「サンダーボルツ*」は異色であり王道!新たなヒーロー集団は観る者の心に勇気を与えてくれる

マーベル・スタジオが贈る映画「サンダーボルツ*」が、5月2日に日米同時公開される。同作では過去に悪事を犯したならず者集団が、〈サンダーボルツ*〉としてアベンジャーズに代わり世界の危機に立ち向かっていくさまが描かれる。フローレンス・ピュー、セバスチャン・スタン、デヴィッド・ハーバー、ジュリア・ルイス=ドレイファス、ワイアット・ラッセル、ハナ・ジョン=カーメン、オルガ・キュリレンコらが出演。監督は「ペーパータウン」「BEEF/ビーフ」のジェイク・シュライアーが務めた。

映画ナタリーでは公開を記念し、アメコミ映画・ドラマに精通する“アメキャラ系ライター”杉山すぴ豊によるコラムを掲載。異色の新チーム〈サンダーボルツ*〉の紹介とともに、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)における「サンダーボルツ*」の立ち位置や、「アベンジャーズ:ドゥームズデイ(原題)」へとつながる1作品としての期待をつづってもらった。

コラム / 杉山すぴ豊

映画「サンダーボルツ*」予告編公開中

今までMCUに触れてこなかった人に薦めやすい作品

MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)において、「サンダーボルツ*」は異色であり王道の存在です。異色である理由は、実はメンバーのほとんどが過去作で“主役”ではないんですね。例えば、アベンジャーズの主流となるアイアンマン、ソー、ハルク、キャプテン・アメリカはそれまで主役を張った作品が公開され「アベンジャーズ」で集結する、という流れでした。また、もう1つの人気チーム、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーも1作目「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」でいきなり全員が主役デビューです。それに対し、〈サンダーボルツ*〉の6人は他のヒーロー映画の中でヴィランとして登場したり、強烈な印象を残す二番手的な役割で活躍していた連中が集められています。

「サンダーボルツ*」より、左からゴースト、タスクマスター、USエージェント、ウィンター・ソルジャー、レッド・ガーディアン、エレーナ ©︎ 2025 MARVEL

「サンダーボルツ*」より、左からゴースト、タスクマスター、USエージェント、ウィンター・ソルジャー、レッド・ガーディアン、エレーナ ©︎ 2025 MARVEL

一応出自を書いておくと、バッキーは「キャプテン・アメリカ:ザ・ファースト・アベンジャーズ」でキャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースの親友としてデビュー。一時洗脳され、片腕が人工アームの暗殺者ウィンター・ソルジャーなるヴィランとして大暴れしました。ジョン・ウォーカー(USエージェント)はMCUドラマ「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」に登場。キャプテン・アメリカになりそこなった超人兵士です。アベンジャーズのブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフの秘密を描いた「ブラック・ウィドウ」では、ナターシャの“妹”でやはり高度な戦闘スキルを持つエレーナ、その“父”でロシアのキャプテン・アメリカ的な存在のレッド・ガーディアン、あらゆる戦闘スキルを完コピできるヴィランのタスクマスターを紹介。物体をすりぬける不思議な体質のゴーストは「アントマン&ワスプ」のヴィランでした。

「サンダーボルツ*」より、セバスチャン・スタン演じるウィンター・ソルジャー / バッキー ©︎ 2025 MARVEL

「サンダーボルツ*」より、セバスチャン・スタン演じるウィンター・ソルジャー / バッキー ©︎ 2025 MARVEL

「サンダーボルツ*」より、何かを見上げるエレーナ(中央)たち ©︎ 2025 MARVEL

「サンダーボルツ*」より、何かを見上げるエレーナ(中央)たち ©︎ 2025 MARVEL

今回の「サンダーボルツ*」のように、アンチヒーローばかりが出てくる映画というのはMCUの中では極めて珍しいのです。一方、この映画が王道のMCUだなと思うのは、やはりチームものだということです。MCUの面白さは様々な作品の人物たちが作品の枠を超えて共演することですよね。また様々な個性を持つキャラクター同士のかけあいが楽しい。だから「アベンジャーズ」と「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のシリーズはMCUの中でも人気がある。考えてみたら、事実上いまのMCUはアベンジャーズが解散状態だし、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーもほとんどのメンバーが引退してしまった。MCUの魅力の要となるチームが不在……。その空白を埋めてくれるのが〈サンダーボルツ*〉でしょう。また「アベンジャーズ」や「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」を観てMCUにハマったという人が多い。つまりこの2作は非常に初心者にとっても観やすくわかりやすい作品だったのです。そういう意味で「サンダーボルツ*」も今までMCUに触れてこなかった人に薦めやすい作品と言えるはず。

「サンダーボルツ*」より、ゴースト(中央)とUSエージェント(左)、そして物語の鍵を握る謎の男ボブ(右) ©︎ 2025 MARVEL

「サンダーボルツ*」より、ゴースト(中央)とUSエージェント(左)、そして物語の鍵を握る謎の男ボブ(右) ©︎ 2025 MARVEL

〈サンダーボルツ*〉はニューヒーローになれるのか

先にも書いたように〈サンダーボルツ*〉のメンバーは主役級のヒーローではなく、どちらかというとトラブルメーカーぞろいです。しかも、空を飛べたり魔法が使えたり光線を発射するというような派手なスーパーパワーはもっていません。(あえていうならゴーストの体を非実体化できる能力でしょうか? あと何人かは一応超人血清を打っていますが)アベンジャーズに比べると、かなり戦闘能力が落ちるわけです。そんな彼らが立ち向かうのが、アベンジャーズよりも強いと呼ばれるヴィラン、セントリーです。空を飛び、一瞬で人々を消し去る力を持っています。アベンジャーズより戦闘能力の低い〈サンダーボルツ*〉が、アベンジャーズ以上の敵と戦うという展開がおもしろいですね。期待してしまうのは、彼らはもともとヒーローでないからお行儀のよい戦い方はしないのではないかと思います。どんな手を使っても勝てばいい的な戦いを見せてくれるんじゃないでしょうか。

「サンダーボルツ*」より、エレベーターから登場する〈サンダーボルツ*〉のメンバーたち ©︎ 2025 MARVEL

「サンダーボルツ*」より、エレベーターから登場する〈サンダーボルツ*〉のメンバーたち ©︎ 2025 MARVEL

「サンダーボルツ*」より、左からUSエージェント、ゴースト、エレーナ ©︎ 2025 MARVEL

「サンダーボルツ*」より、左からUSエージェント、ゴースト、エレーナ ©︎ 2025 MARVEL

初期アベンジャーズも6人、そしてこの〈サンダーボルツ*〉も6人ですよね。アベンジャーズは1人ひとりがすごい6人のヒーローでしたが、この〈サンダーボルツ*〉は6人そろってやっと一人前のヒーローなのかもしれません。ヒーローの定義をただ単に“強い人・すごい人”ではなく、“人の心に勇気を与えてくれる存在”とするならば、この〈サンダーボルツ*〉はまぎれもなく新たなヒーローとして皆さんの心をつかむと思います。欠点だらけ、過去にいろいろやらかしてしまった、そういう連中が起死回生のチャンスに立ち上がる。これってすごくシンパシーを感じますよね。アベンジャーズは憧れのヒーロー集団ですが、〈サンダーボルツ*〉は共感できるヒーローなのです。

「サンダーボルツ*」より、なぜか捕らわれているレッド・ガーディアン(左手前)やエレーナ(右手前) ©︎ 2025 MARVEL

「サンダーボルツ*」より、なぜか捕らわれているレッド・ガーディアン(左手前)やエレーナ(右手前) ©︎ 2025 MARVEL

新たなアベンジャーズ映画を楽しむための入り口としても重要

なんと、1年後の2026年5月1日にアベンジャーズ映画最新作「アベンジャーズ:ドゥームズデイ(原題)」が米国で公開される予定です。本作のメインヴィランはマーベル・コミックの中でも最も人気があるとされるドクター・ドゥーム。それをMCUの立役者ともいうべきロバート・ダウニー・Jr.が演じます。ドクター・ドゥームの脅威が全宇宙に広がり、それを食い止めるべく様々なヒーローが力をあわせ立ち向かうという壮大な話になるようです。つい先日、この映画に登場するキャストが発表されたのですが、「サンダーボルツ*」に出演する面々も登場することが確定しています。

「サンダーボルツ*」より、ウィンター・ソルジャー(左手前)やレッド・ガーディアン(右手前) ©︎ 2025 MARVEL

「サンダーボルツ*」より、ウィンター・ソルジャー(左手前)やレッド・ガーディアン(右手前) ©︎ 2025 MARVEL

「サンダーボルツ*」より、フローレンス・ピュー演じるエレーナ ©︎ 2025 MARVEL

「サンダーボルツ*」より、フローレンス・ピュー演じるエレーナ ©︎ 2025 MARVEL

「サンダーボルツ*」のあとに公開されるMCU映画は「ファンタスティック4:ファースト・ステップ」という作品です。スーパーパワーを持つ4人のヒーロー〈ファンタスティック4〉が活躍します。しかしながらこの映画の世界観は「サンダーボルツ*」と違うのです。これは僕の勝手な推測ですが、両作品はマルチバースの関係にあるのではないかと。そして〈サンダーボルツ*〉と〈ファンタスティック4〉がマルチバースを超えて手を組み、ドクター・ドゥームと戦う展開になる……としたら最高にアツいですよね。だから「アベンジャーズ:ドゥームズデイ(原題)」は見方を変えれば「サンダーボルツ*」の“続編”となる可能性もあるわけで、新たなアベンジャーズ映画を楽しむための入り口としても「サンダーボルツ*」は重要な作品というわけです。

「サンダーボルツ*」ビジュアル ©︎ 2025 MARVEL

「サンダーボルツ*」ビジュアル ©︎ 2025 MARVEL