですね。「こういうこと、俺もやりたい!」と感じる作り手は多いでしょうし、私も純粋に「こういう面白いものを描きたい!」という意欲をかき立てられました。すごく前向きな気持ちになれましたね。またいろいろな観点から楽しめる作品ですから、ホラー好き、ギャグ好き……あとは落ち込んでいる人や、決断することにおびえている人にも観てほしいですね。例えば「『転職したほうがいいのかな』と迷いはあるけど決め手に欠けて決断できずにいる」など、自分の置かれている現状に向き合おうとしている人とか。そういう方が観たら、きっと劇場を出たあとの足取りが違ったものになるんじゃないかなと思います。

プロフィール

地球のお魚ぽんちゃん(チキュウノオサカナポンチャン)

ギャグマンガ家。2016年にSNSで公開した「男子高校生とふれあう方法」が話題となり、単行本化されたのち、漫画アクションにて連載された。そのほか代表作に「サボり先輩」「一線こせないカテキョと生徒」「猥談バーで逢いましょう」など。2022年から2024年までCOMICリュエルにて連載された「霧尾ファンクラブ」は、2025年に茅島みずき主演でドラマ化。2026年4月よりテレビアニメが放送予定。